詩歌:滅びの華

――悲しみの絶頂にいる父よ
  Dylan Thomas

 肩書きに生きれば、ひとは虚飾、
 年老いた者は日没に遊び、葡萄酒を餐む、
 光沢ある肌の滅びを捕食。

 旧い友人が置いた葉書の紐をほどく、
「善良の波のまえに父はいた」読む、
 肩書きに生きれば、ひとは虚飾、

 慈愛のない路に、斃れる子の孤独、
 コーカやウィを売る商人は富む、
 光沢ある肌の滅びを捕食。

 鉛の輝き、囁き、沈鬱なる太陽の予告、
 だれもが真実に歩み続けるが、行く先は虚無、
 肩書きに生きれば、ひとは虚飾、

 闇を掘る墓守が、戸の隙間を覗く、
 愛猫家が、香油のしみる絹を揉む、
 光沢ある肌の滅びを捕食。

 祝福をもとめ、星へ手が届く、
 愛が凪ぎ、警官が大挙し、腐臭が混む、
 肩書きに生きれば、ひとは虚飾、
 光沢ある肌の滅びを捕食。

*ヴィラネル(19行2韻詩)
A1bA2/abA1/abA2/abA1/abA2/abA1A2

A 虚飾/捕食/ほどく/予告/孤独/覗く/届く
B 餐(の)む/読む/虚無/富む/揉む/混む

詩を書くひと。押韻の研究とかをしてる。(@sagishi0) https://yasumi-sha.booth.pm/