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Heavier Trip / ヘヴィ・トリップII感想
公開初日。首都圏メタラーにとっては激烈音楽映画館でお馴染み新宿シネマートにて鑑賞。残念ながら舞台挨拶の回ではありませんが、初日に観ることができました。
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世界唯一の“symphonic post-apocalyptic reindeer-grinding Christ-abusing extreme war pagan fennoscandian metal” 「シンフォニック・ポストアポカリプティック・トナカイ粉砕・反キリスト・エクストリーム・ウォー・ペイガン・フェノスカンジナビア・メタル」バンドである「インペイルド・レクタム(Impaled Rektum)」が巻き起こす珍道中の数々。一応続き物ですが前作を観ていなくてもストーリー理解にはほぼ関係がありません。主要4人以外、前作との連続性なし。
ちなみにバンドの標榜するジャンルにreindeer-griding(トナカイ粉砕)が入っているのはギタリストのロットヴォネンの実家であり、彼らの練習スタジオがある場所がトナカイ牧場兼屠殺場だから。実際にトナカイ肉を精肉するネタも多く出てきます。
本作で特筆すべきはライブシーンのかっこよさ。ボーカル、トゥロのスクリームが胸を打ちます。音楽映画ってライブシーンがクライマックスにあることが多いじゃないですか。ブルースブラザーズ然り、いろんなジャズやオーケストラの映画然り。で、本作も音楽映画なので演奏シーンが劇的に描かれるんですが、今まで映像でグロウルをみてもっとも感動したかもしれない。映画館のスクリーンと音響で、物語が盛り上がる中、しっかりとしたグロウルをカタルシスとして体験する機会はなかなかないですからね。しかも、前作では最後のクライマックスシーンだった演奏シーンが今回は随所に出てきます。全体的にテンポがかなり良くなっていて話の密度が濃い。
前作の予想以上のヒットを受けて本作はスケールアップ。もともと、前作もフィンランド映画史上最大の予算をかけて作られた作品とされていますが、制作費と興行収入は非公開。とはいえ、ハリウッド映画や、日本のアニメ映画と比べても少額でしょう。フィンランドの人口は554万人。日本で言えば兵庫県(543.3万人)ぐらいです。経済規模(GDP)は約2.955億ドル。これは大阪府や愛知県と同じくらい。なので、もちろんそれなりの規模ではありますが、そもそも小国なんですよね。その中から出てきた作品なので、大国(日本も世界から見たらかなりの大国です)の作品に比べると映画産業自体が小規模。それゆえに細部までしっかりと手がかけられている気がします。観ていて各シーンの細部までさまざまなネタや思い入れが詰め込まれている。
フィンランドの笑いのツボって独特で、エアギター選手権とかヘドバン編み物大会とか、なんというかシュール。本作も前作よりもスケールアップし、世界で配給される作品とはいえやはりフィンランドらしい癖があります。そもそもトナカイ粉砕、という時点でフィンランド的だし。得体の知れない笑いのツボがあります。めちゃくちゃ声が低いボーカル(モーターヘッドのレミーがモデルと思われる、四人組だけどギタリスト役がフィルキャンベルに似てるし。だけど音楽的にはダンジグ)がずっと何か吸ってると思ったら、吸っていたのは…ネタバレなので書きませんが、とにかくなんというか独特なネタが豊富。特濃のメタルジョーク、ジャーゴンのオンパレードに加えてフィンランドジョークまで加味されているから情報が渋滞しています。最高。
ちなみに、カメオ出演でBabymetalが出ていましたが、ちょい役ではなくガッツリ出ています。ダイハードなエリートメタラーから見たBabymetalがメタ的に描かれていてその辺りはけっこう踏み込んだ内容。Babymetal側からの要望もあったのかも知れませんが、製作陣のメタルへの深い理解と現在のメタラー心理の把握は見事だなと感じました。けっこうしっかり描き切るんですよね。少し驚き。
インペイルドレクタムの曲が売れ筋風にアレンジされたりもするんですが、それがなんというか分かるんですよ。ああ、メタルのトレンド的な売れ筋ってこうだろうな、感が出つつ、「曲がダメになった」感もしっかり出ている。これ、実際に音で表現するの大変だったと思います。フィンランドすげえ。
いじくられる元曲がこちら。
なお、劇中の音楽はスウェーデンのオカルトロックバンドYears Of Goatが。インペイルドレクタムの曲は前作に続いてフィンランドのメタルバンドMors Subitaのギタリストミカ・ラマサーリが手がけています。
新宿シネマートでは本作公演にあたり館内がヘヴィトリップ色に。
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ちなみにインペイルドレクタムは「直腸陥没」
本作はシネマートだけでなく日本中で公開されているようです。前作より多くの方が映画館で鑑賞できます。家族で見に行くことは勧めませんが、メタラーなら健全に笑えること間違いなしな作品なので、この年末年始、映画を観るならまずこれでしょう。
それでは良いミュージックライフを。