サーチファンドとは:中小企業が抱える事業承継問題解決と新たな経済成長のドライバーとして期待
日経新聞(7月22日付)では、サーチファンドを立ち上げ企業買収にまでたどり着いた志村光哉氏の話が取り上げられていました。
サーチファンドという言葉は、最近、日本でも耳にする機会が増えてきました。サーチファンドとは何か、その仕組みと今後の期待について考えてみましょう。
サーチファンドとは
サーチファンドは、若い企業家が投資家から資金を調達し、既存の中小企業を買収して経営に参画する仕組みです。アメリカでは起業の一形態として定着していますが、日本ではまだ一般的ではありません。しかし、近年、日本でも徐々に注目され始め、特に事業承継問題の解決策として期待されています。
サーチファンドの仕組み
サーチファンドは主に以下のプロセスを経て進行します:
資金調達:企業家が投資家からサーチ活動のための資金を調達。
企業探し:収益力や将来性のある企業を探し、買収候補をリスト化。
買収:投資家や銀行から調達した資金を用いて企業を買収。
経営:企業家が経営に参画し、企業価値を高めるための戦略を実行。
エグジット:最終的に企業を再売却するか、公開することで投資家にリターンを提供。
VCと似ていますが、経営者を目指す個人が経営に参画することを前提に企業買収を行う(上の3−4)が主な違いとなります。
日本の現状
日本でもすでにいくつかのサーチファンドが立ち上がっています。日経新聞の記事にある志村光哉氏の場合、2年をかけてリストアップした3000社にDMを送り、そのうち30~40社と面談し、最終的に社員13名の埼玉県の中小製造業のアイルを数億円で買収しました。顧問に迎えられた元の経営者の関塚氏も、経営者としての重圧から解放されることでかえってモチベーションが向上し、協力して新たな可能性に挑戦するという相乗効果を生み出しているそうです。
事業承継と第二創業の視点
日本の企業の99.7%は中小企業であり、従業員は全体の約70%を占めます。その多くの中小企業が後継者不足に悩まされており、サーチファンドはこの問題を解決する一つの手段として期待されています。既存企業が新たな事業領域に進出する「第二創業」の支援も重要視されています。ゼロからイチを生み出す技術やノウハウが無くても、既存の企業を継ぐことで大きな成長の機会を見つけることができる経営者(ユニクロの柳井社長や星野リゾートの星野社長がそうであったように)とマッチングすることができれば、日本経済の新たな成長エンジンとなる可能性が生まれてきます。日本の中小企業のポテンシャルに気づいているのは国内だけでなく、海外のファンドからの熱い姿勢も増えてきているそうです。(そう聞くと、せっかくなら日本のやる気のある経営者予備軍に期待したいですよね。)
経済成長のドライバーとしてのサーチファンド
サーチファンドは、新しい経営者の育成と既存企業の活性化を通じて、日本経済の成長を促進する可能性があります。既存のビジネスモデルを刷新し、デジタル化やグローバル展開を進めることで、地域経済の活性化にも貢献します。特に、地方の中小企業にとっては、外部からの新しい視点や資金が大きな成長の原動力となるでしょう。
まとめ
サーチファンドは、中小企業の事業承継問題の解決策だけでなく、若い企業家が既存企業を買収して経営に参画することで、新たな成長機会を創出し、日本経済全体の活力を高める手段として期待されています。事業承継や第二創業の支援策を通じて、持続可能な成長と地域経済の活性化が実現されるでしょう。