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【NPO書評】「円」より「縁」 地域通貨が示す新たな選択

「円」より「縁」 地域通貨が示す新たな選択
2024/8/29
納村 哲二 (著)

こちらも、図書館の新着コーナーで見つけたので読んだ本です。
地域通貨というと、90年代後半から2000年代の初めのころ、ブームになっていた記憶があります。その当時は今のようなテクノロジーがないので、紙で発行されたチケットのような地域通貨があるという印象でした。

でも、今のテクノロジーで、その時からさらに進化した地域通貨が今、流行っているんですね。認識をアップデートすることができ、とても勉強になりました。

著者はソニー出身で、ソニーが開発したICカードの「フェリカ」を担当し、その後、フェリカに関する子会社「フェリカポケットマーケティング」を設立し、さらにソニーグループから今は、イオングループになっています。

なので、事例等は「フェリカ」をベースとした地域通貨のプラットフォームのものが中心となっていますが、現在の地域通貨について体系的に学ぶことができます。

最近の地域通貨は、「デジタル通貨」の形式で発行されることが増えています。
買い物のほか、ウォーキングなどの健康増進活動や地元のボランティア参加通貨でポイントを得ることもできるようになっています。そのベースとして、スマホのアプリを使っています。
アプリなので、行政からのお知らせを配信したり、地元の図書館カードとして利用ができるようになったりもしています。いわゆる、地域のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の強力なツールとしても運用されている自治体が増えています。
さらに、自治体による給付金の仕組みや、地域買い物券の制度と組み合わさって、導入が進んでいるそうです。

以前のブームの際とはまったく違う形になっていますね。

本書の事例の中でも、地域の商店街や自治体、地域住民も相乗りしている共通ポイントの役割を果たし、ポイントの使用例として、地域のNPOの寄付の仕組みも紹介されています。ポイントで買い物ができるだけではなく、寄付もできる仕組みになっているのは面白いですね。

本書では、地域通貨の歴史や、フェリカを中心としてICカードの仕組み、デジタル通貨の隆盛などをとてもわかりやすく、丁寧に解説してくれているので、ほとんど知識がなくても、これを読んでいけば、最近の地域通貨、デジタル通貨のことが一通り、理解できます。また、デジタル通貨や地域通貨の特徴や利便性、目的などについて、図を使って分かりやすく分類して、解説してくれているので、とても参考になります。
あと、事例も豊富なので、理解しやすいです。

地域の中での資金循環を考えた時に地域通貨も大事なツールの一つだと思うので、特にファンドレイジング担当のNPO関係者は基礎知識として読んでおくべき本だと思います。
また、NPOセンターの図書コーナーにもお勧めの本です。


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