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【NPO書評】国防婦人会: 日の丸とカッポウ着 (岩波新書)
国防婦人会: 日の丸とカッポウ着 (岩波新書)
1985/4/19
藤井 忠俊 (著)
日本の寄付の歴史を調べていると、戦争時の寄付の事例があって、最初は驚きでした。一度気にすると、いろいろな事例を見つけるようになりました。
例えば、横山大観は新作絵画を描いて、それを販売して、その収入を軍用機の購入費用に充てる寄付をしたり。お金の寄付ではありませんが、国民が毛布を献納したり、慰問袋を作成して戦地に送ったりなどの献納活動もありました。
先日、「日の丸とカッポウ着」という、戦時中の寄付の話題が出てくる舞台を見て、初めて「国防婦人会」という存在を知りました。
そこで、読んだ本がこちらの本です。
国防婦人会とは、、1932年から1942年まで存在した日本の婦人団体で、割烹着と会の名を墨書した白タスキを会服として活動し、出征兵士の見送りや慰問袋の作成など、銃後活動を行っていた団体です。一番多い時には、約900万人の会員がいたそうです。
国防婦人会は、1931年の満州事変が発生した後、大阪で「大阪防空献金活動」という募金活動を積極的に行った庶民の主婦たちが中心になって結成されました。「国防は台所から」というスローガンをもとに活動を行っていました。
戦時中の献金活動について知りたいと思って読んだ本ですが、戦時中の婦人会について詳しく知ることができ、とても勉強になりました。
国防婦人会は一般庶民の主婦を中心とした組織でしたが、もう一つ、地域の名士の妻が中心となって組織化された愛国婦人会という団体もあります。最終的には、その活動は戦時中の隣組活動に吸収されていきました。
国防婦人会は、戦時協力の団体ですが、女性解放の視点で見ると、家にしばりつけられ、自由な外出もままならなかった一般女性を家庭から「解放」して家庭外での活動を可能にしたという側面もあったそうです。
満州事変後の愛国機献納運動による募金活動のことが詳しく書かれていたので、寄付の事例としてはとても参考になりました。
主に都道府県単位で募金活動を行い、一機7,8万円の飛行機購入代を集めていました。本書では、48機の愛国機がこれらの献金活動で整備されたとのことでした。
他にも戦時中の戦費獲得のための献金活動や廃品回収活動も紹介されていて、興味深いエピソードが盛りだくさんでした。
全体を通して、戦時中の組織・団体、寄付、贅沢を禁止する国の取り組み(かなりエコでした)、廃品回収、女性の地位や役割など、大変興味深い話がいろいろと掲載されています。市民活動やNPO活動につながることや、反面教師としての事例や思想など、歴史として学ぶべきことがあると思います。
機会があれば、お近くの図書館で探して、読んでみてください。