【NPO書評】就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差 (中公新書)
本書のタイトルが「就職氷河期世代」ということで、就職氷河期世代の自分としても興味を持って読みました。
就職氷河期世代と言えば、昭和40年代後半から50年代前半の生まれ、バブル崩壊後の1990年代後半に就職活動をしていて、現在の年齢は50代前半から40代後半ということです。(本書では、具体的に「1993~2004に高校、大学などを卒業した人々を「就職氷河期世代」と定義しています)
ただ、本書は就職氷河期世代について読み解いた本というより、就職氷河期世代以降の世代の状況を各種統計データなどをもとに、非常に解像度高めに読み解き、解説したものとなります。
就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差 (中公新書)
2024/10/21
近藤 絢子 (著)
これまで、各世代の状況はイメージで語られていたり、当事者がその世代の代表のように個人の感覚を語っていたものがありましたが、本書はデータに基づき、年齢、卒業年、性別など細かい分類をもとに実態をあぶりだした内容になっています。
雇用形態や所得から、結婚・出産など家族形成への影響や、男女差、世代内の格差、地域間の移動などについて、統計からわかる各世代の実態は切実ですね。
データをもとにしているので、非常に解像度の高い内容となっています。
冒頭で書いた通り、就職氷河期世代ではなく、主にそれ以降の世代の実態もあぶりだした内容となっています。
これは、NPOの方が社会問題を考える時のベースとなる統計データ集になると思います。とても活用できる本です。
今後の社会問題を考える時に、高齢化に伴う困窮への対応やセーフティネットの拡充を考える時の基礎資料になります。
特に、貧困問題や高齢者支援、孤立・孤独の問題に取り組んでいるNPOにとっては、必読・必携の本になりますね。
著者は労働経済学を専門としている大学の先生です。
新書なので、専門的な内容もとてもわかりやすく解説されているので、興味深く読み進めていくことができました。