【NPO書評】新版 人は、なぜ他人を許せないのか?
新版 人は、なぜ他人を許せないのか?
2024/6/5
中野 信子 (著)
本書は、XなどのSNSでNPOのことが叩かれている状況や、寄付に関する不祥事が発生した時のバッシングについて、理解を深めたいと思い、読んだ本です。
オーディオブックのAudibleで読みました。
著者は、脳科学や心理学などの研究者で、メディアなどでもよく出ている方ですね。
2020 年1 月に出版されたものを加筆修正したものです。なので、新型コロナ禍の状況も盛り込まれていました。
本書では「正義中毒」という言葉がキーワードが出てきます。
「正義」を振りかざすことで、快感を感じていく、脳の仕組み。
実に興味深いものでした。
「間違っている人を徹底的に罰しなければならない」とか、「自分と異なる意見は悪である」とか、「許せない」という感情は、その人の資質や心というよりは、そもそも脳の構造が引き起こしているということでした。脳によって生まれてくる「快楽」「快感」になっているんですね。
裏切り者や社会のルールから外れた人など、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできている脳の仕組み。
そういったことをいろいろな社会的実験などのエビデンスなどをもとに解説されているので、納得性が高い内容となっています。
脳の仕組みなので、この「正義中毒」に自分がはまらないという保証がないところが怖いです。また、「正義中毒」という快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなり、罰する対象を常に探し求め、決して人を許せないようになってしまうというのも怖いですね。
あらためて、「人を許せない」という感情がどのように生まれるのか、脳科学の観点から学ぶことができました。
NPOへの誹謗中傷や寄付金の横領などに対する炎上についても、わかりやすい攻撃対象として、著者がいう「正義中毒」にとってはうってつけのネタになるんですね。
おそらく、こういう炎上に巻き込まれたNPO関係者にとっては、心削られる日々を過ごすことになってしまうと思います。
その中で、この本を読んで脳科学のことや「正義中毒」のことを知っておくのも、一つの防御法になると思います。
但し、そういった炎上そのものを防ぐ方法が解説されているわけではありません。「正義中毒」にはまっている人のバックグラウンドを知っておくというのも大切なことだと思います。
気になったNPO関係者はぜひご一読を。