30.アラビア語圏、アルジェリアのラッパー = Soolking
Soolkingは1989年生まれのアルジェリアのラッパーで、フューチャリングされているDadjuはフランスの歌手で、まさにミクスチャーサウンド。
アルジェリアは1990年代にテロが起き治安が悪化しましたが、2000年以降は治安は落ち着き一時期ほどではないが観光も復興中とのこと。場所は地中海沿い、モロッコの隣。いわゆる北アフリカ、地中海沿岸のアフリカ諸国。こうして映像で見ることは日本ではなかなかありませんが洗練された街並みが広がり、発展しつつある国家の勢いを感じます。映像も美麗(…と思って見ていましたがこれイスタンブールっぽいですね)。
Soolkingの歌いまわしはライ(北アフリカの伝統歌謡)の影響も感じられ心地良い。日本語圏(というか英語圏含め)で得られる情報がかなり限られていますが、フランス人アーティストをフューチャリングしているということから分かるようにフランスでの活動が盛んなようです。フランスは人種のるつぼで、特に地中海沿いの北アフリカのアーティストが多い印象。節回しや歌い方は北アフリカ的だが、コード進行やメロディーはフランス的な陰影を感じます。フレンチポップスはこうした言葉主体の音楽(シャンソンとか)が多く、最近はヒップホップ・ラップ系が盛んですが、フレンチヒップホップは哀愁のあるメロディーが多く個人的には好みです。
以前取り上げたOrelsanにも通じる空気感がありますね。この辺りが今のフレンチ・ヒップホップの空気感なのでしょう。
Soolkingは2020年に2ndアルバムとなる新作「Vintage」をリリース。同じくアルジェリア出身のライ歌手、シェブ・マミをゲストに迎えた曲もあります。これは伝統と現代がクロッシングした素晴らしい曲ですね。
シェブ・マミはStingの「Desert Rose」にもゲスト参加したので歌声に聞き覚えがいる方も多いかもしれません。この曲も言われてみればどことなくStingっぽい哀愁感があるかも。
最後はこちらも2020年のトラック。同じアルジェリア系でフランスで活躍するラッパーSofianeをゲストに迎えてのトラックです。より自らのルーツである北アフリカ、アルジェリア音楽を掘り下げつつ、現代的な音楽表現手法と結びつけている印象を受けます。
それでは良いミュージックライフを。