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今夜の告白(孤独を知る)

「あのさ、一緒に暮らさない?」

もちろん言われたのは、私ではありません。

代官山の地下にある某クラブの、壁に寄りかかっているお隣の

50代くらいの女性が、女友達に言っていたんです。

告白です。
これぞ告白。

なぜか私の心臓は飛び出るくらい心拍数が爆上がり、
強い緊張を感じていましたので。
持っていたワインをがぶ飲みしながら
聞き耳を立てておりました。

「なんていうかさ...私、一人でやっていく自信がなくなっちゃったんだよ。だからさ、誰かと暮らしたいなって思ったんだけど、
全く知らない人とルームシェアとかは考えられなくて...
長く付き合っている〇〇ちゃんとなら上手くやっていけるかなって...」

彼女は、自身が〇〇ちゃんと暮らしたい理由を頑張って述べていた。

それはもう頑張っていたので
AIによる説明文一気読み上げみたいな感じで述べていた。

「あ...でもさ、私...すごくだらしない部分とすごく潔癖な部分が混在していて...」と
〇〇ちゃんが重たそうな口を開き始めと

「そんなの誰だってそうだよ!!そんなのさ、徐々にお互いが慣れていけばいいじゃん!」
と、〇〇ちゃんが一生懸命捻り出したような「一緒に住めない理由」を、すかさず潰しにいく。

気まずい。非常に気まずい。
〇〇ちゃんは、きっと一緒に暮らす気はないんだろうな。
心は決まっているんだろうな。
つらいな。

「私はさ、ずっと一人で大丈夫って思ってたんだけど
この年になって、やっぱり一人でやっていく自信がとにかくなくなっちゃったんだよ。
だから一人よりも二人の方が、こういうことは乗り越えられるんじゃないかと思ってるの。
一人より二人の方が絶対に楽しいよ。”暮らし“って。」

〇〇ちゃんが返事に詰まっていると
「ぎゃー!偶然!!〇〇ちゃん久しぶり〜!!」と〇〇ちゃんのお友達らしき人が合流。

楽しそうにおしゃべりする〇〇ちゃんと新友。
同居をオファーしていた女性は上手く会話に混じれない。

ここで50代(推定)女性の「一緒に暮らさないか」という勇気ある告白は
返事が来ないまま
ぶった斬られる形で終了した。

孤独感は誰にだって訪れる。
それは決して自分が一人の時に訪れるとは限らない。

孤独って「状態」ではなくて「感情」だから。
みんなで一緒にいるのに強い孤独を感じることもあれば
1人でいても心満たされることもある。

1人でいるのか、みんなといるのか
そんな現実の状態とは関係なしに
「孤独感」はやってくるのです。

そして孤独から逃れたいという動機から
アクションを起こすことで
さらなる孤独を呼んでしまうことが
どうやらあるようです。

孤独は時に、自分を丸ごと支配するという
危険な状態を作ることがあるので

「孤独を知る」という行為はとても重要かもしれないと
この時に思いました。

年をとるということは
体の変化を感じることでもあります。

大人になってしまったら
ずっと20代のような体の状態が続くような幻想を抱いてしまいますが
少しずつ少しずつ
目も見えにくくなれば、耳も聞こえにくくなったり
体の変化を感じざるおえない時があるようです。

自分の体が不自由になり始めると
根拠のない自信がちょっとだけ崩れ始めたりもします。

そんな少し崩れた断面から、少しずつ、でもあっという間に
全身に浸透するのが孤独なんだと思います。

だからこそ「孤独を知る」ことは大切だなと。
孤独に食べられないためにもね。
孤独に食べられるとさ
人の形じゃなくなってしまから。

今夜の告白。
忘れないし。
彼女たちそれぞれの幸せを祈ります。

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