雪どけ。

一晩で景色は真っ白に染まり、彼女は赤いコートを羽織って外に出かける。
僕は冷たい手をポケットに突っ込んで、白い息を洩らしながら彼女を追いかける。
彼女は小さな雪だるまを作ると僕に聞く。

「ねぇ?雪が溶けたら、どうなるか知ってる?」

僕は彼女のにんまりした顔を見ながら考える。
彼女がこの顔をしている時は、なにか悪戯を思いついた時だということを考慮しながら。
ポケットの中はまだ冷たくて、僕は両手を擦り合わせながら息を吐く。
そして、雪が溶けたことを想像して、答えに辿り着く。

『春になるんでしょ。』

彼女は僕の答えを聞くと、唇をとがらせて僕に雪玉を投げつける。

「ポケットに手入れてないで、投げ返してよ。」

震えている僕はまたポケットに手を入れると、小さく笑って小さく震える。
そんな彼女は見かねてか、僕に近づいてきて抱きついてくる。
僕も彼女の背中に手を回すと、寒くないようにと何度もさすった。

「これで寒くないよ。春が来るから。」

そいう言うと彼女はまた、雪玉を作り始める。
僕はまたポケットに手を入れる。
コートのポケットには雪が入れられていて、僕はまた笑うと彼女に雪玉を優しく投げた。

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