【NPO書評】ピエタ (ポプラ文庫 日本文学)
偶然、見つけた小説でした。
チャリティイベントを探すために「慈善」というキーワードで検索をした時に、この小説を題材にしたコンサートを見つけて、知ったという経緯です。
そして、この本も寄付の本でした。
18世紀のヴェネツィアに実際にあったピエタ慈善院を舞台にした物語です。
ピエタ慈善院は、「四季」の作曲家ヴィヴァルディが司祭として務めていた慈善院です。ヴィヴァルディは、慈善院の孤児を「合奏・合唱の娘たち」として指導し、さらに慈善院のための曲を作曲しました。そして、「合奏・合唱の娘たち」は慈善演奏会としてそれらの曲を演奏していました。コンサートの収益は慈善院の運営に使われていたとのことです。
物語は、ヴィヴァルディの教え子のエミーリアのもとに恩師の訃報が届いたところから始まります。
ヴィヴァルディに音楽を教えてもらっていた子どもの時代の思い出と、成人しピエタ慈善院の事務員として働いている今とが交錯するように物語が進んでいきます。
その中で、ピエタ慈善院の運営について垣間見ることができます。
ヴェネツィアの花形作曲家だったヴィヴァルディが亡くなった後に、慈善演奏会の人気も落ちてきて慈善院の運営にも影響が出てきます。そして、大口寄付者となる、旧知である貴族の娘に対する寄付のお願いなど、この時代の寄付についてもなんとなく知ることができました。
ピエタ (ポプラ文庫 日本文学)
2014/2/5
大島真寿美 (著)
はじめは、単純に寄付への興味から読み始めましたが、この小説の世界観にどっぷりつかってしまいました。
18世紀の華やかなヴェネツィアで、ヴィヴァルディを接点に女性たちの交流が静かに紡がれていきます。ヴィヴァルディの直筆の楽譜を巡る、一種のミステリー小説のような物語として進んでいきます
読み終えて、とてもすがすがしい気持ちになりました。
最近、小泉今日子さんの朗読によるオーディオブック(Audible)も出ています。
クラシック音楽好き、寄付好きのNPO関係者のみなさんにぜひ読んでほしい一冊です。
年末年始に清らかな気持ちで読むのに最適な本です。