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ごく普通のあいさつ(71)

精神保健指定医として診察のために警察署などに出向くことがあります。「路上で刃物を振り回している人を保護したところ、精神疾患が疑われた」というようなケースで精神鑑定をするのです。

当然、相手は治療を望んで来ているわけではありません。相手にすれば「オマエ何者だ」といったところでしょう。こちらから見れば相手は「物騒なことをしでかした何やら恐ろしげな人」です。病院での診療ならば当たり前に存在する「治療関係」という前提が存在しないところでは、思いのほかとまどいを感じたりします。

そんな時「こんにちは」「よろしくお願いします」といったごく普通のあいさつはとても頼りになります。どんな相手でも、どんな状況下でも、あいさつは万人に通じる共通言語です。とりあえず無難に話しかけるにも最適で、あいさつに返事があれば少し安心もできます。

それに、あいさつが交わせてホッとするのは、たぶん相手も同じでしょう。

文章:精神科やすだ (2007年12月2日初公開)
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