【NPO書評】ボランティアに生きる: 日本のフィランソロピー水脈を掘り下げる五つの話
こちらは、図書館でたまたま見つけた本ですが、かなり面白かったです!
30年前に書かれたフィランソロピー、寄付、企業の社会貢献などに関する5つの物語でした。
30年前のものですから、まったく知らない話しばかりでした。
新しい物語を知るのは楽しいですね。
著者は、知的生産の技術研究会の創設者だった方です(同研究会は現在NPO法人)。1970年に設立されていますが、「知的生産」の研究とは、創造性開発、企画力の育成などを目的としているそうです。その当時、画期的な研究会だったようです。
本書が書かれた1993年は、企業メセナや企業フィランソロピーなどの動きが本格化してきた時期です。そんな時代に、日本のフィランソロピーについて深掘りするという内容なので、もはや興味しかありません!
本書で紹介されているのは、以下の5つの話です。
・戦中から韓国で孤児救済のための施設である共生園を運営してきた田内千鶴子
・私立の学校で、健常児と自閉症児の混合教育を行っている武蔵野東学園を設立した北原キヨ
・4000人を超える中国人留学生の支援を行ってきた五十嵐勝(経営していた八百屋が傾きはじめても留学生の支援をやめず、大林宣彦監督の「北京的西瓜」のモデルになった人)
・1990年代の日航社員による社会貢献活動やボランティア活動(まだCSRという言葉が出てくる前に企業のCSR活動の原型のような話でした)
・アメリカに進出した日本企業による現地での社会貢献活動
ボランティアに生きる: 日本のフィランソロピー水脈を掘り下げる五つの話
1993/8/1
八木 哲郎 (著)
いずれも、まったく知らない偉人や話しで非常に興味深かったです。
まだまだ、こういった偉人がいるんですね。
それぞれを紹介すると長くなってしまうので割愛しますが、寄付については、共生園を運営していた田内千鶴子の話はとても面白かったです。
この時代の社会事業家はファンドレイザーの側面もあります。
地道な活動を継続して続けて、その結果、ファンドレイジングにつながる地道な努力にただただ涙してしまいます。偉大な事業家でファンドレイザーでした。
昔、日本財団で福祉の担当で発達障害分野の担当もしていましたが、武蔵野東学園のことはまったく知りませんでした。こんな学校があったんですね。(今、ネット上ではいろいろな情報が出ていますが)
1990年代の日航の社員主体の社会貢献・ボランティア活動も、日本企業の社会貢献活動の歴史を知る事例として興味深かったです。中でも、図解で有名な、多摩大学名誉教授の久恒啓一さんが日航の社員として登場するのが歴史を感じさせます。
この時代、企業主体というより、社員が主体となってボランティア活動が展開されていったんだなと、実に興味深かったです。
また、1980年代のエチオピアの飢饉に対して、朝日新聞等が行ったアフリカ飢餓救済基金のキャンペーンで集めた寄付をもとに救援物資を購入してアフリカに届けようという活動に対して、日航がチャーター機を提供することを申し出て、その費用(4000万円)の一部を日航社員自身が寄付を集めて行うという取り組みもすごいですね。国内外の日航本社・支店などの職域募金で1200万円の寄付を集めたそうです。これらも、社員有志による発案と取り組みでなされていたそうです。
偉人から企業の取り組みまで、すごい事例を知ることができ、勉強になりました。