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社会福祉分野における少数者と多数者の対立を描写する難しさ~精神障害者の社会参加を題材にAIライティングを実験~

社会福祉分野の記事を執筆する時に常々感じるのは、政治や行政のしくみの影響を強く受けることです。特に、社会資源に関する記事は、公的支援が基になっています。

政治に対する期待や考え方は人によってさまざまで、共感を呼ぶこともあれば批判を招くこともあります。投稿した記事の内容によって賛否がはっきりと割れることが、ライティングを進める上での困難さです。

そこで、同じ内容の記事であっても、多数者目線と少数者目線で切り口を変えるとどのような結果になるのか、この記事で実験してみたいと思います。

障害者福祉の問題をとっても、さまざまな考え方があり、時に議論になります。特に、精神障害者に関する議論は時に激しいです。精神障害者の社会参加を例にとり、多数者と少数者それぞれの立場で記事を作成しました。

普段AIに記事作成させることはないのですが、今回は実験ということで、AIライティングを導入してみました。

記事の骨子

AIに作成させた記事は、精神障害者の社会参加に関するものです。SEO記事ではなく、むしろコラム的な内容です。

2000文字程度で、多数者の立場と少数者の立場で執筆させてみました。AIは指示した文字数より少ない文字で出力する傾向があるため、悪戦苦闘しながら文字数を確保しました。本来は裏付けとなるデータを引用しなければならないのですが、今回はAIによる比較が趣旨であるということで、薄めであることをご了承願います。

骨子が同じでありながら、立場が違うと出力される内容がこれまでも異なるのかと、興味深い結果です。

精神障害者が就労を目指しても必ずしもうまくいくとは限らず、経済的に困窮する傾向が強い現実を、それぞれの視点で表現しました。当事者目線での記事執筆上の前提は、以下の通りです。

  • 精神障害者に対する差別や排除が根深いこと

  • 就労を目指しても企業に採用されにくいこと

  • 障害者雇用で得られる賃金水準が低いこと

  • 行政の支援が十分ではないケースがあること

これに、多数者が反論するという構成です。

当記事でいう「多数者」は、障害者を支援する側の市民や企業、行政を、「少数者」は支援を受ける当事者やその家族、福祉関係者を指します(あくまでも筆者なりの定義です)。

少数者視点で書いた内容を先に表示し、続いて多数者視点で書いた内容を表示したいと思います。

少数者視点の記事:支援が十分ではないとの訴え

精神障害者の社会参加や就労をめぐる議論において、「理解が進んでいる」「支援制度が充実してきた」という声がしばしば聞かれます。確かに、法制度の整備や企業の意識改革により、表面的には受け入れ体制が整いつつあるように見えます。しかし、現実はそう楽観視できる状況ではありません。

最も根深い問題は、社会に潜在する精神障害者への偏見です。「何を考えているかわからない」「予測不能で危険」といった誤った認識は、依然として根強く残っています。このような偏見は、精神障害者を社会から隔離したいという意識につながり、当事者の社会参加を著しく阻害しています。

ある当事者は次のように語ります。「面接で『精神障害』と伝えた途端、企業の態度が一変することがほとんどです。それまでの経歴や能力は全く評価されず、ただ『精神障害者』というレッテルだけで判断されてしまうのです」。

特に就労の場面では、この「見えない壁」が顕著に表れます。障害者雇用促進法により、企業には一定割合の障害者雇用が義務付けられていますが、精神障害者の採用には依然として消極的な企業が多いのです。

厚生労働省の調査によると、障害者雇用を行っている企業のうち、精神障害者を雇用しているのは約30%に留まっています。その理由として、「個々の特性が異なり対応が難しい」という声が上がりますが、これは往々にして表向きの理由に過ぎません。実際には、精神障害者と同じ職場で働くことへの漠然とした不安や抵抗感が、採用を躊躇させる大きな要因となっています。

こうした状況を反映するように、精神障害者を一般の従業員から分離して働かせる「特別な職場」が登場しています。例えば、A県のある農業法人では、精神障害者専用の農園を郊外に設置し、一般従業員とは完全に分離された環境で就労させています。また、B市の企業では、本社から離れた場所に「障害者専用オフィス」を設置し、データ入力などの業務を行わせています。

これらの職場では、一般従業員との接触を最小限に抑えた環境で就労させるビジネスモデルが採用されています。支援者の一人は「一見すると配慮のように見えますが、これは新たな形での隔離に他なりません。むしろ、障害の有無に関わらず共に働ける環境づくりこそが必要です」と指摘しています。

さらに深刻なのは、就労できた場合でも存在する著しい賃金格差です。障害者雇用実態調査によると、精神障害者の平均賃金は一般労働者の約60%程度に留まっています。同じ業務に従事していても、精神障害者という理由で低賃金に据え置かれるケースは少なくありません。ある当事者は「私の職場では、同じデータ入力の仕事をしているのに、健常者の派遣社員の半分以下の時給です。生活していくのが本当に困難です」と訴えます。

この経済的困難をさらに深刻にしているのが、障害年金の受給要件の厳しさです。特に精神障害者の場合、障害基礎年金の2級認定を受けるためには「日常生活が著しい制限を受けるか、または著しい制限を加えることを必要とする程度」であることが求められ、就労している場合はこの要件を満たさないと判断されるケースが多々あります。ある当事者は「週20時間のパートタイム就労をしているというだけで、『就労できているなら2級は該当しない』と判断された」と語ります。

また、障害厚生年金3級は「労働が制限を受けるか、または制限を加えることを必要とする程度」が要件となりますが、これには被保険者期間中に初診日があることが条件となります。そのため、学生時代や無職期間中に発症した場合、たとえ症状が同程度であっても受給資格を得られないという問題があります。精神保健福祉士は「就労意欲があっても、低賃金と年金受給の困難さにより、生活保護に頼らざるを得ないケースを多く見てきました」と指摘します。

このように、障害年金制度は精神障害者の実態に十分対応できていない面があり、多くの当事者が経済的困窮に直面しています。

政府は「自立支援」や「就労支援」を掲げ、各種施策を展開していますが、これらは問題の本質的な解決には至っていません。就労移行支援事業所のスタッフは「制度はあっても、実際の採用につながらないケースが多いのです。企業の理解を深め、実践的な職場体験の機会を増やすなど、もっときめ細かな支援が必要です」と語ります。

現行の支援策は、すでに就労の機会を得た人々を主な対象としており、そもそも就労の入口である採用の段階で門戸を閉ざされている多くの精神障害者には届いていないのが実情です。

近年、精神障害への理解促進や啓発活動は確かに進んでおり、積極的に精神障害者の採用に取り組む企業も出てきましたが、これはまだ一部の先進的な取り組みに留まっています。社会の偏見や排除が完全になくなることを期待するのは現実的ではなく、むしろ、これらの問題が存在することを前提とした上で、政治や行政による直接的な支援の拡充が必要です。

障害年金の受給要件緩和、生活保障の充実、医療費負担の軽減など、当事者の生活基盤を支える施策の強化が求められます。また、企業に対しても、単なる法定雇用率の達成にとどまらない、実質的な受け入れ体制の整備を促す必要があります。精神障害者が尊厳を持って生活できる社会の実現に向けて、就労支援や自立支援にとどまらない、包括的な社会保障制度の確立が不可欠なのです。

多数者視点の記事:社会の負担を考慮してほしいとの訴え

近年、精神障害者への支援拡充を求める声が高まっていますが、その一方で支援の原資を負担する現役世代の懸念も看過できない状況となっています。社会保障費の増大が続く中、持続可能な支援のあり方を冷静に検討する必要があります。

現在、我が国の社会保障給付費は年間約130兆円に達し、その約3割を現役世代の保険料が支えています。精神障害者への支援制度は、障害年金や医療費助成、就労支援など、多岐にわたっていますが、これらの制度を維持するためには、相当規模の財政支出が必要です。特に精神障害者の医療費助成については、長期の通院や投薬が必要なケースが多く、年間数十万円規模の公費負担となることも珍しくありません。

このような状況の中、現役世代自身も将来への不安を抱えています。ある中小企業の人事担当者は「社会保険料の負担が年々増加し、従業員の給与水準の維持すら困難になっています。障害者雇用も大切ですが、まずは既存の従業員の生活を守ることが私たちの責務です」と語ります。

特に就労の場面では、企業も大きな課題を抱えています。法定雇用率の達成に向けて、多くの企業が採用枠の確保や職場環境の整備に苦心しているのが実情です。ある製造業の経営者は「バリアフリー化や休憩室の設置、専門スタッフの配置など、設備投資だけでも数千万円の支出が必要でした。しかし、その投資に見合う生産性の向上は期待できません」と述べています。

精神障害者の雇用には特有の難しさもあります。体調の波や勤務時間の制約に加え、周囲の従業員への過度な負担も問題となっています。ある企業の管理職は「精神障害のある従業員が体調を崩した際、他の従業員が業務をカバーせざるを得ません。それが常態化すると、職場全体のモチベーションにも影響が出てきます」と指摘します。

また、同一労働同一賃金の観点からは、生産性や成果に応じた賃金設定は合理的な判断といえます。厚生労働省の「令和4年障害者雇用実態調査」によると、事務職における平均賃金は、一般労働者が月額約27万円であるのに対し、身体障害者が約22万円、精神障害者は約16万円となっています。

この賃金格差は、勤務時間の制約や業務の範囲、生産性の違いを反映したものと考えられます。特に精神障害者の場合、体調管理のための時短勤務や、業務量の調整が必要なケースが多く、結果として一般労働者の60-70%程度の賃金水準となることは、労働市場の原理からして自然な流れといえます。

ある企業の人事部長は「同じ事務職でも、精神障害のある従業員は集中力の持続時間や処理速度に制約があり、必然的に業務量に差が生じます。そのため、賃金にも一定の差が生じることはやむを得ない」と説明しています。

社会的支援に頼る前に、まず当事者自身の努力や工夫が求められるのではないでしょうか。現行制度でも、就労移行支援事業所での訓練や職業能力開発校での技能習得など、自立に向けた様々な機会が用意されています。ある就労支援施設の責任者は「支援を受けながら着実にスキルを身につけ、一般就労を実現した方も大勢います。まずは既存の制度を最大限活用することが重要です」と述べています。

家族による支援の役割も重要です。かつての日本社会では、障害者の支援は主に家族が担ってきました。高齢化が進む現代においても、家族による基本的な支援を全て社会に委ねることは適切ではありません。家族でできることは家族で対応し、それを補完する形で社会的支援が機能するのが望ましい形といえます。

確かに、精神障害者が直面する困難は理解できます。しかし、社会保障制度を持続可能なものとするためには、支援を受ける側も社会的責任を認識する必要があります。社会保障給付費の増加が続く中、真に支援が必要な人に適切な支援が届くよう、制度設計を見直していく必要があるでしょう。

そのためには、現行の支援制度の効率化や、就労可能な人の自立促進など、支援の最適化を図ることが重要です。また、企業の受け入れ努力も正当に評価されるべきです。特別な職場での雇用も、段階的な社会参加への一つのステップとして認められてよいのではないでしょうか。実際、障害者専用の職場で経験を積み、その後一般職場への移行に成功した事例も報告されています。

社会全体で支え合うことは重要ですが、それは互いの立場を理解し、バランスの取れた形で実現されるべきです。支援の拡充を求める前に、現行制度の中で最大限の努力を尽くすことが、社会的公正の観点からも求められているのです。限られた資源を有効活用し、持続可能な社会保障制度を構築していくためには、支援する側とされる側の双方が、それぞれの責任を果たしていく必要があります。

筆者の感想:記事が中立であることの重要さ

AIが作成したこれらの記事を読んでみて、いかがだったでしょうか。

それぞれの記事について、AIからの出力をそのまま転記しました。全体的に内容がまるっとしている感じは否めないものの、双方の立場がよく描写されています。

同じトピックでありながら、立場の違いによって内容がこれほどにも異なることに筆者も驚きました。それぞれの立場の主張は一見正しいのですが、すべての人に受け入れられるわけではありません。

特に、社会福祉系の記事を扱う場合、中立であることがいかに重要であるかを認識できる実験となりました。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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