Nex_Fest Extra @幕張メッセ 2023.11.04
行ってきました、Nex_Fest Extra。Nex_Fest東京初日(メイン)はVektor来日と重なったため泣く泣く断念したら後からExtraが発表。連日のライブとなりました。
フェスの全体的な印象を箇条書きで。
・Nex(t)の名の通り「新しい」メタルフェスだった。客層も若く、新世代のフェス感。こういう新しいフェスができたことは素直にうれしい。
・この日はトリのBring Me The Horizon以外全部日本のバンド。ほぼ日本の現在進行形メタルのフェスとも言える。コロナ中に「来日できないなら日本のバンドだけでラウパをやればいいじゃないか」みたいな言説を見かけたが、ある意味その具現化。
・HydeとBabymetalが素晴らしかった。ライブ初見のHydeは流石のエンタメ力。音楽の力ももちろんだが、客席とのコミュニケーションや広いステージでの魅せ方がとにかく上手かった。Babymetalは見るのが2回目(前はサマソニ2019)めちゃくちゃボーカルがパワフルになっていた。音程がシャープ気味で勢いが凄い。きちんとメタルのボーカリストとして一流に。
・全体として出演バンドにLinkin ParkとSlipknotの影響を感じた。考えてみたら彼らが出てきたのも1999とか2000だからもう20年前。90年代のグランジムーブメントが60年代や70年代のロックを参照していたようなものか。いわゆるNuMetalチルドレンというか。逆に言えばそれ以前(主に80年代)にヘヴィメタルと呼ばれていた音楽からはけっこう断絶している(BabymetalとHydeを除く)。
・BMTHはぶっちゃけちょっと微妙だった。なんというか大きいステージの魅せ方がまだこなれていない感じ。特に前がHydeとBabymetalだったから、エンターテイナーとしてのスター性という意味でも計算されたステージアクションでも比較してしまった。でもこれは僕の感性の問題だろう。BMTHの音源はそこそこ聞いているけれど個人史的に何の思い入れもないからなぁ。それをブッ飛ばしてくれるかと期待していたけれど残念ながら波長が完全には合わず。
・「ヘドバン」誌編集長がこんなTweetをされていた。
これを見て「ああ、僕から見るとBMTHはメタルだけどヘヴィメタルじゃないよな」と思った。これについては別記事を書いて言語化したいと思う。個人的に「メタルかどうか」という話題そのものは「メタルとは何か」というそれぞれのメタル観が出るのでけっこう面白いと思う。互いに押し付けあうものではなく面白がるものとしてならいい話題。
以下、当日のレポです!
前日の疲れ(Vektorのライブは外人多めの本格モッシュピットに巻き込まれた)もあり、少しゆっくり移動、最初のアクトのColdrainがちょうどはじまる頃に到着。入場口は空いていました。
出場バンドは「Coldrain」「Crossfaith」「Hyde」「Babymetal」「Bring Me The Horizon」の5組。先述の通り5組中4組が日本のバンド。会場着が15時過ぎぐらいだったけれど、物販はほぼほぼガラガラ。それもそのはずでほとんどのアーティストがソールドアウトしていて、公式Tシャツだけが残っているぐらいの状態でした。物販は初日でほとんど売れたのかな。
ラウドパークに比べると明らかに客層が若い。というか、ラウドパーク2022はヘッドライナーがPANTERAだったのでやはり90年代リアルタイムメタラーが多かった気がします。90年代に中学生でも最低40代だし。メインゾーンが年齢40代後半~50代という印象。その後行ったKnotfestは平均年齢が30代後半で、今回のフェスはさらに若くて30代前半から20代も多い印象。そうか、今もメタラーは一定数生まれていて、そういう人たちは今日出てくるようなバンドを聞いているんだな。
ちょうど「メタルを最初に勧めるなら誰がいいのか」という記事を書かれている方がいて、そこでColdrainの名前も出ているのを見てなるほどと再確認。
そうかー、こういうのが今刺さるのか。僕が書くとこう(→関連記事)なるのでだいぶ違いますね。こうしてみるとNuMetalを一つのサブジャンルとしては認識しているけれどそれが現代メタルの(ファン数的に)最大グループという認識はあまりなかった。考えてみたらそりゃそうですね。
一組目はColdrain。展開が早く、しっかり耳に残る歌メロもある。日本市場でメタルの激烈さをしっかり入れながら商業的にも成功してやろうという姿勢を感じるバンド。カッコよかったです。
ここで盛大にモッシュやウォールオブデスが起きたんですが、感じたのはモッシュやウォールオブデスがけっこうジェントリー(紳士的)。みんな優しいというか、やっぱり日本人だと体格が小さいですよね。海外の人が多いと本当に2メートル弱、100キロ弱みたいな人が増えるので吹き飛ばされる…。互いにそれなりに気遣っている感じも受け、「おお、優しい世界」と思ったり。紳士的なモッシュとか、紳士的なウォールオブデスとか面白い感覚。でもまぁ、当たり前にお互いケガさせないようにしますもんね。体格差があると気を使っていてもダメージがデカくなってしまうだけで。
観客の盛り上がりを見ているとけっこう人気があるバンドなんだなぁと実感。シンガロングも生まれていたし曲のキメに合わせていたし。つまり結構な人が曲を知っている。多分このバンドをライブで観るのは初。
2組目はCrossfaith。こちらも名前は知っていたけれどライブは初かな。なんとなく「こういった系統では一番知名度があるバンド」という印象です。こういう系統というのを言語化すると「NuMetalの影響下にありつつ日本のチャートも狙えるようなフックのあるサビを持ったモダンなJ-Metal」ということになるでしょうか。「ジャパメタ」ではなく「J-Metal」というとこういうスタイルのバンドを指すイメージ。別に嫌いではないというかむしろ好きな感じなんだけれど、あまり掘っていないジャンルなんですよね。まだたどり着けていないというか。いわゆる現在進行形の各地の音楽シーンに根差したグローバルメタルの日本版最前線なんだろうとは思っています。
で、やっぱりその知名度、立ち位置にふさわしく貫禄のあるステージ。Coldrainも勢いがあって良かったけれど、こちらは比較するともっとこなれた印象も受けました。いずれにせよ若いけれど。
ColdrainのメンバーもJointしてLinkin ParkのFaintをカバーしてました。これも「Linkin Parkの影響下にあるんだな」と感じたきっかけ。あと、MCの中で「本当は日本のバンドだけでこういうフェスやりたかった、そのつもりで頑張ってきたけど海外のバンド(BMTH)に先をこされた。BMTHの来日はめちゃくちゃ焦がれてたしうれしいし今日こういうフェスができて最高だけど、自分たちができなかった悔しさもある。いつか僕らもこういうフェスやるんで楽しみにしててください」的なことを話していて、それは応援したいなぁ、行きたいなぁと思いました。それまでにはこういうジャンルをもっと聴かないとなぁ。やっぱりノリどころが独特なんですよね。なんかキメが多いし、曲を知らないと乗りづらい。世界で活躍する大物バンドって曲を知らなくても初見でノレるバンドが多い印象ですけれどね。KornとかSkindredとか、事前に1曲も知らなかったけどめちゃくちゃノレたし。この辺りは何かある気がする。自国の市場(それも世界二位の巨大市場)を飛び出す・飛び越えることの難しさというか。
二組が終わり次はHyde。当然ラルクアンシエルは知っていてカラオケで歌ったこともありますが個人的にはV系ほとんど通ってなくて、筋肉少女帯をV系に入れるなら好きですけど。あ、Sex MachingunsもV系に入れるなら(以下略)
なので、特に思い入れはなくライブも当然初見。どんなもんだろうと物見気分でしたが、結果としてめちゃ良かったです。あとから振り返ってみると一番動画を撮っていた。絵になる、残しておきたいシーン、テンションが上がるシーンが多かったんですよね。ステージアクションとか観客とのコミュニケーションの取り方とかが上手い。カッコつけるだけじゃなく適度に笑いも取り入れるし。ベテランの年季を感じました。そりゃドームに何度も立っているわけだしなぁ。
曲は「90年代の人がNu Metalを解釈したらこうなった」という感じ。通じる例えか分からないけれど、K-POPの父(であり韓国ヘヴィメタルバンドSINAWIEのベーシストでもあった)Seo Taiji(ソテジ)の90年代の作品的というか…あ、HideのZilch.みたいというか。V系というメタルの中でも特異な世界観を持つサブジャンルの雰囲気を残しつつモダンなメタルに接近した印象。Nu Metalとそれまでのメタルの最大の差異ってギターの存在感だと思うんですよ。ギターとボーカルが主体だった、ギターリフが重視されていた80年代メタルとリズム、音圧、そしてボーカルメロディ主体のNu Metalの差。Hydeはあまりギターリフは印象に残らなかった(ギターリフから組み立てられている曲はほとんどなかった)けれどしっかりギターソロがあったので、弦楽器(ベース含む)の存在感が強めなのが90年代直結な感じがします。
熱狂と共にHydeが終わり、そして4組目はBabymetal。奇しくも2019年のサマソニって同じ幕張メッセでBabymetal~BMTHというステージ順だったんですよね。4年経って単独フェスとして帰ってきた。
この日のTシャツ率で言うと、このフェスのTシャツを除けばBMTHとBabymetalをかなり多く見かけました。同じくらいの人気か。あとはHydeのファン(ちょっとメタルファンとは毛色が違う人たち)が前の方に一部。他のバンドはちょいちょい見かける、という印象。
いよいよBabymetalがスタート。しばらく見ていて驚いたのはボーカルの成長です。とにかくパワフル。声が♭ではなく♯していく。音域が高くてのびやか。これ、ライブ構成も上手くて、あまり声を消耗しすぎないんですよね。適度にダンスパートやソロパート、あとはラップパートもある。凄くパワフルなボーカル、且つ、のどを酷使しないセットリストでボーカルが出てくるところはすごく高揚感があるというか。2019年に観た時はアイドル的というか、やはりライブで観るとJ-POP的な歌唱だなぁと感じて(バッキングはゴリゴリのメタルながら)「メタルボーカリスト」感は薄いなと正直思っていたのですが、今回はいわゆる80年代の「ハイトーンボーカリスト」の中に入れても引けを取らない、むしろ女性故に高音域をナチュラルに出せる感じで驚きました。個人的にはメイデンのブルースディッキンソンのライブ(2000年代復帰以降)を生で観て「音源よりさらに声が伸びてる!」と驚いた感覚に似ています。ハイトーンシャウトやグロウルに頼らず、まっとうなのどの力でこれだけ歌えるのは凄い! 後、ボーカルの歯切れも良くなっていました。これもメタル感を増していたのだと思う。
そして音楽的にも、Babymetalってきちんと80年代メタルから2010年代のメタルまで包括しているんですよね。ギターリフもあるし、ギターソロもある。そしてテクニカル且つバンド全体でシンコペーションで決めるプログメタル的な場面もあるし、グルーヴや音響で攻めてくるNu Metal的な場面もある。プロデューサーのKobametalは80年代メタルも通過しているので、それらを包括的に観た上で2020年代を生きるメタルアクトとして新しいメタルを生み出していました。以前、Babymetalについて客観的に検証して、「(世界的に)2010年代に現れた最も存在感のあるメタルアーティスト」だと位置づけた(→関連記事)んですが、まさにその通りだと実感できるライブでした。
不満を言うとすればライブが短いことかなぁ。単独のフルライブでもそこまで長くないですよね。まぁ、それ故に最高のパフォーマンスレベルを維持できるのでしょう。また観たい。
最後がBMTH。これは先述したように、いいライブだったけれど個人的には少しノリ切れず。ステージが広くなってセットも豪華になったんですが、それが寂しく見えてしまったんですよね。ボーカルがそんなに動くタイプでもないし、各プレイヤーの見せ場も少ない。各楽器のソロがしっかりあるようなスタイルではなくバンドサウンド全体で表現していくタイプなので、広いステージでバラバラにメンバーがいて、それぞれの立ち位置からあまり動かないという構成だとちょっと寂しかったんですよね。ライブを「観る」というより、ひたすら音に飲まれてモッシュに入っていればもっと楽しめたのかもしれない。ただ、そんなに暴れる感じの曲が多いわけでもないし(少しでもアップテンポになるとモッシュは起きてましたが)、後半になるにつれて体力が尽きてきました。
個人的にはライブより音源の方が好きなバンドかなぁ。ただ、妙な魅力を感じるのでまた次来た時も「今度はどうなっているだろう」と観に行ってしまう気もしますが。
以上、Nex_Fes Extraの感想でした。それでは良いミュージックライフを。