エピローグ。
生温い缶コーヒーをホルダーに投げる様に置いた時に擦れた作業着からふわと塵が舞うのを西日が照らした。
種崎から桂浜へと浦戸湾を跨いでかかる大橋を下りながら無神経に流れ続けるラジオを止める。少しだけ窓を開けると、湿っぽい塩の香りが車内に舞い込んだ。
遠くに見える横波半島にポツ、ポツリ、と灯りがつき始めた。陽が沈んでからしばらくたつが
山の谷間はまだ薄明るく一羽のトンビが影を映している。
海岸線に、漁港と市街地を結ぶ道路が垂直に交わる十字路で今日も信号につかまると深くシートにもたれかかった。
方向指示器が刻むカチ、カチ、という音が視界の端で点滅する光のリズムから少しずつズレるのを聞きながらしばらくそれを眺めていた。
交差点をまがるとすぐに家だ。
長い1日が終わる。
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