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【NPO書評】森と算盤 地球と資本主義の未来地図

渋沢寿一さんのお名前はだいぶ前から知っていました。
全国の高校生100人が「森や海・川の名人」をたずねる「聞き書き甲子園」を実施している、NPO法人共存の森ネットワークの代表をされているということで、お名前は存じ上げていました。ただ、実際にお会いしたことがないのですが、たまたま図書館の新着本コーナーで見つけたので、読んでみました。

著者の渋沢寿一さんの経歴について、本を読んで、初めて詳しく知りました。
渋沢栄一のひ孫ということだけは知っていました。
農学博士で、JICAの専門家として農業や林業などに従事していたとはまったく知りませんでした。また、「里山資本主義」のパイオニアです。

森と算盤 地球と資本主義の未来地図

2024/5/25
渋沢寿一 (著)

前半は、そんな経歴の著者が渋沢栄一の思想をあらためて解説しています。
本のタイトルになっている通り、渋沢栄一の「論語と算盤」を「森と算盤」と読み替えて、自然や持続可能性という視点から、渋沢栄一の思想を読み解いているのがとても面白かったです。渋沢栄一は近代資本主義の父と言われていますが、実際には「合本主義」という表現で、資本家が中心とした経済ではなく、それぞれが持っている資源をあわせて実業に取り組むということが解説されていたのが、なるほどでした。

そこから、著者の渋沢寿一さんの半生を踏まえつつ、「里山資本主義」に辿り着いた軌跡が語られています。1952年の著者の半生なので、戦後の経済発展の中で、農業や林業に従事していた背景などが語られ、持続可能性の重大さに話が展開されていきます。
著者の実体験も踏まえての文章なので、とてもイメージしやすく、わかりやすいです。

後半は、「里山資本主義」として、著者が深く関わっている岡山県真庭市の事例が紹介されています。これも、具体的で、かつ専門的過ぎず、とてもわかりやすい解説になっています。他の地域の事例なども紹介されているので、イメージしやすい内容になっています。

あらためて、渋沢栄一は「論語と算盤」で、経済だけではなく、世の中を良くしていこうという志が大切ということについて、その実例として持続可能性や自然を大切に活用していくことを引き合いに出しながら、解説していく内容になっています。
渋沢栄一と著者の渋沢寿一さんのフュージョンですね。

これは、地域のNPOセンターの図書コーナーに揃えておきたい一冊ですね。
ちょっと視点を変えたいと思っているNPO関係者にもお勧めです。
あと、里山資本主義に興味があるけど、まだあまり詳しく知らない方には、導入として読むにもいいですね。


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