55歳から始めた、新しい人生
「やれば、できる!!!」
こんなフレーズをテレビで耳にしたのは、新型コロナウィルスで大騒ぎの頃だった。
50代も半ばを過ぎると、ビジネスパーソンとして「その先」の人生を考えるようになる。会社員として定年を迎え、給料が下がろうとそのまま今の会社に残るのか、それともキャリアを活かして転職するのか、はたまた独立してもうひと花咲かせるのか? そんな選択肢が頭をよぎる。
そんな私も55歳。建設業界で働き続けて37年が経っていた。建設業界といえば、現場での安全管理が非常に厳しく、ヘルメット、安全帯、安全くつが最低限必須。安全対策にいくら力を入れても、事故がゼロにはならない。おまけに装備が重い。1時間も現場を歩けば、ヘトヘトになる。
「もう、体力も限界かもな……?」
そんなことを考えていたある日、テレビで聞いたのが「やれば、できる!」 だった。
単純な私は、思い立ったが吉日派である。
自分の小さい頃から好きだったことを思い出してみようと、紙に書き出してみた。
高校時代に星新一さんのショートショートが好きで、自分でも真似て書いていたこと。中学時代には読書感想文で校内の賞を取ったこと。
心に感じた何かを書くことが好きだった。
「これだ!」と思った。
ペンネームも決め、オンラインプラットフォーム「note」に登録を済ませ、意気揚々とパソコンの前に座る。が、手が動かない。ネタも思い浮かばない。建設の仕事以外では頭も手も、全く動かない自分に気づいた。
そこで、書き方やネタの探し方を学ぶための講座に通い始めた。講座ではいろんな気づきを与えてくれた。その中には
・毎日スマホやメモ帳に、思いや気づきを書く。
・ネタ探しのために30分の散歩をして、見つけた「謎」をメモする。
そのほかに書くための環境を作ることを教えられた。
・ネットとテレビの視聴は1日60分以内と決める。
・しっかり睡眠をとる。
・周りの音が気になる場合はノイズキャンセリングイヤホンも効果的。
・すぐ書けるようにパソコンは目につく場所に置く。
などなど。
集中力アップのためにノイズキャンセルリングイヤホンを購入した。これは集中力維持のためには特に効果的だった。ただ、睡眠はいまだに満足するものは得られていない気がする。
こうして「書く環境」を整えていくうちに、だんだんと文章を書くことが楽しくなったきた。そして新型コロナウィルス騒動もあり、しばらく書くことに専念できる時間を過ごした。
かつて作業服とヘルメット姿だった私が、今では文章を書くことが楽しくて仕方がない。他の仕事と兼業できるようになろうと思う。現場の仕事仲間からは「やっぱり、ちょっと違う考えを持つ人だったんだな」と言われたが、それも良い意味で受け取ることにした。
いまはまだ書くことが収入に結びついていない。しかし、毎日少しでも書くことで、気持ちが整理されるのか、家族やペットと過ごす時間も大切にした毎日がおくれると感じている。
もし、あの時テレビであのフレーズを耳にしなければ、勇気を出して一歩踏み出さなければ、こんな日々は送れなかっただろう。
「やれば、できる!」
この言葉を信じて行動を起こしたあの日の自分を褒めてあげよう。そして、私の行動に理解をして背中を押してくれるすべての人に感謝している。
55歳からだって、新しい人生は始められる。
だから、もし迷っているなら、あなたも勇気を出して新しい一歩踏み出してみてほしいと思う。