『デアラ』に学ぶバトルラブコメの書き方!!
※有料部分巻末に1巻のシーン分析表が添付されています。
はじめに
春日 「どうも、作家・脚本家をしております、春日康徳と申します」
ビス子「アヌビス・エンタテイメントの看板娘、ビス子です!」
春日 「ビス子ちゃん、これまでの連載の流れをまったく無視しての登場ですね」
ビス子「私……何かするんでしょうか!?」
春日 「これまで『商業作家の技術を論理的にお伝えする』ということをお題目に掲げて、作品の構造解析をしてきたのですが……」
ビス子「はい」
春日 「もうちょっとエンターテイニングできないかと思いまして……」
ビス子「あ! そういえば事務所で榊一郎先生の『キャラクター創造論/キャラクターのレシピ!』を読んでいましたね」
春日 「ふあ!? 元ネタ言っちゃう!?」
春日 「榊先生がとてもわかりやすく作家の技術を教えてくださいます。なにより、榊先生の講義を聞いている感じがして、とても楽しく読めるのです」
ビス子「ふーん、それで対話形式をパクろうと……」
春日 「内容は! パクリじゃないからぁ! ぜひみなさん、上記の書籍おすすめです。1500円とは思えないボリュームなのです」
ビス子「私も『春日先生』と呼んだほうがいいですか?」
春日 「先生、は気持ち悪いので、『マスター・カスガ』とでも読んでください」
ビス子「そっちのほうがだいぶ恥ずかしくないですか!?」
春日 「ええい! 呼べというに! このバカ弟子がああああ!」
ビス子「では……マスター・カスガ」
春日 「うむ」
ビス子「あのぅ……私、正直、あまり本は読まない方でして……」
春日 「でしょうね」
ビス子「こんな私でお役に立てるのでしょうか……」
春日 「大丈夫です。ただ、お願いしたいことが」
ビス子「難しいことでなければいいけど……」
春日 「質問してください」
ビス子「はい?」
春日 「この対話形式を採用した最大の理由であり、榊先生も前述の書籍でおっしゃっているのですが、学生が質問しないらしいんです」
ビス子「榊先生は大阪芸大の講師もされているんですね」
春日 「はい……。例えばビス子ちゃんは『呼吸の仕方』を他人に説明できますか?」
ビス子「『呼吸』……」
春日 「ああ、ちなみに全集中とか関係ないです」
ビス子「そんなん、普通に息吸えばいいんじゃないですか? あ、でも、呼吸の仕方がわからない人には、『肺動かして』とか、『吸う前に吐いて』とか説明しなきゃいけない……?」
春日 「それ! 作家の技術もそうなんです。僕には当たり前過ぎて、『そんなん、こうすりゃいいじゃん』ってことが、でも、わからない人にはハードル高かったりするわけです。なのに、食い下がって質問する人が少ない」
ビス子「なんとなく気持ちはわかる気がします……聞くと『そんなことも知らないのか』と思われたりしないかとか……」
春日 「聞かないで恥を書く……物書きだけに……より、聞いてその場で恥かいても、読者の前で恥かかない、もとい、書かないほうがよくないですか?」
ビス子「なるほど。聞くに聞けない学生さんに代わって、私が質問しまくればいいと!」
春日 「そういうことです。よろしくお願いします!」
ビス子「で、今回はどんな作品を構造解析するんです?」
春日 「さっそく質問ありがとうございます。『デート・ア・ライブ』こと『デアラ』です!」
『デート・ア・ライブ』あらすじ
出現すれば周囲を災害で飲み込む人類の災厄・精霊――。主人公・五河士道(いつか・しどう)はそんな精霊と偶然出くわした。しかし、対峙した精霊は美少女で!?「おまえも、私を殺しにきたんだろう?」彼女は、世界中から追われる身。何も信じることはできなかった。そんな少女を目の当たりにしながら、士道は精霊を殺すのではない、別の選択肢を与えられる――「デートして、精霊をデレさせなさい!」果たして士道は少女たちを救えるのか?
女と銃があれば映画は作れる
春日 「ジャン・リュック・ゴダールという映画監督が、こんなことを言い残しています。『女と銃があれば映画は作れる』」
ビス子「私はイケメンがほしいです」
春日 「コホン! 銃を持った女の子を、ライトノベルでは『戦闘美少女』と分類します。これは、イケメンも一緒ね?」
ビス子「確かにイケメンも刀とか銃持ってますね」
春日 「最近はマイク持ってたり……」
ビス子「でも『ツイステ』には適用できないですよね……って! 魔法ペン持ってたー!」
春日 「ってことで。ゴダールは何を言っていたのかというと、『パッケージ』について言及していたわけです」
ビス子「『パッケージ』というのは、表紙のこと、ですよね?」
春日 「はい。ライト文芸は『表紙が購買基準の大きな要因』を占めます。よって本質的には『パッケージビジネス』なわけです」
ビス子「武器を持った女の子を表紙にする……あのう、私、武器ないんですが?」
春日 「君には耳のスピーカーがある! で、『デアラ』の話なんですが」
ビス子「はいはい」
春日 「武器を持った女の子。戦闘美少女を表紙にするために、キャラクター、世界観、そしてストーリーが構築する――それが『バトルラブコメ』です」
ビス子「ああ! バトル(銃)、とラブコメ(女)って……」
春日 「そうなんです。ゴダールの言葉の通りなんです」
ビス子「でも……私、あまり難しいSFとか苦手です。春日さんのSF作品とかか正直、よくわからないんですよね」
春日 「ストレートに言いますね……。あ! でもキラーパスかもしれない」
ビス子「へ?」
春日 「『バトルラブコメ』って、難しくしちゃいけないんです」
ビス子「でも……なんで女の子がでっかい武器振り回すのかっていう、難しい世界観設定を読まされちゃうわけですよね?」
春日 「商業的に失敗している作品では、そうなっていますね」
ビス子「春日さんの……」
春日 「皆まで言うな! 『仮面ライダー』の放送見ながら、『SF的にありえねーぜ!』って批判している人、いないでしょう?」
ビス子「まあ、『仮面ライダー』ですからね」
春日 「戦闘美少女も一緒です。武器を持った美少女の『設定』よりも、彼女たちの『キャラクターの魅力』が最優先なんです」
ビス子「魅力って、簡単に言いますけど……。どうやって」
春日 「技術的には『属性の提示』と『意外性の演出』で可能です」
『属性の提示』は対比で伝わる!
ビス子「いきなし専門用語が!?」
春日 「かんたんに言えば、『スポーツ得意なクールキャラが、勉強は苦手』とか」
ビス子「カッコいい!」
春日 「『ハイキュー!!』の影山ですけどね? オジサン世代では『SLAM DUNK』の流川ですが」
ビス子「ギャップ萌えですね!」
春日 「ですです。ギャップって、前フリとして『威圧的でスポーツ得意なクールキャラ』という属性を伝えておかないといけないわけでしょ?」
ビス子「それが、『属性の提示』ですか」
春日 「で、ただ『このキャラはこういうキャラでーす!』と読者に説明しても、伝わらないし、イマイチ面白くない」
ビス子「じゃあ、どうやって紹介したらいいんです?」
春日 「身長が高いか低いか。目が大きいか小さいか――というのは、他の人と比べることで認識されるでしょう?」
ビス子「はい」
春日 「キャラクターがどういうキャラなのか、つまり『属性の提示』も同じです。クールキャラと熱血キャラとか、対比させることで伝わる」
ビス子「日向と影山だ!」
春日 「ビス子ちゃんは『ハイキュー!!』好きなんですね。まあ、知らない人のために補足すると、ジャンプ漫画っていうのはちゃんと主人公クラスの二人組を対比させている。『呪術廻戦』の虎杖と伏黒なんかも対比させてますよね」
ビス子「『デアラ』ではどうなんです?」
春日 「軌道修正ありがとうございます。まずは各キャラの属性を見てみましょうか」
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