【NPO書評】父 渋沢栄一 新版 Kindle版
たぶん、寄付のことが書いているだろうとあたりをつけて、読んだ本です。
今回もAmazonのオーディオブックのAudibleで読みました。
渋沢栄一の四男である渋沢秀雄から見た、父の渋沢栄一像は大変興味深いですね。
渋沢栄一については、以前のNHKの大河ドラマ「青天を衝け」を見ていたおかげで予備知識があったのがよかったです。渋沢栄一の人生の重要な出来事や関係者に関する知識をもとに、その時の渋沢栄一の心情を深く知ることができ、とても面白かったです。
父 渋沢栄一 新版 Kindle版
渋沢 秀雄 (著)
渋沢秀雄は栄一が50歳頃のお子さんということです。
すでに偉大な実業家となっている栄一のもとで生まれ育っています。
本書を読むと、家庭の中で栄一が自分の過去を語っていることや、様々な書籍などをもとにまとめているようです。
息子の視点から栄一像であり、本人から伝え聞いたことなので、渋沢栄一の人間味を十二分に感じることができます。
紙だと400ページ、オーディオブックだと12時間越えの大著ですが、結構さくさくと読むことができました。
おおよそ3部構成となっていました。
明治維新までの農民&武士の時代の話。
明治時代の官僚から実業家の時代の話。
渋沢栄一本人と渋沢家の話。
最後の渋沢家の話は大河ドラマでも取り扱っていなかった話題なので、知らないことが多く、面白かったです。栄一の私生活を息子が語っているというのはなかなか乙ですね。
渋沢栄一の人生を丁寧に辿りつつ、その都度その都度、大きな出来事について、詳しく書かれているという構成です。特に明治維新までの青年期の栄一の話が多めで、生き生きと描かれています。
その中で、ところどころに寄付の話題が出てきます。
渋沢秀雄によれば、栄一の最初の寄付は明治の初め、大蔵省務めだった際に、丸の内界隈で大火事があり、その復旧のために大蔵省の中で寄付を募り、東京市に寄付をしたことと、個人でも多額な寄付をしたそうです。
また、寄付やチャリティについての最初の体験は、幕末のパリ滞在時にフランスの貴婦人が主宰したチャリティバザーに参加して、こういう仕組みがあるのかと感銘を受けたというエピソードがありました。
そして、栄一が関わった企業は500社、非営利組織や学校などの公益団体は600団体という中で、孤児救済を行った「養育院」のことが紹介されていました。約50年に渡って関わった養育院のエピソードは度々登場してきます。渋沢栄一のフィランソロピーを感じることができ、興味深い内容でした。
他に、関東大震災の復興委員の話もありましたが、寄付については語られていませんした。
ちなみに、渋沢栄一のフィランソロピーやチャリティにバックボーンに、栄一の母のゑいが地域で困っている人がいれば積極的に手助けをしていた慈悲の心の影響があったのではという推察もありました。
最後の寄付エピソードとしては、栄一のフィランソロピー精神は亡くなった後にも生き続けていました。
お葬式の際に遺族は弔問客から一切の香典や供花を辞退したそうです。
ただ、その後、渋沢栄一が設立した財団に多くの寄付が寄せられたそうです。
渋沢栄一の人生を知りつつ、寄付のエピソードも発掘することができるよい本でした。
今の日本のフィランソロピー業界の礎を作った渋沢栄一の精神をあらためて学べる本です。