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8月4日 分岐

今回の予定

 朝ご飯を食べ、自転車を組み立て、荷物を自転車に装着して、9:30出発。ここの標高は3470m。15kmほど走ると、S215(省道215号)の始点に着いた。S215は今回走るメインの道だ。新都橋から冕宁までの420kmくらいの道で、今回はその真ん中より手前にある九龙まで走り、そこからS215を逸れて、ど田舎に入って行き三岩龙まで走る予定だ。地図で見ると三岩龙からもう少し先まで走れそうだが、その先はどうなっているのかわからない。
 九龙まで2日、そこから行けるとこまでさらに3日間走り、また3日かけて九龙までもどる。そして九龙からはバスで成都まで戻るのが今回の予定だ。できたら九龙までもどるときは車を捕まえたい。今回の旅のもう一つの目的は、三岩龙から先が亜丁か稲城まで続いているのかどうかを調べることだ。もし、亜丁か稲城に続いているのなら、次回、九龙まではバスで行き、そこから始めて亜丁まで走り、亜丁で3日間ほどハイキングを楽しみたい。あわよくば、その先の香格里拉まで走れれば最高なんだけど、亜丁から香格里拉まで稲城経由ではない道があるのかどうかも気になる。
 S215に入ると車の数はずっと減り、1時間走っても10台くらいにしかすれ違わない。自転車は皆無である。しかし、道はきれいに舗装されていて、しかも、軽い下りなので、順調に進んでいく。九龍までは160km、登坂高度は1000mほどだから、このまま舗装されているなら、予定通り2日で着くだろう。そうしたら、三岩龙よりもかなり先まで走れるかも知れない。道があれば。
 12時過ぎに小さい町に着いた。小さいけど、食堂が数軒、スーパーもある。スーパーと言っても、ハローズとかを想像してはいけない。かなり古くさいコンビニみたいな感じだ。当然ここで昼食を摂るのだが、町の入口に大きな標識がある。左を向いた矢印があり、「貢嗄山展望台まで102km」どうしよう。行きたい。でも、102kmは遠い。でも、102kmを往復するわけではなく、まっすぐ進んで75kmほどの地点に合流するみたいである。しかし、当然、舗装道路は期待できない。登坂高度も2000mを超えるかも知れない。もしかしたら、峠が2つ以上あり、登坂高度は3000m以上かも知れない。まっすぐ行けば、九龍まであと130kmほどで2日で着く。左に行けば、おそらく+3~4日で九龍に着くのは5~6日後になる。でも、できることなら標高7556mの貢嗄山を見てみたい。というよりそれ以上に、標高5000m近くもしくはそれ以上の峠(できることなら未舗装)を越えてみたい。日程的には、もし行けば、三岩龙には届かないかもしれない。九龙から3日走っていけるとこまで、が1日か1日半走っていけるとこまで、となる。どうしよう・・・
 まずは昼食を摂るため、食堂に入る。メニューを見ても何か分からない。でも、適当に頼んで激辛のものが出てきても困る。どうしようかと迷っていると、一番下に書かれた一番安い300円の「蕃茄炒蛋」が目に付いた。トマトと卵を炒めたもので、これなら外れはない。ごはんはパサパサでまずいが、十分いける。食事をしながら考えた。九龙から三岩龙に向けて1日走れば、その道が亜丁か稲城に続いているかどうか知ることができるだろう。よし、左の道だ。

青い道を行くことに

 左に進むなら、これから3~4日間は店がないと思われるので、昼食後、2日分の食料と水5㍑を手に入れる。日本から持ってきたカロリーメイトやフリーズドライ食品が3日分あり、水も川の水を浄水器で飲用にできるので、これで十分だろう。さあ、これから全然予定していない、高低差も全く分からない、もちろん持っている地図には書かれていない未知の道を走る。とても、わくわくする。ここの高度は3370m、貢嗄山展望台は何mなんだろう?走り始めて10分ほどでダートになった。しかも、轍(車のタイヤが通った跡)の深さが20cmくらいもある泥道だ。上りなのでとても乗っては走れない。自転車を押して、ぬかるむ泥道を黙々と進んでいく。16時、雨が降り出した。カッパを着て、再び自転車を黙々と押す。5時間で20km進んだ。標高はおよそ4000m。休憩していると、前から若いカップルの車がやってきて、ぼくのそばで止まった。「雨が降ってるから貢嗄山は見られないよ」「うん、いいよ。ぼくが展望台に着くのは明日か明後日だから。もしかして、天気予報では明日も明後日も雨なの?」「いや、天気予報は知らないけど・・・」「じゃあ、いいよ。それに、貢嗄山を見ることよりも、この道を自転車で走ることが一番の目的だから」と言って別れた。そして、また自転車を押し始める。晴れてたら心地良いけど、雨の中は辛い。15分くらい経つと、さっきのカップルが戻ってきた。???どうしたんだろう???男性の方がまた話しかけてきた。「チョコレートをあげようか?」「うん。もらえるならうれしいけど、あなた達はいらないの?」「うん。ぼくたちはいいから、持って行きなよ」と言ってチョコレートと豆の缶詰を2つくれた。2人で写真を撮って、名刺を渡した。今撮った写真を送るから、メールを送ってと言い、握手をして再び別れた。なんていい人なんだろう。

 それからさらに1時間ちょっと雨の中、自転車を押して進んでいく。19時を過ぎたので、適当な場所を見つけてテントを張る。雨の中でテントを張るのはたいぎい。でも、張るしかない。テントを張って、テントの中に入る。もらった缶詰を温めて夕食にする。何もすることがない。晴れていたら、星がきれいだろうけど、雨だから何も見えない。テントに雨が当たる音と川の流れる音が響く。心地いい音で、すぐに寝入った。ここは分岐して25km、標高4120m地点だ。

道端キャンプ

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