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さようなら、ニコ

Iron Maidenのドラマー、ニコマクブレイン(Nicko McBrain)がツアーからの引退を発表しました。2024/12/7のサンパウロ公演を持って引退。今後もメイデンファミリーとしてプロジェクトに参加する、と声明にはありますが、今後のメイデンとの関わり方は不明。ヘヴィメタル界を支え、UKメタルドラマーの象徴とも言えるニコの引退は「ついに来てしまったか」という寂寥感が込み上げます。さようなら、そしてありがとうニコ。

Judas Priestのグレンティプトンのように、スタジオレコーディングには参加するけれどツアーには出ない、という形になるのでしょうか。

ニコのスタイルの特徴はワンバスであること。メタルがモダン化、激烈化して行く中でツーバスが前提となってもワンバスを貫きました。

その分、手数が多い。大量のタム、そしてシンバルを叩きまくり、1人マーチングバンドのような特異なドラムサウンドを作り上げています。手首のスナップ、溜めが上手く、UKジャズロックの流れも感じるスタイル。パワーで押すだけではなく、メリハリが効いているんですよね。ドラムパターンだけで曲の輪郭がはっきり分かる。

ただ、2023年1月に軽度の脳卒中を患い、右半身に麻痺が生じました。リハビリによって70%まで回復し、2023年5月からのThe Future Past Tour2023に参加しましたが、The Trooperのドラムロールが32分音符のロールが困難になり手数を減らすなど苦戦。ついに今回の引退の判断となりました。2024年、王立海兵隊楽団との共演。ニコが皆に愛されているのが伝わってくるとともに、残念ながらドラムプレイはかなり手数が減ってしまっています。

ニコって、顔がちょっとエディに似ていません? 鼻が低いし。笑顔のエディって感じ。ライブ中はほとんど巨大なドラムセットの後ろに隠れていますが、メイデンのメンバーを思い浮かべるときにはっきりと浮かんでくる強烈なキャラクターでした。メタルドラマーの中で一番愛されていた人と言っても良いかもしれない。少なくとも僕はそう思っています。

メイデンの次のライブは2025年5月が予定されています。つまり、それまでにはツアーに参加する次のドラマーが決まるということ。正式メンバーではなくサポートメンバーという形になるのか、あるいはドラマー2人体制になるのか。今後の体調次第でしょうが、ニコも英国公演などではゲスト参加するかもしれませんね。メイデンの次のスタジオアルバムが制作されるとしたらそれは誰が叩くのか。この辺りはまだ流動的でしょうが、ニコの体調と、参加するドラマーとの相性によるのでしょう。今日時点では偉大なるドラマー、ニコマクブレインの思い出に浸りたいと思います。

メイデン加入前、1975年、Streetwalkersでの珍しいライブ。まだニコらしい個性はあまり感じません。

1981年、メイデン加入前、フランスのTrust在籍時のライブ。すでに壁のようなドラムキットに囲まれ、シンバルを鳴らしまくるスタイルが確立しています。

1983年、メイデン加入したばかりの頃。まだ大人しめです。

1987年のドラムソロ。当時のメタルライブはドラムソロやギターソロタイムがあるのが普通でした。

2011年、ドラムソロ。テクニックとパワーのバランスが取れたこの頃のニコのドラムが個人的には一番好きかも。59歳の時。

それでは良いミュージックライフを。

※追記、メイデンから公式に後任ドラマーの発表がありました。スティーブハリスとBritish Lionで12年来のバンドメイトであるSimon Dawson。今までの実績を考えると大抜擢ですね。けっこうスタイルが違う(ニコに比べるとだいぶ手数が少ない)ドラマーの印象ですが、そもそもBritish Lionでもニコっぽいドラムを再現しようとしていたし、すでに知名度のあるドラマーではなくあくまでサポート、相性トラブルより人間関係での実績(British Lionはメイデンのサポートでツアーを回ることが多いのでメンバー全員顔見知りとは思われる)を重視したということなのでしょう。来年5月からのツアー再開に向けてどう仕上げてくるか楽しみです。

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