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日経記事「全てを疑い革新を起こせ」

青色発光ダイオード(LED)の開発でノーベル物理学賞を受賞したカリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授のインタビュー記事が、日経新聞(8月25日付)に掲載されました。当時、サラリーマン研究者としてノーベル賞を受賞し、その後の会社との訴訟でも話題になったことをよく記憶しています。現在も中村氏の革新的な取り組みは続いており、アメリカで研究者としてだけでなく、起業家としても成功を収め、これまでに3社のスタートアップを立ち上げています。

中村氏は、日本と米国の研究者の起業意識の違いに注目しています。「日本では大学に所属する研究者の起業が少ない背景には、起業や企業との連携を重視しない文化がある」と指摘します。米国の工学部教授は、ほとんどが起業経験を持ち、企業の技術顧問も務めることが一般的です。一方で、日本の大学教授は論文を重視し、特許取得や実用化への意識が低いと述べています。

日本では特に国立大学で事業を起こすことが困難であり、また、研究や論文執筆がおろそかになると考えられ、大学内での立場にも影響を与えてしまうという話を聞いたことがあります。この点も、日米の大学教員の意識の違いに影響しているのではないかと感じています。

中村氏はまた、「論文よりも特許の重要性」を強調します。特許は自分の発明を守るために重要であり、米国の大学では学生に論文ではなく特許の書類を書くよう指導していると語ります。特許審査は中立であり、アイデアの新規性が評価されるため、学術研究の政治的要素に左右されることが少ないと説明しています。

さらに、中村氏は2022年に新たな挑戦として、核融合発電のスタートアップを共同創業しました。核融合発電は理論上、1グラムの燃料から石油8トン分のエネルギーを生み出せるとされ、世界のエネルギー問題を解決する可能性を秘めています。後発でありながら、レーザーを用いた核融合反応の研究開発を進め、すでに50件以上の革新的な特許を出願しているそうです。中村氏は「先行研究に頼らず、自ら新しいアイデアを生み出すことが成功の鍵」とし、斬新な発想が技術のブレークスルーをもたらすと信じています。

先日、視察した「大学見本市 イノベーションジャパン2024」でも、多くの研究者の興味深いシーズを見ました。産学官連携による事業化という視点において、技術をより深く知る研究者が事業化のプロセスにも関与し、新たな発想を生み出していくことのできる環境づくりが、日本が技術立国としての道を再構築するために重要なのではないかと感じました。

中村氏のインタビューからは、日本の研究者や企業が持つべき姿勢として、「起業家精神」「特許重視」「先行研究に依存しない独創性」が浮き彫りにされています。彼の挑戦と革新は、日本が再び技術立国として浮上するための重要な指針を示していると言えるでしょう。

#日経COMEMO #NIKKEI

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