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なぜCDを買わなくなったのか / なぜレコードを買うのか

最近はCDをめっきり買わなくなりました。なぜか。単純に「ストリーミングで聴けるから」ですね。初期のストリーミングは音質が不満でしたが、CD、あるいはそれ以上の音質で配信しているTIDAL、そして今年スタートしたApple Musicハイレゾを使っているので音質には十分満足しています。少なくとも僕の耳では聞き分けられるほど明確な違いもないし、理論的にはストリーミングの方が音が良い、はずです(再生環境にもよると思いますが)。

ただ、その代わりと言ってはなんですがレコードを買うようになりました。もともと少しは持っていたのですが、CDを買わなくなるのと比例してレコードを買うように。置き場の問題(CDより大きいので保管場所に困る)があるので控えめですが、月に2~3枚ぐらいはコンスタントに買っていると思います。ただ、レコードの大半はあまり聞きません。基本的に日々聴くのはストリーミングで、レコードは思い立った時に聴くことはありますが、未開封で保存しているものもけっこうあります。

ではなぜレコードを買うのか。それはコレクションとしてですね。音楽が趣味なので、音楽に関するものを集めたい。それはTシャツやフィギュアなどのアーティストグッズでもいいですが、やはり一番流通しているしメジャーなのが音源、つまりCDかレコードです。買って飾っておく、というのはフィギュアに近い感覚かもしれませんね。好きなアーティストのグッズがあると、気分が上がります。

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フィギュアの例:KnuckelBonz

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壁掛けレコードの例

ではなぜ、CDではなくレコードなのか。そもそも飾るものならどちらでもいいのでは、ということですが。それには理由が2つ。

1.レコードの方が大きい = 存在感がある

2.レコードの方が値崩れしない(気がする)

コレクション=財産、なので、やはり再販可能性、いざとなれば売れるものがいい。レコードの方が値崩れしないからです。

もともと、CDって聞かなくなったら売るじゃないですか。最近、CDを買わない人が多いらしいので、そうなると当然売ったことがない人もいるわけですが、「いらなくなったCDを売る」という文化があるんですね。

昔は友人同士で売買していました。中古CD屋に行くとかなり安く買われる。たとえばディスクユニオンとかに持っていくと1枚300円のものが、友人に売ると1000円で売れる(CDは当時1枚2500円ぐらい)。ちなみに300円で買い取られたCDでもディスクユニオンだと1500円ぐらいで売られる※1ので、欲しいCDなら友人から直接買った方がお互いにとって得なんですね。それで友人に売って、また新しいアルバムを買う、ということを繰り返していました。その友人からも聞かなくなったCDを買うし、今思えばお互いでお金を出し合って新しいCDを買っていた、みたいなことかもしれません。当時はメルカリがなかったので、狭い友人たちの中でグルグル回っていた。そこで誰も欲しがらなかったもの、あるいはみんなが聞き飽きたものが中古CD屋に流れていったわけです。

ところがある時期から中古CDは値崩れし始めました。CD市場全体が縮小していく中で、中古CDも売れなくなっていった。僕の場合は主にヘヴィメタルやハードロック、洋楽系を買うことが多いのですが、それで言うと「過去の名盤ボックスセット」みたいなものが出たのも大きかった。過去の名盤って、昔は定価で買うしかなかったんですよ。輸入盤だと1枚2500円とか、あるいは再発廉価版というものでも1800円とか。それがだんだん値崩れして、たとえば10枚4200円とか、そういう破格な値段になってきた。

たとえばマイルスデイビスのボックスセット。

これ、71枚組なんですよね。初期の(プレステージなど)作品は入っていませんが、ほぼすべてのアルバムが入って今の価格で35000円。1枚500円程度です。

他にも、旧譜のボックスセットが大量に出て、Original Album Seriesという5枚組廉価版セットも大量に出ました。だいたい1枚300円~500円、に相場が変わります。これが中古CD市場にも大打撃を与えた気がします。中古CD屋で旧譜を探して、少しづつそのアーティストのバックカタログをそろえていく、みたいな楽しみが「新品買った方が安い」に一気に変わったので、影響が大きかった。CDが売れなくなる → 旧譜・名作の新品安売りが始まる → 中古CD市場も大きく崩れる。みたいな流れがあったように感じています。

ちょうどこの廉価版CDが出始めた頃はiTunesなどのデジタルダウンロード型からストリーミングサービスへの過渡期だったように思います。個人的に、ダウンロード型にはほとんど興味がありませんでした。なぜなら再販できないから。その割に高いし(iTunesでアルバムを買うのとCDを買うのは値段がほとんど変わらなかった)、mp3かAACだから圧縮音源で音質も悪い。なので、その頃まではCDを買っていましたが、ここで一気にCDが増えて(今までと同じお金があれば3倍~5倍ぐらいのCDが買える)CDラックがパンク。CDを買わなく(買えなく)なりました。

同時に、いろいろと生活面の変化があり一種ミニマリスト的な生活スタイルに変化しました。あまりモノを持たない。実家にCDを置いたまま、別の場所で暮らすようになり、そもそもあまり音楽を聴かない時期を過ごします。だいたい、いろいろな人の話を見たり聞いたりすると、音楽マニアも「一時期音楽を聴かなくなった」という時期があるようですね。僕の場合はその時期がちょうどCDの衰退期に重なりました。

数年前から再び音楽を聴き始め、音楽ブログも開始。今に至るわけですが、今はメインの環境はストリーミングです。新しい音楽はストリーミングサービスで聴ける。だいたい週に6~10枚聞いていますが、これはCDを買っていたころとほぼ同じですね。当時は、新品は高いのでブックオフの300円コーナー(100円、300円、500円と価格均一コーナーがあって、そこで掘り出しものを探すのが好きでした)を駆使しながら、だいたい今と同じぐらいの新しい音楽を聴いていた気がします。

音楽を再び聴き始めると生活に音楽が戻ってきて、音楽関係のものを買うようになりました。ただ、CDを買わなくても新しい音楽が聴けるので、その分がバンドグッズだったり、レコードに向かっています。特にレコードはリリース数も多いし、再販市場もある程度出来上がっているので一番集めやすい。時々、気が向いたら聴くこともできるし、レコードを聴くとやはりストリーミングとは違う体験ができます。これは個人的、気分的なものですけれどね。レコードを選ぶ、埃を払ってレコードプレイヤーに置く、レコード針を落とす、盤がくるくる回っている、ちょっとノイズが入る、A面とB面を入れ替える、みたいな一連の行動が入ってくるので、体験として手間がかかる。ガスコンロと炭火バーベキューの違い、みたいなものかもしれません。ひと手間かけることで記憶に残る、というか。その体験も、レコードを買う一つの理由、かも。

それでは良いミュージックライフを。

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※1 別に中古CD屋がぼったくっているわけではありません。そうそうすぐに回転するわけではないし、在庫を持って、店舗も持って、人件費や土地代もかかる。そうなると買取値の5倍ぐらいはないと商売が成り立ちません。CDは薄利多売ですからね。新品のCDは「すごく売れるもの(たとえば宇多田ヒカルとか小室哲哉ファミリーとか)」があって、短期間に大量に販売することができますが、中古CDはもっとマニア間の交換という色合いが強いので、売れるまでの時間がかかる。なので、原価率を抑えないと商売を継続できません。なお、明らかにすぐ売れるもの(たとえばその時ヒットしているもの)などだと、買取値が1200円で売価が2300円、みたいなものもありましたが、これはリードタイム(売れるまでの期間)によりますね。マニアックなものほど売れづらいので、買取価格は安く、販売価格の倍率は高くなります。

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