yanagamiyukiのvocaloid rapは良いぞ
今日はyanagamiyukiさんの記事を書きます。
もともとわたしはVOCALOID HIPHOPまわりで曲をやってた人間ですが、それは2018年頃までの話。いまではボカロおじいちゃんです。
同じ時期に活躍していたPたちの活動もだいぶ落ち着いてきて、VOCALOID HIPHOPが言及される回数も多くはなくなったなぁと思います。
けど2018以降vocaloid rapはどうだったのか。yanagamiyukiが最高なので、わたしのHIPHOPハートはめちゃくちゃ潤ってました!
てな調子で「yanagamiyuki最高だよなぁ」と思っていたのですが、意外とHIPHOP的な目線からどう良いのかって、思っていたよりあまり他のひとと共有できていなかったことに、フォロハーと少し話していて気づきました。なので、わたしがどうHIPHOP的な目線で良いよなぁ~と思っているか、書くか~的な気持ちになったので書きます。
1 TRAPに巧く乗せるのは大変!
yanagamiyukiさんの何が良いか凄いかというと、間違いなくVOCALOIDのTRAPでめっちゃ良いラップをかましてることですね。
『My Name Is 初音ミク』(2019年7月)は、最初聴いたとき「まじでふざけてるな」と思いましたが(それまで『Psycho』や『貧困と尊厳』のイメージがあったので)、TRAPのRAPをボカロで巧くやってて、あーこういうのがボカロでもできるのか、やっていいのかとすごい思いましたね。
実はというか、わたしが当時思っていたことなのですが、VOCALOIDのHIPHOPでTRAPに良いラップを乗せるのは、結構遅れていたんですよね。
VOCALOID HIPHOPが盛り上がりだした2015年頃って、それこそまだ『フリースタイルダンジョン』も始まってなくて、高校生ラップ選手権も第6回頃で、まだリアルなHIPHOPがいまみたいにめちゃくちゃ盛り上がっていたわけではなかったんですよね。
だからリアルとか関係ないところでVOCALOID HIPHOPは盛り上がっていたんですが、2017年頃になるとたとえば『Cho Wavy De Gomenne』が投稿されたり、TRAPノリというのが開発されて洗練されてきました。VOCALOID HIPHOPもリアルを、意識せざるを得なくなったんですよね。
で、VOCALOIDのHIPHOPでTRAPというのも色々ありますが、もちろんかなり早い段階でTRAPを取り入れた楽曲はありました。ハチ『砂の惑星』(2017年7月)より早いものだと、
ただ、上記の曲たちは、完全にTRAPに適合したラップをかましてるわけではないかな、と思うんですよね。わたし的にVOCALOIDのTRAPで良いラップを最初にかましたのは、『MIKUHOP LP3』(2018年6月)のHeadNhoさんの『hollow』と松傘さんの『メタモルフォセス列島』だと思ってます。
この2人は後に『monade』(2019年5月)というTRAPを一緒に作っているので、TRAPをやるのは意識的だったと思います。
で、そういうのを全部横切ってyanagamiyukiさんの新しいTRAPのラップが出てきたんですよね。
2 傑作『サイバーかわいくないガール』
けどわたしがyanagamiyukiさんの曲で、特に、特に特に強い衝撃をうけたのは『サイバーかわいくないガール』でした。
この曲をとかく語りたい。『サイバーかわいくないガール』のラップは、相当クリエイティブで、流れるように自然でかつ明白に変化するフロウで、ほんと舌を巻きます。ぶっちゃけ、この曲のラップは、わたしが聴いたすべてのボカロのなかで一番ラップ巧いと思いますね。
まぁ何をもってラップを巧いというのか、これって言語化するのがすげー難しいんですが。ラップ知らないひとに伝えるとなるとさらに。
例えば最初のverseだけど、
この入りすげえ面白くて、超早口というか、1音1音が、人間じゃ発音不可能そうな立ち方をしてるんすよね。細かくちゃんと切れてるというか、それでいて超発音時間が短いところと、ちょっと長いためみたいなところがある。
それがyanagamiyukiさんの調声の個性なんだけど、これたぶんRhymeが最後の1音くらいしかないんだよね。なんだけど、ちゃんと押韻の位置に発音のためを持ってきてるから、Rhymeとして十分な効果がある。
そもそも普通のラップで「ボート/ボーカロイド/人/どうしよう」ってRhyme組むことがあまりないと思うんだけど、これがRhyme甘い感じにならずにちゃんと成立してるし、それはもう個性だよね、しかも人間だと再現むずい感じがすごい良いと思う。
で、そっから、
同じRhymeを畳み掛けるフロウ、Rhymeスキームに変化する。直前のRhymeの密度が薄かったから、この落差というか対比にめっちゃ引っ張られるよね。どんどん前のめりになる。直後に、
ȧiのRhymeを引き継ぎつつ、Rhymeのやり方を畳み掛ける感じからさらに変化させる。松傘さんのフロウって縦横無尽で自在な感じだったけど、yanagamiyukiさんのフロウは、ぱきっとした変化があるんだよね。つまり手持ちで使えるフロウやアイデアが多いってことだと思う。
わたしもそうだけど、フロウは割りと一気通貫なひとが多かったと思う。Rhymeで変化はつけれるけど、フロウだけでラップかますのってむずいと思う。mayrockさんやTachibuanaさんもフロウは多様だったと思うけど、それでもyanagamiyukiさんみたいな感じでフロウを次々に繰り出せるようなひとはこれまでいなかったと思う。
しかもこのフロウとRhymeスキームの変化が、歌詞の内容の変化とリンクしてるんだよね。何よりそれが巧いと思う。
ここのRhymeも面白いよね。結構前にツイキャスでyanagamiyukiさんとRhymeにも色々ある的なことを話をした(わたしが一方的に…)んだけど、そのとき話したようなことが生きてる気がするんだよね、なんか。固定観念にはまったRhymeじゃない感じがある。上の歌詞とはRhymeの雰囲気が違うから、それが話してること少し変えてますよというシグナルにもなってる。
で、
ここね。ここはね、「すぅびょぅ…」「しあわせをぉ…」「いつもぉ…」みたいに、ちょっとRhymeの最後にモタるんだよね。このモタりがあることで、次のフレーズの開始位置がコンマ数秒レベルでズレてるんだよね。このフロウはすげえ創造的で、このコンマ数秒のズレがあるから、多様な感じがあって楽曲を退屈させないようになってる。
というかこんな感じのラップをしたの、VOCALOIDのラップに今までなかったよね?(似た事例だと『災難!』とか『人間たち』になるかな? これはビートが自在だからラップも自在にならざる得ない系だけど)
だからめっちゃここはいいなと思ったし、かっこいいしCoolだし、一番衝撃を受けたかな。しかも、
この繋ぎ方はまじでやばいw なんかもう才能だなと思うよね。「嘘」と「証明しろ」の語尾のイントネーションを変えてるのも余裕があるよなーと思う。それがよりフロウを良くしてる。『Psycho』や『貧困と尊厳』の頃のラップとは全然違うよね。すごい多様なラップしてると思う。
あと、
このRhymeすこ
3 傑作『ミザリーai』
これも凄い良い。めちゃくちゃHIPHOPだよね。右手上がるわ。
もういちいち解説しないけど、ここまで自然にTRAPのラップされたら言うことないよね。メロディアスなフレーズもインサートされて、すごい情緒的に訴える力があるし、随所でのフロウやイントネーションの操作もすごく効果的で安定してる。
後半のverseだと、「集合の知」の置き方はすごいオーソドックスなラップなのに、後続するのが「消化していない胃」「生命は心配」「量産された私」で、ここもやっぱり通り一遍なRhymeじゃないのが注目できる。
あと、やたら「イェ」を挿入してるのが面白いよねw どれだけ挿入されてるのかついつい聴いちゃう。って、急に解説少なくなってるけど、『ミザリーai』はまじでハイクオリティなぼかろhiphop曲です。間違いない。
今後もいろんな曲が聴きたいな。楽しみだ。