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【NPO書評】この部屋から東京タワーは永遠に見えない

この部屋から東京タワーは永遠に見えない 
2024/8/21
麻布競馬場 (著)

Twitter文学、タワマン文学として話題になった麻布競馬場さん(著者名です)の短編集です。
オーディオブックのAudibleで見つけたので、早速読んでみました。

X(旧Twitter)で投稿されたショートストーリーなので、気になった方はぜひ麻布競馬場さんのXのアカウントをチェックしてみてください。

東京での充実した人生を目指した20代の挫折と諦観の物語です。
ミュージシャンやアーティストを目指した若者ではなく、エリートサラリーマンや起業家を目指した若者が主人公です。
心をえぐる小説ですね。

主人公の一人語りの文体がいいです。
Twitter文学と呼ばれているので、まさに、主人公が匿名のXのアカウントで連続投稿して独白するような感じで、心の闇を感じさせますね。
登場人物の設定が絶妙です。
他の小説では主人公にならないような人物の心情をここまで描き切るとは。

明治以降の近代文学で青年の苦悩を描いた小説が流行って、青年がよく読んでいたそうですが、その令和版という感じです。
登場人物(20、30代)と同世代の人はこの小説をどんな風に読んでいるのか、とても興味があります。

今回は22の短編が収録されていますが、基本的に20代で人生に挫折した人々が主人公になっています。主人公の独白の中で特に印象に残るのが、ほとんどの話が親からの過剰な期待が挫折の遠因と思っているところです。東京での生活がメインテーマの話でありながら、その裏に親との関係があります。最近はやっている「親ガチャ」という言葉を連想してしまいました。

令和の若者文化の一つとして、麻布競馬場さんの小説は押さえておきたい本ですね。
特に、首都圏で活動している若者支援のNPOのみなさんは要チェックです。


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