【生徒発信】PBL(プロモ・ラボ)〜ウクライナ国立バレエ平和交流会の報告〜
安田女子高校STEAMコースは、2021年4月に新設されたコースです。
コースの特徴の一つが、週に4時間おこなっている「PBL(Project Based Learning)」という授業です。第二期のPBLは、2022年11月から2023年10月までの予定でSTEAMコースの一期生・二期生の2学年を対象に実施しています。
今回は、安田女子高校で2023年7月24日(月)に実施したウクライナ国立バレエとの平和交流会について取材した内容を報告します。
★ウクライナ国立バレエ
ウクライナ国立バレエは、かつてはキーウ・バレエと呼ばれており、ウクライナの首都キーウを本拠とする歴史あるバレエ団です。
今回、そのウクライナ国立バレエが来日し、7月25日に広島で五年ぶりの公演が催されました。それに先立ち、24日に安田女子中学高等学校にて芸術監督の寺田宜弘さん(47)、バレエダンサーのニキータ・スハルコフさん(32)、私たちと同世代のソリストであるカテリーナ・ミクルーハさん(18)をお招きし、平和交流会が開かれました。
★芸術監督の寺田さんの講演
☆ウクライナ国立バレエについて
ウクライナ国立バレエは今年、創立から155年という節目を迎えた。しかし、ウクライナ侵攻による危険から逃れるためにウクライナを離れ、団員の心はバラバラに。侵攻後に初めて集まったときには20人しか団員がいなかったが、今ではだんだん人数が戻ってきている。
☆寺田さんについて
現在ウクライナ国立バレエの芸術監督をされている寺田さんだが、最初にウクライナに渡ったのは、11歳のとき。京都から一人で留学したが、当時はまだソ連の時代で、日本からウクライナに渡る人はおらず大使館もなかったという。だからこそ、日本人代表としてご両親に「日本の心を忘れないよう」と言われた。
そして、当時の寺田さんはウクライナにあるオペラ劇場でバレエを観て、「オペラ劇場でバレエをする」という夢を持った。
バレエダンサーとしてさまざまな舞台に立ったり、芸術監督になったりとバレエ人生を謳歌している最中に戦争が始まった。
☆ウクライナ侵攻
ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前日の2月23日、寺田さんはたまたまポルトガルに行っていた。そして、翌日の朝に友人からの電話で戦争が始まったことを知った。
寺田さんはそのまま日本に帰ろうと考えた。しかし、日本に帰るとウクライナをサポートすることは難しい。これまでウクライナの人々に育ててもらったという恩返しをしたいと考え、ウクライナに戻って数ヶ月活動をした。具体的には、バレエダンサーのサポートや、ヨーロッパでウクライナとヨーロッパの文化を混ぜた公演など。
ロシアの作曲家のチャイコフスキーの作品は残念ながら公演できないけれど、できる限りウクライナの人々に勇気づける公演を行った。
もうすぐ、ウクライナは黄金の秋を迎える。しかし、未だ戦争は続く。
☆日本、広島公演への想い
バレエの公演をおこなうといっても、さまざまの国の支援があってこそ実現できる。日本もそのひとつ。公演ができるという奇跡に感謝している。
広島では5年ぶりの公演。広島の8月6日のような悲劇がウクライナでくりかえされないことを願う。早く戦争が終わるように祈りながら、私たちの戦場である舞台で踊りたい。そして、ウクライナのダンサーの情熱を観てほしいと、寺田さんは講演を締めくくった。
★安田女子高校から平和活動の発表
寺田さんによる講演の後、STEAMコースの生徒、社会科学研究部、生徒会がこれまでにおこなってきた平和活動の発表をしました。
☆STEAMコース「自由を運ぶコウノトリ」チーム
このチームは、広島にいるウクライナの人と交流して、ウクライナ料理を教えてもらい、学校の食堂で提供したこと、そして食文化を通してウクライナのことを知ってもらう活動について発表した。
☆社会科学研究部
社会科学研究部からは、被爆者との交流をしたり、ボディマッピングで表現したりすることで、核がなく安心して老後を迎えられる社会を目指した平和活動の実践について発表した。
☆生徒会
生徒会は、本校にある被爆桜を接ぎ木した苗木を全国へ広める活動について、報告した。2009年から2020年までに79の苗木を送り出し、その後も交流が続いていることを発表した。
★質疑応答
質疑応答では平和についての話はもちろん、ウクライナやバレエについての質問も飛び交いました。
ニキータ・スハルコフさんの「芸術は大事。戦争は必ず終わる。芸術は永遠に続く。」という言葉に、生徒全員が聴きいっていました。
また、カテリーナ・ミクルーハさんの、「ウクライナに戻りたい」という気持ちや「平和とは家族。」という言葉が印象に残りました。
寺田さんの「11才からウクライナに36年住んできた。ウクライナの人は自分の子どものように育ててくれた。」という言葉から、寺田さんのウクライナへの想いを深く感じることができました。
生徒による発表や質疑応答では、寺田さんみずから通訳をしてくださいました。ありがとうございました。
★終わりに
☆参加した生徒の感想
・戦争というつらい中でバレエを続けて、ウクライナの芸術を発信し続けていて、すごいと思った。(高校3年生)
・ニュースでしか聞くことがない遠い国の話だと思っていたが、今回の交流会で身近に感じた。(高校3年生)
☆執筆者の感想
「芸術があって国がある。芸術は世界を1つにすると信じている。」と寺田宜弘さん。
これは過去の話ではなく、今現在起こっている話である。
1945年8月6日に起こったヒロシマの悲劇から78年が経とうとしている。しかし、今でも戦争は続いている。
この交流会を、平和について、そして戦争について考えるきっかけにしたい。
■ 執筆者:安田女子高校 STEAMコース・一期生(高3)
プロモ・ラボ 下級生向け広報担当
好きなことは、舞台を中心に様々なジャンルの芸術を鑑賞すること。
特技は即興ミュージカルと歌のお姉さんのモノマネ。
将来は芸術やエンターテイメント関係の仕事をしたいです!
「下級生に『STEAMってなに?』と聞かれない」をモットーにSTEAMの広報活動を行っています!
■記事責任者:STEAMコース主任