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    転ばぬ先の杖

               
               

 夫が退職後初めて買ったものは杖であった。二十年も前である。
買って何年も使う事がなかった。と言うよりしつようでなかったのである。
やっとこの五、六年前から使うようになり、外出には使っているが、時には寄った店に忘れてくることもある。

娘から「お母さんもそろそろつかたほうがいいよ」私はまだ歩行は普通で、自分としてはまだ、いらないとおもっている。
杖は四つ足があるのがいいわよ、とにかく年齢から考えても杖持って歩いた方が安全だからという。

私はまだ転んだことはないし、歩幅70センチ、背を伸ばして歩くことを習慣にしている。四つ足の杖をついて歩くことなど想像もしてなかった。
もしや「母の日」に送られてきやしないかと、不自由になったらお願いするからと断っておいた。

それから杖について調べてみるとおもしろいこと、一本杖、三本杖、四つ足のもの、材質もさまざまである。グリップがライオンの顔だったり、スワロスキーで飾られているもの色もさまざまである。

私は、杖は不自由な側につくのか、正常なほうにつくのかもしらなかった。
How to ステッキの中で、階段の登り降り、エスカレーターでの使い方など書いてあり、なるほど、使う前に知識を入れておかなければいけないらしい。
やっぱり、年齢も来てるから勉強して、それから自分の気に入ったものを求めようと思う。

ワクチン接種の日時もきまり、夏の風がふきはじめたので近くのお寺のセンダンの花が咲いた頃とでかけてみた。センダンの花は小さな花だが、大木にふさになって咲き、初夏の風にほのかに匂っていた。


# 杖   #老人  #How toステッキ