ソングライティング・ワークブック 第131週:コーラスの拡大、またはポストコーラス
言いたいことを言ったからこそ言葉があふれてくる
ポストコーラスを含む例を書いてみる
どこかで聞いたような言葉があるけれど、ポストコーラスの役割を説明するような歌詞を書いてみると次のようになる。
音を付けるとこんな感じ(というか、本当は先に音を書いた);
コーラスで終わらず、ポストコーラスがしばしば書かれる理由のひとつは、ヴァースに戻る前に気分を落ち着かせたい、というのがあるだろう。とくに機能和声のケイデンス(終止形)を使わない(V7-Iと終わることをしない)で、もっぱら4コードループなどで書かれている場合は、叫んだら叫びっぱなしになりがちなので、静めるのに時間がかかる。これが「音楽的」理由だ。
「歌詞的」理由もあるだろう。コーラスで端的に何か大事なことを言ったら、それを補足したいということもあるだろう。言い足りないことがあるのだ。またはコーラスで何かすごいことを言ってしまったので、しゃべりやすくなる場合もあるだろう。
Chandelier
Siaの2014年のヒット曲、『Chandelier』(Jesse Shatkin/Sia Furler)のポストコーラスは、上記のようになっている。歌詞に中の話者はパーティーピープルで、酒と薬に依存している。
1小節の長さをどう取るかにもよるけれど、仮にヴァースを16小節(2センテンス)と数えると、プレコーラス(「ワン、トゥー、スリー、ドリンク…」と言っているところ)が8小節、コーラスが32小節(8小節で4コードのループが一回りする。それが4回回る)と、もともとコーラスが長い。
この部分のコード進行はEb-F-Bb on D-Eb、ローマ数字表記すれば、IV-V-I (on III)-IVになる。終わらないループなのだ。今日はあっちのパーティ、明日はこっちのパーティ、と主人公の終わらない日常のように(「シャンデリアからシャンデリア」というのにはそういう意味があるらしい)。
コーラス部分はSiaが「chandelier」と歌って高音をヒットするのが印象的だ。次にポストコーラスでは同じコードループの上でメロディが語り調子になる。
コーラスでは自分の姿を「シャンデリアからシャンデリアへ、まるで明日がないかのように生きている」と描写しているけれど、その心は「Help me」であって、ポストコーラスで述べられる。
Wikipediaではポストコーラスの例として、『Chandelier』も含めて4曲が挙げられている。Spotifyのプレイリストを貼っておく。この例では『Chandelier』以外の3曲はポストコーラスの独立性が薄い。
ポストコーラスにはいろいろあって、インストによるエンディング(ドロップ―短い間奏にも聞こえる)もポストコーラスに含められているようだ。次回はいろいろなポストコーラスについて。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?