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レコードは美味しい

レコードは音がいい、本当でしょうか?

しばらく前、レコードが聴けるバーで隣に座った若者から「レコードってやっぱり音がいいですよね」と言われたんですよ。

で、その時僕は「そうかなぁ?」と思った。もちろん再生環境にもよるけれど、一般的に音だけならハイレゾの方がいいし、僕も普段聴く時はストリーミングです。レコードはどちらかと言えばアーティストグッズとして買っていて、普段聴くのはストリーミング。

一時期オーディオに凝っていたことがあって、「音の良さ」みたいなものを考えていた時期だったので、「音だけで言えばレコードってそんなに良くないよな」と思ってしまったのです。

でも、これって変な感覚だよなぁ。と思いました。だって「音だけで聴くこと」ってそんなにないじゃないですか。その人はバーの雰囲気、再生装置、そうした体験全部を「(音が)いいですよねぇ」と言ったわけです。

料理で考えると、匂いとか見た目とか店の雰囲気とか誰と食べるかとか、そういうのをひっくるめて食事という体験がある。料理が美味しい、という時、「純粋に味だけで判断」なんて普段はしません。音楽だってもちろん同じで、「音の良さだけ」で比較するなんて、企画とか趣味、あるいは音響の仕事や研究としては良いのだけれど普段の生活感覚とは乖離してるなぁと思いました。

レコードを聴く体験って、全体的なものですよね。レコードをCDに置き換えてもいい。購入するか考えて、購入する時ちょっとワクワクして、手元に届くとまたワクワクして、パッケージを開けるのは少し贅沢で、装置を使うと楽しさを感じる。そして音楽が始まり、やがて再生が終わる。その一連の体験が得られるわけです。

これはストリーミングでも同じ。何かしらで情報を知り、検索してたどり着いたりレコメンドされたり、クリックしているうちにさまざまな音楽にドンドン出会えてワクワクしたり、思索が深まったりする。

そういう体験全体をただ味わえばいいのに、わざわざ「音だけで言えば」と分解してしまったのは良くなかったな、と反省した話を思い出したので書いておきます。その時の体験全部で、レコードは美味しい。

ちなみにレコードを再生しているストリーミング映像をMetal Bladeがちょくちょく上げています。これも味わい深い。LP Streamで検索。

それでは良いミュージックライフを。

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