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第1回 授業を始める (その2)  「見通し」の話は心に響きました


 第1回(その1)「授業を始める」に対する感想と質問が、参加者から届きました。この原稿に対する私の回答は次回(その3)で掲載します。    

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   今回の担当は、東京都立広尾看護専門学校の中村誠です。
 教員歴9年で、現在は基礎看護学、小児看護学を中心に担当しています。今年は、コロナ禍でのオンライン授業の推進と充実に向けてICTスキルの向上を目指し勉強中です。オンライン授業では看護技術などを動画編集、配信することで学生のわかりやすさにつながるよう工夫をしています。
 日々思うのは、授業中に寝ている学生がいると自分の中に2つの気持ちが現れることです。1つは「私の授業準備が足りなかったんだろうな。何かもっと学生を惹きつける工夫ができたんじゃないかな」という自分自身を内省する気持ち、もう1つは「学習に対してやる気がないんだな。本当に看護師になりたいと思っているのかな?」と学生の意欲にも原因があるという考えです。もちろん前者の内省する気持ちに対して真摯に向き合い授業設計を日々見直していくことが理想なのだとは思いつつも、日々の忙しさの中でつい学生の意欲のせいにしてしまっている自分を恥ずかしく感じます。
 今回のテーマである協同学習については、言葉としては教員になった頃から耳にしていましたが、その詳しい理論や実践方法をしっかりと学ぶ機会がなかったので、楽しみにしています。

〇「見通し」の捉え方を見直せば、学生の学び方も教員の学ばせ方も変わるのでは・・・。
 安永先生のnoteを読み、「見通しの共有」について自分の現状と照らし合わせながら考えてみました。
 中でも、「第1回目で試験問題を提示する」という話は「そういう考え方もあるんだ!」と、私にとって目からウロコでした。
 現在、試験の多くは単位認定に必要な知識を最終的に確認するためという意味合いが強いと感じています。そのため、本試験で合格点に到達しなかった場合、追試験でなんとか合格するものの、その後の知識の積み重ねにはつながらない学生が多いように見受けられます。なぜなら、その学生たちの試験勉強の最大の目標が「合格点をとる」であり、「看護師に必要な知識を得る」ではなくなっているからです。いわば、試験に合格すればその知識は忘れ去られてしまうという感じです。なので、事前に試験問題を提示し「この科目が終わるころにはこんな問題が解けるようになる」という着地点がイメージできれば、学生の学び方も、教員の授業方法も変わっていくのではないか? と感じました。
 合格点ギリギリで単位を修得した後、血のにじむような努力を積み重ねていきながら、臨地実習や国家試験対策でも常にギリギリの状態でなんとか卒業し、看護師になっていくという学生を何人も見てきました。国家試験直前になって、泣きそうになりながら「先生、今までちゃんと勉強してこなくてごめんなさい。こんなに迷惑をかけてしまって・・・。もっと早く勉強していればよかったです」と言ってきた学生の顔も、思い出されます。勉強に向かえなかったのは、学生だけが悪いわけじゃないのに、こんなことを言わせてしまった、もっと何かできることはあったのではないかと思っていたところに、今回の「見通し」の話は心に響きました。

〇看護基礎教育に協同学習の考え方を取り入れていきたい
 看護専門学校では、3年間で知識と技術を身に付けなければなりません。限られた時間とマンパワーの中で講義・実習を展開していかなければいけないという現状の中でも、従来の方法から抜け出し、少し授業の方法について立ち止まって考えていきたいと思います。未熟な私の授業においても、時々ではありますが、授業中に全学生が体を前のめりにし、目をキラキラさせて授業に参加してくれる瞬間があります。その瞬間、本当に涙が出るほど嬉しいです。寝てしまう学生がいる授業と、積極的に参加してくれる授業では何がどう違うのか、その構造的な部分を私の中で見出していきたいと考えています。1学年80名在籍する中には学習意欲が高い学生もいれば、集団に埋もれてしまい自ら学ぶことが難しい学生も目の当たりにしていますが、協同学習の考えを取り入れつつ、より魅力ある授業作りを検討していきたいと思います。
 現在、安永先生の著書を読み独学で勉強させていただいています。今度、授業で協同学習の学び合いの技法、具体的にはラウンド・ロビン、シンクペアシェア等を取り入れて、個人思考・集団思考を活用した授業展開してみようと計画中です。担当する科目は、3年生で臨床現場に即した事例のシミュレーションを通して看護実践能力を身に付ける科目です。どのような反応が得られるかドキドキしますが、改めて結果を報告させていただきたいと思います。
 
 最後に、安永先生に質問です。協同学習の考えをもとにした授業設計を、いろいろな科目で取り入れていきたいと思うのですが、抽象的な概念を学ぶような科目では少し活用が難しいような気がします。どのような点に注意して取り入れていったら良いでしょうか? 特に入学したばかりの1年生を対象とした授業の場合、看護そのものの概念化ができていない段階で、個人思考を働かせるにも知識の基盤が足りないのでは? と考えています。何か良いアドバイスがありましたらお教えいただけるとありがたいです。

             — 第1回(その2) 終わり —

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