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追悼ジェフ・ベック
ジェフ・ベックが伝説になりました。実年齢を聴くと大往生という感じもしますが、かなり現役感があるアーティストだったので驚き。2022年もジョニーデップとアルバムを出してツアーもしていましたし、オジーのアルバムに客演して「音の存在感」を示していましたし。2022年のベストギターリフはジェフベックが弾いたこのリフだったと思います。ジェフベックの音色があってこその切れ味。
ジェフベックという人は「ギタリストなら知っている」アーティストだと思います。逆に言えば非ギタリストにはどこまで訴求していたのだろう。デイヴィットギルモアと同じように「音色」の人であったと思います。ジョンフルシアンテもジェフベック化してきている気がするし、ジョーサトリアーニもだんだんそっち路線にシフトしてきている。テクニックで勝負するとどんどん新世代が出てくるアスリート的な側面がありますが、その人の味、シグニチャーサウンドがあれば差別化できる。そうした「独自の音を持ったギタリスト」の頂点にいたのがジェフベックというギタリストだったと思います。
指でつま弾くスタイル。ジェフベックがギターを持つとどんな音が飛び出てくるかわからない。音の奇術師。1960年代から1970年代初頭、さまざまなギターヒーローの時代でした。ジミヘンドリックス、エリッククラプトン、ジミーペイジ、リッチーブラックモア、ピーターフランプトン、ジェフベック。USで言えばオールマン兄弟。ただ、「どうやって弾いているのかわからない」というアーティストはUKに多かった気がします(USからはエディヴァンヘイレンが70年代後半に現れますが)。USはロバートジョンソンや3大キングなど黒人ブルースギタリストが先に出ていて、互いに呼応するようにギターの革命がどんどんUK,USで起こった。当時、リッチーブラックモアは手元がカメラに映されることを極端に嫌ったそう。どうやって弾いているかは手品の種みたいなものだったのですね。稀代の奇術師と言われたフーディーニから影響を受けていた、とも。60年代、70年代のギタリストは奇術、いや魔術師でもあったのです。ステージの上の魔法。
その時代の空気を一番色濃く残していた、ギターの魔術師としての魔力(魅力的なうさん臭さ、と言ってもいい)を遺していたのがジェフベックという人であった、と僕は思っています。それはどれだけ動画が出回る世の中になり、テクニックが解析されていっても最後まで種が明かされなかった。ジェフベック以外の誰にもジェフベックのような音が出せなかったから。音楽は原始魔術であり、かつて音楽家は魔術師であった。R.I.P.