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経営者としてメンタルやられた7つの出来事【起業して1年の振り返り】

起業して1年ちょっと経ったので、メンタルやられた出来事を振り返り。しんどいことも多いけど、それでも楽しい。起業して良かったと心から思う。本当に、日々助けてくれる周りの人に感謝。

とはいえ、起業家のメンタルヘルスはとても大事な問題。実際に起業してみて1年間、何が大変だったかをまとめてみます。

【1】仕事がない(暇すぎること)

意外と思うかもしれないけど、「仕事がなくて売上がない状態」が経営者にとっては1番ストレスフル。刻一刻と会社の現預金残高が減っていく中で、何をしたらいいのかわからないのが辛い。

創業初期のワクワクが過ぎた3ヶ月目くらいからは、自己効力感が高まらないもどかしさとの戦い。 営業しても全く売れなかったり、起業家のイベント参加しても自分が無知すぎて居心地悪かったり、同年代の起業家の資金調達や登壇のニュースを見て焦ったり。 自分の武器のなさを嘆く。

売上が下がる時とかも、かなり焦った。来月からどうしようと。何でもいいから、仕事があるというのは、お金の面でもだけど、経営者の心理的にもすごく安心感がある。今日やるタスクが特にないという状況は、意外と人間にとってストレスで、仕事があって、自分の役割とか、貢献感がある程度感じられる状態の方がストレスが少ない。

【2】金融機関からの「信用のなさ」

金融機関と良い関係構築をすることが、起業を成功させるためには非常に重要。現預金残高のコントロールが経営の全てと言っても過言ではない。

まずは、日本政策金融公庫から創業融資を無担保・無保証人で受けて、できれば信用金庫の銀行口座に着金させて、次に信用保証協会の保証付融資を狙う。3期目〜4期目にかけてプロパー融資を目指すのが王道ルート。

だけど、スタートアップの融資周りは「信用のなさ」との厳しい戦い。

  • そもそも銀行口座が開設できない

  • ネット銀行だと納税や融資の着金口座に使えないことがある

  • 納税のために銀行窓口やATMまで行かないといけない

  • 融資相談を鼻で笑われる

  • 返済能力より単月売上を重視される

  • 信用保証協会の保証付融資が、当時は経営者が個人保証に入らないといけなかった(事実上、会社の借金=社長の借金)

などなど。「なんで〜」って突っ込みたくなることは多々あった。本当に融資が着金するまでは不安で仕方なかった。

不条理と感じる部分もあるけれど、金融機関側にも一定のロジックがある。例えば信用金庫は地域に根ざした活動をしていて、管轄外のエリアに事業所が移動してしまうと困る。なのでバーチャルオフィスの会社は口座開設すらさせてもらえない。

「IT関連の会社」というだけで、悪いイメージを持っている人も少なくない。「実態の見えないもの」を極度に嫌う文化がある。減点方式の人事評価なのでやむを得ないと思うが、随所に時代錯誤な一面を感じる。数字と熱意で小さな信用を積み重ねていくしかない。

【3】事業が思い通りに成長しない

実はパパゲーノは創業1年で既に3,4回くらいビジネスモデルの転換(ピボット)をしている。目指してることは同じだが、やってる仕事内容はこの1年で激しく変化してきた。

元々は、「リカバリーナラティブ事業」という精神障害当事者の語りを絵本や音楽、絵画等で届ける事業を何とかスケールさせようとしていた。その後、「語りの二次創作権」をNFTで売買するプラットフォーム事業の実証実験を経て、現在は縮小させている。(形を変えて継続はしている)

パパゲーノの3つの事業

創業初期は思い通りには進まないことの方が多い。そもそも「パーパス」とか、「ビジョン・ミッション・バリュー」とかの軸もまだ定まりきってない。その中で、探り探り事業を創っていくことになる。実践しながら、顧客・市場からの感触を掴み、やりたいことと、できることのバランスをとって舵取りしていかないといけない。

新しいことを始めるタイミングはワクワクして楽しいのだけれど、いざ色んな壁にぶち当たると、悩みが絶えなくなる。数字が伸びないと特に。数字が伸びても、「本当にこの売上って良い売上なんだっけ?」「パーパスに近づけてるんだっけ?」「外部資本入れずこのスピード感でいいんだっけ?」と論点は尽きない。

【4】誹謗中傷とか批判とか

関わる人が増えてくると、色々と考えるべきことが増えてくる。批判的な意見も耳にするようになる。 「自分たちのやってることは、本当に価値のあることなんだろうか?」と疑い出して、正解ない問いが脳内にずっと居座る。

僕は電通出身じゃないんだけど、なぜか電通出身と勘違いされて「電通に帰れ!」みたいなことを言われたりもした。(恐縮すぎる)

運良くテレビなどでメディア露出できたこともあり、心無いコメントを見ることは多かった。僕個人に対する誹謗中傷は受け流して終わりにしようと決めてるけど、とはいえ「ずーーん」と心に重くのしかかるものはある。

会社への批判はチームで受け止め会社の今後の経営哲学・価値観を見直す機会になる。結構悩むことは多い。

【5】mentallyの撤退

応援していたメンタルヘルス関連のサービスが終了することになったのは、とても辛かった。やっぱりこの分野はなかなかビジネスとして評価されにくいのかなと弱気になりそうだった。ほんと色々考えた。明日は我が身という感じで。

【6】バックオフィス全般つらい

日本で起業する以上は日本のルールに準拠して会社経営をしないといけない。仕方ないことだがバックオフィスの業務の非効率が凄まじい。わからないことがわからないのが結構辛い。わかったところで超非効率な作業しなきゃいけないし。

納税したくても、簡単には納税させてもらえない。国税と地方税の非効率な仕組みに失望する。特にeLTAXやe-Gov電子申請は酷いので覚悟が必要。個人事業主の確定申告とは比にならないくらい、しんどい。

起業する人は、バックオフィス業務でメンタルやられることをある程度覚悟しておくとよい。起業経験のある人にすぐ相談できるようにしておくのがおすすめ。

(僕でよければいつでも相談乗ります。DMください。)

【7】研究と事業の両立

どうやら自分は論文を書くと体調を崩すよう。大学院在学中の起業で、メディアと自殺について修士論文執筆とジャーナルへの投稿がひと段落した翌日に、おそらく自律神経の乱れで眩暈と耳鳴りがひどくて気絶しかけた。笑(なんとか自力で病院行けたけど)

論文書いている人をひたすらに尊敬する。起業家兼研究者を名乗ってる人は体が3つくらいあるんだと思う。それくらいすごい。

自分は研究のアイデアを企画したり、必要な資源を調達してくることは得意だけど、実際の論文執筆作業は大の苦手である。そこはチームで乗り越えていきたい。パパゲーノの生み出した知を論文にしてくれる参謀役の仲間を探したい…!

4月からは精神保健福祉士の専門学校に通う。学業や研究、インプットと、実践のバランスはみんな迷う部分だと思う。時折、学業に費やす時間が無駄に思えたり、仕事の忙しさで全然学業に集中できず辛い思いもするけど、なんだかんだで自分は両方やり続けたいタイプなのかなと思う。

二兎を追うことはNGと思う人やキャパオーバーになってしまう人もいると思うけど、「ダメ元で生きる」姿勢だと割と生き抜ける。「卒業できなくても死にはしないからいいや」と思って、ゆるく続けていたら、いつか何かの役に立つだろうという気持ちで細く長くやるのが良いと思う。

【番外編】お金は意外と何とかなる

起業する際にお金の心配をする人が少なくない。実際、会社のお金のやりくりは頭を悩ませることも多いけど、「会社のお金」と「個人のお金」について王道パターンを知っていれば意外と何とかなることは多い。

会社のお金の王道パターン

なるべくお金を貯めておいて、高めの資本金で創業し、資本金の2〜3倍の創業融資を日本政策金融公庫から無担保・無保証人で調達するのが王道。資本金300万円で、融資600〜900万円を入れられたら現預金1000万円くらいには出来るので、当分会社が潰れることなく挑戦できる。その後は、信用保証協会の保証付融資で金融機関との融資実績をつくっていく。

あとはいきなり赤字を掘ってスケール事業に投資するのではなく、手堅い収益を生むスモールビジネス型の事業で売上を作りながら新しい事業に挑戦するのが基本的にはおすすめ。いわゆる「キャッシュエンジン経営」と呼ばれる経営スタイル。

パパゲーノは資本金500万円で創業し、創業融資で900万円調達して、キャッシュエンジン経営をすることで1期目はギリギリ黒字を維持しつつ、やりたいことに挑戦させてもらえている。

個人のお金の王道パターン

会社経営者としてのお金の取り方は5つくらいある。

  • 役員報酬でとる

  • 役員賞与で利益を吐き出す(損金にできないので非推奨)

  • 株主に配当する

  • 会社の経費扱いで生活する(自宅開業とか)

  • 副業する(治験バイトとかやってみたい)

基本的には、「最初は生活費ギリギリの役員報酬を取る」というのが王道。現預金残高を高めて事業に投資できるような体制にしないと、事業が伸び切る前に会社が潰れる。経営者の家計のキャッシュフローが維持できる範囲であれば役員報酬は低ければ低いほど良い。自分に対して役員報酬を無駄に5万円払うくらいなら、そのお金で事業に投資した方が絶対に面白いじゃんっていう発想になる。

自分の場合は創業1年目は手取り16万円ほどにした。元々、月15万円くらいで生活しているので、お金に困ることは少ない。経営者個人の生活費を下げておくとかなり資金繰りが楽になるのでおすすめ。

余談だけど、起業すると雇用保険は外れるし基本手当ももらえない。でも、「法人」の役員であれば、健康保険には加入しているので、メンタル不調で倒れたりしたら「傷病手当金」を受給することはできる。厚生年金保険にも加入しているので「障害厚生年金」も。労働保険(労災・雇用)は入ってないけど、社会保険(健康・厚生年金)は入っているので、最悪の場合のリスクヘッジは意外とできている。

現在追加融資を狙っていて、もし融資が着金して会社の現預金残高に余裕ができれば2期目の役員報酬を上げるのもありかもとは思っている。けど、まだ無理に役員報酬を上げるより、事業に投資したいなという気持ち。

まとめ

起業してからの1年、しんどいことも多かったけど、それ以上にたくさんの人に支えられて、助けられて、生き延びていくことができてる。この恩は社会にしっかり還元したいし、これから起業する方にも還元していく。

僕たちはまだVCから出資を受けているいわゆる「スタートアップ」ではない。あくまで出来立ての中小企業。それでもストレスはたくさんある。仕事以外の問題も重なるとしんどい。VCから調達しているスタートアップはなおのことだと思う。

起業家のメンタルヘルスを良好に保つ方法は色々あるけど、1番は「事業を伸ばすことに集中できる環境を作ること」だと思う。それがやりたくて起業しているので。

スティーブ・ジョブズみたいなカリスマ経営者は別だと思うけど、僕みたいな凡人は完璧主義を捨てて、何度も挑戦し続けられる仕組みと文化を創ることが成功確率を高める最良の方法だと感じている。

そして、周囲の人をたくさん頼ること。チームはもちろん、お客さんや、金融機関、お世話になった人に会ったり、近況報告を定期的にしたりして、多方面から助けてもらうことで、色んな課題を乗り越えてきた。助けられた分だけ力がつくし、「恩返ししたいな」って気持ちも芽生えてくる。助けてもらった分だけ、人助けができる気がする。

これからも、ゆるくしなやかにメンタルヘルス分野で挑戦を続けていこうと思う。

パパゲーノの業績や事業戦略の振り返りは上記のnoteにまとめているので、興味のある方は読んでもらえると嬉しいです。

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