【NPO書評】小山田圭吾 炎上の「嘘」 東京五輪騒動の知られざる真相
東京オリンピックの前にSNSで炎上した小山田圭吾さんの真相に迫った本です。
たまたま目にして読みましたが、とても勉強になりました。
20年くらい前の音楽雑誌のインタビュー記事がきっかけで炎上したものです。
障害のある同級生をいじめていたことなどが書かれていました。
その時は、東京オリンピックに関する逆風もあり、瞬間最大風速的に一気に炎上してしまい、小山田圭吾さんが東京オリンピックの開会式の音楽担当を降板することになりました。
その事件について、ノンフィクションライターの著者が、小山田さん本人のインタビューやその周辺の関係者に対する丁寧な取材で、真相を明らかにしていきます。
小山田圭吾 炎上の「嘘」 東京五輪騒動の知られざる真相
2024/7/24
中原 一歩 (著)
2021年7月の時は、この事件については、マスコミやSNSで流れてくる情報を眺めているだけでした。当時は、新聞報道などの通り、ひどいいじめをしているなと思っていました。
でも、本書を読んで、実際はそうではないということがよくわかりました。また、インタビュー記事の内容だけが独り歩きして、その内容が正しいかどうかの検証がなされずに広まってしまったものでした。
当時、どんなきっかけでネットで騒がれるようになって、そこから炎上し、小山田さんの東京オリンピックの開会式の音楽担当からの降板、そして人としてほぼ抹殺されてしまった状況などが丹念に紹介されてしまう。その渦中で小山田さんやその家族、関係者がどうしていたのかも紹介されています。
事件の表と裏が丹念に描かれていて、事件のルポタージュになっています。
炎上事件がどのように生まれて、当事者にとってどんな影響を与えたのかを詳しく知ることができました。
その一方で、炎上のきっかけになったインタビュー記事の信ぴょう性そのものについて検証していく方向性に本書は進んでいきます。
インタビュー記事が載った音楽雑誌や編集者のことから、小山田圭吾さんの同級生などにも取材をして、記事が誕生した経緯まで紐解いていき、かつ同級生に本当にいじめ事件があったのかどうかを取材していきます。
少しずつ真相がわかってきて、最終的には、あの時の炎上事件が正常のものだったのかを検証していきます。
一つの炎上事件をここまで詳細に解説されたものは数少ないサンプルなので、とても貴重なものです。あらためて、こういう内容を読むとSNSや、そこから派生するマスコミ取材の怖さや、あるいは横暴さを知ることができました。
情報リテラシーとして一読しておくべき本だと思いました。
SNSを担当するNPOの広報の方などは機会があれば読んでおくことをお勧めします。