童話「ウソツキツツキの鳴く島」
そこは、いつも霧に包まれた不思議な島。
ウソツキツツキが「ソーツキ、ソーツキ」鳴き、本の鳥が羽ばたき、みかんジュースの瓶の音がする雨が降ります。
もぐらのグラは、雨がやんだ後の森を散歩しながら森の声を聞くのが好きでした。
その日も、いつものように月の光を道しるべに歩いていました。
クリームソーダ色した風が、時折グラのひげをかすめては、闇に消えていきます。
グラは、明日を探していました。
もぐらのグラは、いつも地面の中にばかりいるので、いつしか根暗になってしまっていました。
道を歩いていても、落ちている昨日ばかり気になってしまって。
もぐらで根暗なんて、全くいい事なんてありません。
なので、最近はいつも明日を探すようにしていました。
明日が落ちてないかな。
木の穴を覗いてみました。
そこには眠ってるうさぎがいるだけ。
落ち葉を裏返してみました。
そこには丸まっただんごむしがいるだけ。
どこに落ちているのかな。
それとも、お空から降ってくるのかな。
鳥が僕の元へ運んでくれるのかな。
そんなことを考えながら、歩いていました。
ふと、グラはいいことを思いつきました。
グラは、穴を掘るのが得意なんです。
なんてったってモグラですから。
明日を探しに、土の中を掘っていくことにしました。
グラは、地面を掘っていきます。
2メートルくらいの深さになりました。
それでも、明日は見つかりません。
どんどん深く掘っていきます。
5メートルくらいの深さになりました。
それでも、明日は見つかりません。
12メートルと3.1415926535センチくらいの深さになりました。
それでも、明日は見つかりません。
少しだけ休憩しよっかな。
もぐらのグラは疲れたので、持っていたクラッカーに苺ジャムを塗ってむしゃむしゃ食べました。
そして、水筒の中にあるクランベリージュースをごくごく飲みました。
いつもよりだいぶ深く長い間掘ったなぁ。
明日はどこにあるのかなぁと、そんなことを考えているうちに、疲れて眠ってしまいました。
霧は、グラが風邪をひかないように優しく包んでくれます。
ウソツキツツキが「ソーツキ、ソーツキ」鳴く声が遠くに聞こえます。
本の鳥が、バサバサ羽ばたいています。
みかんジュースの瓶の音のする雨が、またコツコツと降り始めました。
もぐらのグラは、真っ暗な世界を通り抜けて、夢の世界にたどり着きました。
そこでは、グラの好きな苺ジャムクラッカーが木の枝に実っているし、クランベリージュースが出てくる噴水があるし、グラにとっては天国みたいな世界です。
グラはそんな景色を眺めていました。
ずっとずっと眺めていました。
いつも住んでいる島と違って、ここには色が溢れていて綺麗で、眺めているだけでも飽きません。
ふと、ここが明日なのかなって思いました。
でも、好きなものにたくさん囲まれた世界だけど、グラはなんだか違う気がしました。
ここじゃない気がする。
グラは、ぎゅっと目をつむりました。
グラは、またまた真っ暗な世界を通り抜けて、元の世界にたどり着きました。
気づいたら朝日が昇って、
相変わらず霧に包まれてますが、
明日になっていました。
ウソツキツツキは相変わらず「ソーツキ、ソーツキ」鳴いています。
本の鳥が、ペラペラ飛んでいます。
みかんジュースの瓶の音がする雨も、きっとそのうち降るのでしょう。
持っていた水筒から、クランベリージュースを注ぎ、ごくごく飲みました。
昨日と変わらない景色。
いつも霧に包まれた不思議な島ですが、
グラはなんだかんだ言って、
この島が好きなのです。