【NPO書評】パラリンピックと日本人: アナザー1964 (小学館新書)
今回も、寄付に関する本を探して、読んでみました。
(オーディオブックのAudibleです。)
でも、寄付の話題は別にして、とても面白い本でした。
1964年に日本で初めて開催されたパラリンピックのお話です。
(パラリンピックの名称もこの時からです。)
以前、映画「東京パラリンピック 愛と栄光の祭典」を鑑賞しました。
当時の東京の様子から、パラリンピックに参加する国内外の選手の到着、選手宿舎村の様子、大会の模様など、とても興味深いものでした。
国立競技場ではなく、代々木公園陸上競技場(通称・織田フィールド)で開催された風景は隔世の感がありました。
本書で、あらためてその裏側を詳しく知ることができました。
1964年のパラリンピック開催までの道のりなど、すごい話ですね。
開催までの準備期間が2年だったこと、その頃、日本では障害者スポーツなどまったく行われておらず、急遽出場選手の育成が行われたことなど、当事者の関係者や出場選手のインタビューなどを交えて、とても丁寧に紹介されています。
また、パラリンピックのことだけではなく、戦後から東京パラリンピックまでの障害者福祉の状況なども、勉強になります。
パラリンピックと日本人: アナザー1964 (小学館新書)
2024/8/1
稲泉 連 (著)
そして、東京でのパラリンピックがその後、どのように日本社会、あるいは関わった関係者や選手にどのような影響があったのかも丹念にまとめられています。オリンピック・パラリンピックのレガシーというのが当たり前に語られる時代ですが、1964年のパラリンピックのレガシーもすごい遺産だったというのがよくわかります。
障害者スポーツの発展やバリアフリー化の推進など、当時の関係者・選手のその後のみなさんの努力があって、現在の姿の礎になっていることがよくわかります。
NPOのようなこういう仕事をしていると、先人の努力をしっかり学ぶことが本当に大事ですね。
そして、話題の寄付については、1964年のパラリンピックの開催のためには9000万円の予算が必要だということで、そのファンドレイジングの話がありました。国が2000万円、東京都が1000万円、残りを民間で集めるということでした。
他に自転車振興会や自動車連盟などからの助成金や寄付(それぞれ2500万円)などを含めて、民間で残りの寄付金を集めたそうです。そのエピソードの一つに、日本バーテンダー協会がバーやキャバレーで募金活動を行って、300万円の寄付が集まったとのことです。
ただ、パラリンピックの開催には、歌手の坂本九さんがチャリティコンサートを開催したというエピソードがありましたが、本書ではその話題が掲載されていませんでした。
また、開催費を抑えるために、自衛隊や日赤の奉仕団が大会の運営要員として積極的に参加しています。
本書は、具体的なエピソードが豊富で、関係者のインタビューも実に興味深く、新書なのでちょうどよい分量なので、とても読みやすい本です。
ぜひ、お勧めします。