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臆病な女子にライセンスを! 第20話 卒業

とうとう、卒業検定だ
Tさんのアドバイス無しで、最後の教習をこなせた
このことが、私にとって揺るぎない自信になっている

安全マインドで、目配り・気配り・思いやり!
落ち着いて運転するからね

(佐藤)「みんなー、卒業検定だね!」
(矢倉)「ソワソワする〜」
(佐藤)「藤原さん、落ち着いてるね!昨日の教習、どうだったの?」
(藤原)「Tさんのアドバイス無しで、運転できたよ」
(佐藤)「あら!Tさんと会話は、しなかったの?」
(藤原)「ちょっと話したよ」
(矢倉)「藤原さん、Tさんに告白した?」
(佐藤)「矢倉さん、豪速球だよー」
(藤原)「告白だなんて、してないよ〜」
(矢倉)「じゃあ、何を話したの?」
(藤原)「Tさんの名刺を返したよ」
(佐藤)「ええ!何で返すのー?」

裏面に私の携帯番号を書いた名刺だけどね
それは、隠しておこう…

(藤原)「ほら!新しい名刺が欲しくてー」
(矢倉)「何してるのよー、焦れったいわね!」
(佐藤)「矢倉さん、落ち着いて…
それにしても、藤原さんの行動は不思議ちゃんだね」
(藤原)「不思議?」
(矢倉)「高校の時から、ずっと不思議ちゃんだね〜」
(佐藤)「読めないのね、考えてることが…」
(矢倉)「そうそう!」

いやー、私を変人扱いしないでよ…
臆病で、口に出さないの!
拒否られると、怖いのね

でも、Tさんは返した名刺を、受け取ってくれた
そして、携帯番号を書いた新しい名刺を、渡してくれた

これも、秘密にしておこう…

(藤原)「ほら、集合のアナウンスが流れたよ!
第1教室に移動だって」

アナウンス…助かった~

(藤原)「卒業検定に集中します!」
(矢倉)「ああ、逃げた!」
(藤原)「集中しないと、この前みたいな事、また起こるかもしれないよー」
(佐藤)「それは、言えてるね~」
(矢倉)「ああ!それだけは勘弁して!」
(藤原)「3人揃って、卒業しよう!」

私が先頭を切って、教室に向かう
二人は釣られるように教室に向かう

先頭で歩く私は、きっと顔が紅くなってる
悟られないように、呼吸を整えて
卒業検定に集中しなくっちゃ!

教室で卒業検定の説明を受けて、検定の走行順とコースが発表された
仲良し3人組がまとまって1台の検定車両に当たった

佐藤さんが1コース、私が2コース、矢倉さんが3コース
卒業検定中は、雑談することは禁止され
私はホッとした

間もなく、検定が始まった

佐藤さんの運転
歩行者や自転車、駐車車両など
遭遇したときの対処が、遠いうちから準備できていて
後ろの席から見てると感心しちゃう

矢倉さんの運転
前よりも発進の仕方が慎重になった
あの件が、いい方向に働いてるのかな?
全体的にスムーズな加速と減速になった
ルームミラーの確認は本当に上手だね

私は、Tさんに教わった通り、気配り・目配り・思いやりの安全マインドを実践した

場内課題は3人共に問題なくでき
検定は無事に終わった
みんな、運転成長したね!

結果、3人共に『卒業証明書』を手にすることができた

私には、この卒業証明書が…
Tさんに教習してもらえない『烙印』に思えた
Tさんに会う理由がなくなった…

8月初めから始まった自動車教習は、毎回Tさんに会えるのが楽しみだった

Tさんは、いつでも優しく寄り添ってくれて、私の運転スキルを引き上げてくれた
毎回の教習で上達できたのは、奇跡というか魔法にかけられたよう…
臆病で否定されるのが怖い私にとって、Tさんは癒し系的存在

そんな男性に出会ったことはなかった…

卒業は嬉しさの裏側で、Tさんへの恋慕を募らせた


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