【NPO書評】「あたりまえ」のつくり方 ——ビジネスパーソンのための新しいPRの教科書
博報堂ケトルを設立した嶋浩一郎さんの著書です。
いわゆる広告や宣伝の本ではなく、パブリック・リレーションズ(Public Relations)の本です。
本の紹介でも「行政/NPOで社会課題の解決を目指す人」と書かれているので、まさにNPO書評にふさわしい本でした。
政策提言などに取り組んでいるNPOも増えてきましたが、そういったNPO関係者に参考になる本です。
ノンアル、キャッシュレス、リモート勤務など、今は「あたりまえ」になっていることがどのように新しい「常識」として定着していったのかをPRという視点から解説しています。そして、そこにどのような考え方やノウハウがあるのかをわかりやすく言語化してくれています。実践のための本です。
「あたりまえ」のつくり方 ——ビジネスパーソンのための新しいPRの教科書
2024/9/25
嶋浩一郎 (著)
PRというと、企業がお金をかけた広告宣伝ではなく、企業の広報や、お金を支払う形ではなく記事等でメディアに取り上げてもらうためのものという印象を持ってしまいましたが、本書はそれらも含めてもっと広い概念のPRの本質を解説したものです。
PRという概念をあらためて整理し、具体的なケーススタディを紹介し、さらにそこにある実践的なノウハウをまとめたものとなります。
あおの社会的なムーブメントの裏側でどのようなことが行われていたのかがよくわかります。なので、純粋な興味関心としても非常に面白く、さらにNPOの取り組みの参考になる内容です。
本書では、PRのことをマルチステークホルダーとの「合意形成」として捉えています。PR=「合意形成」を進めるための方法として、複数のステークホルダーを巻き込んでいく、隠れた欲望「インサイト」を見つける、欲望に「社会記号」を名づける、社会視点で見立てるなどのことが紹介されています。
Amzonの紹介ページに掲載されている目次を眺めるだけでも、参考になりますね。
◎目次
はじめに よりよい「あたりまえ」を目指す人に
昭和から平成、令和へと。想像を超える「あたりまえ」の変化
1章 今、世界は新しい「あたりまえ」を求めてる
2章 違いを見つけるとほめられる「広告」、同じを見つけるとほめられる「PR」
3章 合意形成を加速するPRの5原則
PRの原則1.自分でやらない。第三者を頼る
PRの原則2.複数のステークホルダーを巻き込んでいく
PRの原則3.対話をし続ける
PRの原則4.社会視点で考える
PRの原則5.ファクトベースで語る
4章 新しい「あたりまえ」をつくる7つの方法
補助線1.【インサイト】隠れた欲望を見つける
補助線2.【社会記号】欲望に名前をつける
補助線3.【社会視点】市場の外に出て、社会の視点から見立てる
補助線4.【ナラティブを生む余白】受け手のクリエイティビティを発動させる
補助線5.【ファクトの発見】知られざるファクトを共通言語にする
補助線6.【オーセンティシティ】問うべき人が問う
補助線7.【リスク予想】新しい概念は古い概念とフリクションをおこす
5章 みんなが乗れる船をつくる━━博報堂ケトルの仕事
6章 違いの中から同じを紡ぎだす「エンパシー」の力
おわりに
NPO関係者が年初に読みたい一冊です!