恋と呪いについて。
「見返りを求めるのが恋で、見返りを求めないのが愛だとしたならば、呪いは恋と一緒なのかな?」
彼女は焦げかけのトーストをかじって僕に聞く。
買ったばかりのトースターは、焼き加減の調整が難しいらしい。
「確かにね。不安感が恋で、安心感が愛だとしたならば、呪いは恋と一緒だね。」
僕は焦げたトーストにバターを塗って、ヨーグルトに蜂蜜を垂らした。
『ドキドキするのが恋だとして、ホッとするのが愛ってこと?じゃぁ、浮気は恋で、結婚は愛だね。』
彼女はベーコンにケチャップをつけると、器用に丸めて口に運ぶ。
「僕が浮気したら君はどうする?」
もちろん、僕は浮気をしたこともなければ、しようとも思っていない(今のところは)。
彼女の反応が知りたくて、意地悪な質問を返してしまう。
『君のこと、呪うかな?でもそれじゃ、両思いになっちゃうね。君がもし呪いで死んじゃったら、それは愛に変わるのかな?』
彼女はそういうと、目玉焼きの黄身をくずして、笑ってみせた。
僕は少しだけ背筋を伸ばして、少しぬるくなった珈琲に口をつけた。