ただ嘘ばかりを語り合った記憶

若い頃、ぼくらは時間とエネルギーを持て余して
月夜の下で相手を気づかいながらも
ただ自分を取り繕った嘘ばかりを語り合っていた。
それを誠実さだと勘違いして。

港で語り合う彼らはとても正直だ。
裸足だから足の裏は汚れているけど
とてもきれいだ。

喧嘩する時も相手の世界に
土足ではなく
わざわざ靴を脱いで
裸足で入ってくる。
だから自分も痛い。

その痛さが僕には無かった誠実さだ。
積み重ねた嘘とスキルでは
到底手に入れられないものだ。

レンズの向こうに彼らを見ながら
自分の非力さを省みて
今日もまた力をもらっている。
もらってばかりだ。


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