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クリストファー・ノーラン

またも間が空いてしまった。週1回ぐらい書きたいと思っていたのに、4週もあけてしまい、しかも年末年始ヒマだったのに、、、
ほぼ毎日なにか発信している人達は凄いなと改めて思うが、そのヒマな年末年始に見たクリストファー・ノーランの感想を少し。

その昔、メメントを映画館で見て、何じゃこりゃと思った時は変わった監督だなくらいで気にも留めてなかったのだが、最初にノックアウトされたのはインセプションだった。その前のバットマン・ダークナイトも面白くて、バットマンビギンズを見返し、その映像美や屈折したバットマンの演出を堪能したのだが、インセプションには本当に度肝を抜かれた。

パリの街がひん曲がる、列車が車道を突っ走ってくる、渡辺謙の老け顔は頂けないが、マリオン・コティヤールの地味なイカレ具合といい、何もかもが素晴らしかった。
ストーリーというか、夢の中に潜り込んで相手に潜在的暗示?をかけるというネタもその現実性は兎も角、ありそうな話で、でも斬新で特に解説無くても楽しめるし、でも効果音の一部は別のテーマ曲のスロー逆回しなんていう小ネタもあり、解説聞くと2度3度楽しめるのも良かった。

この作品でクリストファー・ノーラン凄い、天才だと得心して、以後は必ず新作(といっても数えるほどだが)を映画館で観ている。
インセプションの次の、バットマン・ダークナイト ライジングは、少々センチメンタルだがうまくまとまっていたし、その次のインターステラーには、またしてもやられた。

正直言えば、普通の映画ファンはこの辺りからついていけなくなっていったと思う。ワームホール、5次元空間、ブラックホール、重力論、特殊相対性理論、特異点、どれも解説無いと分からないだろう。
もちろん解説無くても楽しめるとは思う。映像は相変わらず美しいし、何よりリアル感が違う。加えて、ストレートに親子愛が描かれていて(なればこそ相対性理論のウラシマ効果が引き立っている)、まぁギリギリOKかと。

話は逸れるが、ある意味これだけ変な映画ばかり撮っているのに、ノーランの隠れテーマは愛だと考えている。インセプションでは主人公コブのインセンティブは引き離され再会を果たしたい子供への愛、バットマンシリーズは早逝した両親からの愛やレイチェルへの報われない愛が、ダンケルクでは戦死した若い兵士への想いが、それぞれ通奏低音のように扱われている。

が、2020年のテネットはさすがに厳しかった。いやファンとしては欣喜雀躍として観たし、ただ解説無しで見た初回はメメント並みに意味不明だった。
美しいエリザベス・デビッキ、逆回りの航海シーンなど、映像は相変わらず楽しめるがストーリーが難解すぎる。
解説読んでもう2,3回観ると、今度はストーリーも理解できて、あれこれ楽しめるのだが話が荒唐無稽すぎて、さすがの天才も策に溺れた感が無くもない。

以下はネタばれだが(なので嫌な人はここまでで)、なんでまた未来人が時代を逆行して現代人を滅ぼそうとするのか(並行宇宙が存在するとしても、今の自分たちは過去の人類を滅ぼしても助からない)、単なる憎悪なのか、素直に環境改善すれば良い気がするし、おまけにその人類滅亡のための道具(アルゴリズム)がとてもそんな道具に見えない変形マシンガンみたいな代物で「えっそんな道具で人類滅亡!?」感満載なので、この辺は惜しいなぁと思う。
そして今回もエリザベス・デビッキの子供への愛はやはり扱われているのだが、エリザベスが綺麗すぎて余り母親感が無く、かなり控えめな印象がぬぐえない。

一方で、ほぼノーラン作品に毎回出演しているマイケル・ケインが相変わらず良い味を出しているのにはホッとする。いかにも気取った接客係(実際にはそんな従業員はなかなか見かけないが)がいるロンドンの高級クラブで、マイケル・ケインが主人公の服装を見て「ブルックスブラザーズかい?新しいスーツを買いたまえ」とクレジットカードを半ば放り出す嫌味な演技は最高だ。

テネットはコロナ禍での上映ということもあって、興行成績は今一つだったが、恐らく上記のような要因も手伝っているだろう。
が、科学オタクには堪らない魅力があるし、ロンドンの景色も悪くない。NetflixやAmazonでも視聴できるので、是非お勧めしたい。
しかし、夢、深層心理、宇宙、重力、時間と来ると次回のテーマは何なんだろう?量子?でも描写が難しいよなぁ、、、またアッと言わされる日を楽しみにしている。



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