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外国人とコミュニケーションをしたいなら英語より「やさしい日本語」だ!

今回の対談では、「やさしい日本語」の提唱者である吉開章(よしかいあきら)氏(A)と、安河内哲也(やすこうちてつや)(T)が、「やさしい日本語」の意義や実践方法について語り合います。

「やさしい日本語」は、阪神・淡路大震災を契機に生まれた、日本語を母語としない人々に配慮した話し方の一つです。しかし、単なる「簡単な日本語」ではなく、相手に伝わりやすい話し方を意識するという深い意義を持っています。対談では、「やさしい日本語」の歴史、実践のコツ、さらには日本社会における外国人との共生の観点から、その必要性について掘り下げていきます。

「やさしい日本語」とは?

T:

「やさしい日本語」について教えていただきたいのですが、「やさしい」の表記はひらがなですよね?

A:

はい、そうです。「やさしい日本語」という表現は、阪神・淡路大震災(1995年)の教訓から生まれたものなんです。当時、神戸に住んでいた外国人住民の方々が、日本人と比べて2〜3倍の割合で亡くなったり、ケガをしたというデータがあります。この背景には、災害時の情報が外国人に十分に届いていなかったことがあります。

この反省から、弘前大学の佐藤和之(さとうかずゆき)先生が、「やさしい日本語」という概念を提唱しました。ひらがなで「やさしい」と書くことで、「簡単(easy)」でありながら「親切(kind)」でもあるという意味を含めています。

T:

なるほど。「やさしい日本語」は単に「簡単な日本語」ではなく、相手に配慮した話し方ということですね。

A:

そうです。よく「やさしい日本語は ‘easy’ なのか ‘kind’ なのか?」と聞かれますが、どちらの意味も含んでいるんです。単に文法を簡単にするだけでなく、相手の理解を助ける工夫も大切です。

外国語としての日本語と「やさしい日本語」

T:

私たちが海外に行くと、現地の言葉で話しても、相手が速いスピードで話してきて困ることがありますよね。でも、ゆっくり話してくれる人がいると、とても助かります。同じように、日本にいる外国人の方々も、ゆっくり分かりやすく話してもらえると嬉しいでしょうね。

A:

そうですね。ただ、日本にいる外国人の方の日本語レベルは様々で、日本語が上手な方もいます。そのため、見た目だけで判断して「やさしい日本語」で話すと、逆に失礼に感じる方もいるんです。

大切なのは、相手の理解度を見極めて、適切なレベルの日本語を使うことです。特に、言語が分かっても、文化の違いが理解できないことがあります。例えば、私たち同年代の日本人なら、昔のテレビ番組の話をすればすぐに通じますが、若い世代には通じません。外国人との会話も同じで、文化的背景の違いを考慮する必要があります。

T:

確かに、私も「やさしい日本語」を実践するようになってから、ほとんどの方に喜ばれます。外国人の方の中には、日本語で話すこと自体が怖いと感じる方もいるので、ゆっくり話してあげるだけで安心してもらえますね。

「やさしい日本語」の実践方法

A:

「やさしい日本語」を実践する上で、一つ大切なのが「一文を短くすること」です。長い文章だと、聞き手が理解する前に次の情報が来てしまい、頭が追いつかなくなります。

T:

確かに、私たちも英語を聞くときに、情報が多すぎるとパンクしますよね。一文を短くするコツはありますか?

A:

「はさみの法則」という方法を提唱しています。「は」は「はっきり最後まで」、「さ」は「最後まで」、そして「み」は「短く」という意味です。つまり、「はっきり、最後まで、短く話す」ことを意識するんです。

T:

なるほど! でも、日本人にとって「やさしい日本語」は、一種の外国語みたいなものですよね。だからこそ、意識的に練習する必要がありますね。

A:

その通りです。例えば、「私は医者をしている兄がいます」と言うと、聞き手によっては「私が医者なのか?」と誤解することがあります。これを「やさしい日本語」にすると、「私には兄がいます」「私の兄は医者です」となります。このように、短い文で順序立てて話すことが大切です。

T:

まるで中学一年生の英語のようですね! 関係代名詞を使わないことで、わかりやすくなる。

A:

まさにそうです。日本語の特徴として、動詞が最後に来るため、長く話せば話すほど意味が複雑になってしまうんです。だからこそ、文を短く切ることが重要です。

吉開氏の著書

外国人と共生する社会に向けて

T:

現在、日本には多くの外国人が暮らしています。インバウンドの観光客も増えていますし、日本で暮らす外国人にとって、「やさしい日本語」はますます重要になってきますね。

A:

そうですね。特に、災害時の対応や、行政サービスの場面では、「やさしい日本語」が非常に有効です。地方自治法第10条には「住民は平等に行政サービスを受ける権利がある」と書かれていますが、ここには国籍の制限がありません。つまり、外国人住民も同じように行政サービスを受ける権利があるんです。

T:

そう考えると、「やさしい日本語」は、単なる配慮ではなく、社会全体の共生にとって必要なものですね。英語でも「やさしい英語」を広めることができれば、もっと多くの人がコミュニケーションを取れるようになりますね。

A:

その通りです。「やさしい日本語」と「やさしい英語」が広まれば、多文化共生社会の実現に大きく貢献できると思います。

T:

本日はありがとうございました!

A:

こちらこそ、ありがとうございました!

「やさしい日本語」は、日本語を母語としない人々と円滑にコミュニケーションを取るための重要なツールです。一文を短くする、はっきり話す、順序立てて説明することがポイントとなります。

日本で暮らす外国人が増える中、「やさしい日本語」の普及はますます重要になっています。行政サービスや災害時の情報提供だけでなく、日常会話でも役立つ技術です。今後は「やさしい英語」とともに、多文化共生社会の一助となることが期待されます。

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