見出し画像

Red Hot Chilli Peppers : Unlimited Love Tour@東京ドーム 2023/2/19

Red Hot Chilli Peppers、通称レッチリ。レッチリの来日公演に行ってきました。ギタリストのジョン・フルシアンテが脱退と復帰を繰り返していますが、ジョンフルシアンテの2回目の復帰後初の来日公演。東京ドームがソールドアウトということでちょっとビックリ。5万人入ったのか。そんなにレッチリって人気なんですね。

レッチリ、1982年にUS、LAで結成されたロックバンド。ボーカリストのアンソニーとベーシストのフリー(Flea)が結成以来不動のメンバーで、ドラマーとギタリストはメンバーチェンジしています。1984年、アルバム「Red Hot Chilli Pepper」でデビュー。ただ、最初の3枚はあまり商業的にも音楽批評的にも評価は高くありません(ラップ・ファンク・ハードコアを織り交ぜた音楽性で、面白いアルバムですが)。彼らが化け始めたのはドラマーにチャドスミス、ギタリストにジョンフルシアンテを迎えて作成された1989年の4thアルバム「Mother’s Milk(母乳)」から。この4人がいわゆる「レッチリ」の黄金メンバーでしょう。1989年ごろは似たようなバンドとしてFaith No More(彼らの出世作「The Real Thing」も1989年リリース)と比較されたりもしました。そして続く1991年の「Blood Sugar Sex Magik」がさらなる大ヒット。レッチリは折からのグランジ・オルタナムーブメントにも乗り時代の寵児となります。当時はファンクメタルとかオルタナティブメタルとも呼ばれることがありました。レッチリはメタルというよりハードコア由来だと思いますが(Faith No Moreの方がギターソロとかにメタルの影響があります)。

ただ、世界的成功を収める中で精神の均衡を崩したジョンフルシアンテが一度目の脱退。後任に元Jane’s Addictionのデイヴナヴァロを迎えてバンドを立て直し、「One Hot Minute」を1995年にリリース。これもバンドの勢いもあって大ヒットしますが昔からのファンには不評。バンド活動もやや翳りが見えます。なお、個人的にはOne Hot Minuteは結構好きなアルバムです。レッチリの中では一番メタルっぽいというか、オルタナティブメタルに接近している。レッチリは誰か決まったメインソングライターがいるというよりバンド全体で曲を作り上げていくスタイル(作曲クレジットもバンド全員が多い)のため、ギタリストが変わるとけっこう印象が変わります。

ただ、デイブナヴァロは1枚で脱退し、ジョンフルシアンテが復帰。バンドを辞めた後ドラッグ中毒で廃人寸前になっていたジョンをフリーが訪ね、立ち直らせてバンドに再び復帰させたとされています。ジョン復帰作「Californication(1999)」からは現在のレッチリに近い「枯れた感覚」「哀愁味」「ブルージーなフィーリング」がだんだん強調されるようになります。ただ、その後「By The Way(2002)」をリリースした後、2枚組の大作「Stadium Arcadium(2006)」を制作して再びジョンが脱退。やはり成功し続けるというのは強いプレッシャーだったでしょう。Stadium Arcadiumは前作までのアルバムに合った「ポップであろう」「メインストリームであろう」という感覚が薄れ、どこかSSW的というか、等身大の自分たちを出したようなアルバムという印象。

ジョンが抜けた後、バンドはジョンより約10歳年下の(当時は)若手ギタリストだったジョシュ・クリングホッファーを抜擢。ある程度キャリアがある中堅ギタリストではなく、かつてのジョンフルシアンテのような才能の発掘を目指したのでしょう(ジョンは他のメンバーより7~8歳年下で、レッチリ加入の時はかなり若く経験も浅かった)。そして10th「I'm With You(2011)」、11th「The Getaway(2016)」をリリースするも今一つ軌道に乗らず。商業的成功も収めていましたがジョン時代を超える評価を得ることはできませんでした。

そして2019年、ジョンフルシアンテが再び復帰。12th「Unlimited Love」と13th「Return of the Dream Canteen」という2枚のアルバムを2022年にリリースします。Unlimited Loveが世界のチャートで軒並み1位を獲得してレッチリ復活を印象付けた作品となり、今回はそのアルバム名を冠したツアー。

開演が17時半、開場15時ということで先に物販を見ようと13時ごろにドームへ。

物販売り場
待機列はこの遥か奥まで続いている

13時ごろついたら長蛇の列。だいたいこういう大型公演は行列ができるので予想通りでしたが、予想外だったのは売れ行き。

13時ごろの物販状況

かなりソールドアウト! ド派手なスウェットかナイロンジャケット欲しかったんですけどね。残念。列は比較的スムーズに進んでいたので2時間ほど並んでその時点で購入できたTシャツとピンバッチを購入。

お土産

なお、終演前にすべての物販がソールドアウトしたみたいです。人気が予想以上に凄いな。

入口
パネル前で記念撮影する人々
物販スウェット上下セットアップで決めている人がいた、派手
15時半ごろに入場、まだ人はまばら
開演10分前、大入り満員

今回客層で思ったのは予想以上に若い人が多い。スタンド席最前列にいたのですが、周りには20代ぐらいの人が多かったです。もちろん90年代からのファンと思われる人たちもいましたが、若いファンもたくさん入ってきているんだなぁと実感。90年代のアルバムだけでなく最近のアルバムも全米1位とか取っていますからね。ずっとヒットし続けているバンド、ということか。なんとなくレッチリといえば90年代最盛期のバンドのイメージがあったのですが2000年代、2010年代から入ってきたファンも多いのでしょう。けっこう聞き始めた年代によって印象が違うバンドの気もします。初期はハードコアだし、90年代は尖ったバンド(グランジ・オルタナの中でも先鋭的なバンド)だし、00年代はアメリカンロックの大物バンドだし。とはいえ、いわゆる「クラシックロック」になるのはまだこれからなのでしょう。現役感。

ちょっと目についたのは先日のガンズ来日公演のTシャツやスウェットを着た若い人がちょくちょくいたこと。ガンズの客層は全体的にもうちょっと年齢層が高かった印象がありますが、彼らは「90年代ロック」が好きな若者層なのかな。サブスクで旧譜へのアクセスが昔とは比べ物にならないほど容易になったし、今や新譜より旧譜の方がはるかに聞かれる時代ですからね。90年代が今(2020年代)のロックの源流として聞かれているのかもしれない。

17時30分、オンスケでライブがスタートします。WOWOWで中継することもあってか正確にオンスケ。

生で観ると予想以上にジョンが弾きまくっています。というか最初からジャムセッションをけっこう長く引っ張る。ハードコア感覚を持ったジャムバンド、というのがこのバンドの本質なのかもしれない。ただ、ボーカルは歯切れは良いもののスクリーム(叫び)はほとんどなく、アジテーション型。語るようなスタイルでヒップホップとハードコアのアジテーションの両方からの影響を感じます。

けっこうみんな暴れるより聞き入る感じ

エディヴァンヘイレンに捧げた「Eddie」ではジョンのソロが泣きます。

この曲は2回ソロがあって、上記は中間部のソロ。中間部はフィードバックノイズを活かした音響的なソロですが、曲の終わりのソロはタッピングも使った「Eddie」というタイトル通りの弾きまくるソロでした。実際にライブで観るとジョンの存在感はやはり大きい。とはいえジョンだけでなく4人組のバンドなので全員の音の存在感が大きくて、それぞれ見せ場があります。誰かがソロを取って、その間は他のメンバーは支える、的な感覚。4つの個がしっかり絡み合い、主張している感覚。「ロックバンド」の一つの完成系。

今回は「Unlimited Love Tour」ということもあって新譜からの曲が多め。セットリストは下記の通り。

Intro Jam(ー)
Can’t Stop(By the Way 2002)
The Zephyr Song(By the Way 2002)
Here Ever After(Unlimited Love 2022)
Snow ((Hey Oh))(Stadium Arcadium 2006)
Eddie(Return of the Dream Canteen 2022)
Suck My Kiss(Blood Sugar Sex Magik 1991)
Reach out(Return of the Dream Canteen 2022)
Soul to Squeeze(Blood Sugar Sex Magik 1991※)
Nobody Weird Like Me(Mother's Milk 1989)
These Are the Ways(Unlimited Love 2022)
Tippa My Tongue(Return of the Dream Canteen 2022)
Californication(Californication 1999)
Carry Me Home(Return of the Dream Canteen 2022)
Black Summer(Unlimited Love 2022)
By the Way(By the Way 2002)

Under the Bridge(Blood Sugar Sex Magik 1991)
Give It Away(Blood Sugar Sex Magik 1991)

Soul to SqueezeはシングルのB面曲として発表されましたが録音時期はBlood Sugar Sex Magikのセッション時なのでBlood Sugar Sex Magik曲としてカウント

アルバム別だと下記の通り。

The Red Hot Chili Peppers (1984) 0曲 Gt:ジャック・シャーマン
Freaky Styley (1985) 0曲 ヒレル・スロヴァク
The Uplift Mofo Party Plan (1987) 0曲 ヒレル・スロヴァク
Mother's Milk (1989) 1曲 ジョン・フルシアンテ
Blood Sugar Sex Magik (1991) 4曲 
ジョン・フルシアンテ
One Hot Minute (1995) 0曲 デイヴ・ナヴァロ
Californication (1999) 1曲 ジョン・フルシアンテ
By the Way (2002) 3曲 
ジョン・フルシアンテ
Stadium Arcadium (2006) 1曲 
ジョン・フルシアンテ
I'm with You (2011) 0曲 ジョシュ・クリングホッファー
The Getaway (2016) 0曲 ジョシュ・クリングホッファー
Unlimited Love (2022) 3曲 ジョン・フルシアンテ
Return of the Dream Canteen (2022) 4曲 
ジョン・フルシアンテ

やはりというか当然というか、ジョンフルシアンテが参加していない時期の曲は演奏されていません。ちょっと意外なのはCalifornicationからの曲が1曲だけだったこと。これは新譜からの曲を優先したのでしょう。新譜が2枚ありましたからね。全17曲のうち昨年出した2枚の新譜からの曲は7曲。この7曲は落ち着いた雰囲気というか、「じっくり聞かせるロック」なので、全体としては成熟したライブに。ただ、アンコールの2曲はどちらもBlood Sugar Sex Magikからの曲で、やはり代表作と言えばこのアルバムになるのでしょう。次いで重要作としてライブで取り上げられていたのはBy the Wayか。

タイトルトラックが本編最後の曲として盛り上がっていましたし、このアルバムは「レッチリ流のロックとメインストリームポップの融合」が完成系を観たアルバムだと思います。個人的にも一番聴いたアルバムかも。

ラストは90年代のロックアンセムの一つ、Give It Awayで終演。

「ロックライブ」の醍醐味が味わえた素晴らしいライブでした。

沁みる曲では観客のライトが揺れる

今日はレッチリのもう一つのアンセムであるこの曲でお別れしましょう。それでは良いミュージックライフを。


いいなと思ったら応援しよう!