雨の後の虹の後。
昨日から降りしきる雨に、彼女はうんざりしているようだった。
洗濯物は干せないし、外に出かけることもできない。
仕方なく彼女は僕のシャツをハンガーに吊るすと、カーテンレールに引っかけた。
雨は激しく地面を叩き、部屋の中の静けさを余計に際立たせた。
淡々と洗濯物を干している彼女を横目に、僕は2つのグラスにコーヒーを注いだ。
彼女はため息をついて、小さく呟く。
「雨は嫌い。」
僕は彼女の言葉を聞いて、当たり前のように答える。
『雨の日だって、良い事はあるはずだよ。止まない雨なんて無いんだから。それに、雨は虹を連れてくるんだよ?』
洗濯物を干し終えた彼女は、僕の前に座って呆れたように僕に言う。
「君は何も解ってないわ。止まない雨はないかもしれない。でもそれは、消えない虹はないって言ってるようなもんじゃない。」
そう言って、彼女はコーヒーのグラスにガムシロップを入れると、赤いストローでグラスをカラカラと混ぜた。
僕は小さく笑て、コーヒーを一口飲む。
『そうだね。でもそれは、良いことも悪いことも、終わりが来るってことだよ。それって、とても良いことだと思わない?』
僕の言葉を聞いた彼女は、少し考えて答える。
「そうね。虹の写真を見たって、嬉しくなんてないものね。」
そう言うと彼女は難しい顔をして、窓の外を眺めた。
いつの間にか激しかった雨は止み、雲の隙間からは日の光が差し込んでいる。
彼女は虹を探すけれど、窓の外には見つからない。
そして、僕の顔を睨んで笑うと、「嘘つき。」と呟いた。