税は財源ではないという主張が間違いである理由
昨今、インターネット上では税は国家の財源ではないと主張する輩が存在している。彼らは主にれいわ新選組の支持者である。れいわ新選組は、日本経済を再生する為に消費税の廃止を謳っており、廃止した税の代わりの財源は国債で調達すれば良いと主張している。国債発行により市場に供給される資金量が増えればインフレ発生のリスクが高まる訳だが、インフレが発生した場合は徴税すれば抑えられるので問題ないのだそうだ。果たしてこの考え方は正しいのだろうか?
徴税でインフレは本当に収まるのか?
国債発行した際に想定されるインフレは3種類存在する。
①ディマインドプルインフレ
国債発行で得た資金が大規模な財政支出(例: 社会保障、公共事業)に使われ、経済全体の需要が過剰になり、需要が供給を上回ることで物価が上昇するインフレ
②コストプッシュインフレ
国債発行が円安を助長し、輸入品(特にエネルギーや原材料)の価格が上昇。生産コストが増加し、それが商品価格に転嫁されることで物価が上昇するインフレ
③ビルトインインフレ
政府が大量に国債を発行し続ける=将来的なインフレリスクが高まるという市場の期待が生じることで物価が上昇するインフレ
ここで、徴税により抑えられるインフレは①のみである。②③は、抑えられない。
①は需要由来のインフレなのに対して②③は国債発行による通貨安由来のインフレである。消費税の代わりに国債で財源を調達するといった調達手段そのものが招くインフレであり、徴税で抑えることはできないのである。
仮にインフレが発生しない場合、経済は良くなるのか?
次に考えたいのは、仮にインフレが発生しない場合に景気は回復して経済の好循環が起こるか?である。国債発行しても②③の通貨安のインフレが起きないことを前提として考えたい。この前提ならば一見経済は好循環すると思うが実際は異なる。
日本銀行生活意識に関するアンケート
上記は、日本銀行が全国の満20歳以上の個人4,000人に対して行なっている、生活者が現状において抱いている生活実感や、金融・経済環境の変化がもたらす生活者の意識や行動への影響を把握するために実施しているアンケートである。
1993年以来定期的に実施されており、日本銀行の金融制約決定の判断材料の1つになっている重要な調査データである。この中で1年前と比べて体感物価がどの程度上昇したかを問う項目がある。
直近掲載(2024年10月10日)における<1年前に比べて現在の物価は何%程度変化したと思うか?>を見ると、以下の通りである。
2024年3月 平均値 14.2% 中央値 10%
2024年6月 平均値 15.7% 中央値 10%
2024年9月 平均値 14.5% 中央値 10%
これから分かることは、体感値として10%以上のインフレが起きているということである。一般にインフレ指標としては消費者物価指数が参考にされるが、消費者物価指数はあらゆる消費物サービスを加重平均化して出している指標であり、消費者が滅多に買わないもの、買ったことすらない物も含まれて算出されていて消費者のインフレ苦を測る指標としては不適切である。
実際2024年9月の消費者物価指数を確認すると、2.5%になっている。生活者の出費の大半は衣食住に関わるものに充てられているが、衣服、食事、光熱費、ガソリンetcが2.5%しか上がってないか?と問われたら,そんな訳ないだろう!と一括されてしまう。
故に、生活者の実際のインフレ影響を見るには生活意識アンケートの方が適切なのである。
この前提を踏まえて、れいわ新選組の消費税廃止政策が実現され、この政策によってのインフレも起きない世界をシミュレーションしてみたい。シミュレーションにあたり、現在の体感物価は直近2024年9月分を採用する。
【れいわ新選組の消費税廃止政策が実現した際の体感物価(楽観シナリオ)】
14.5%(現在の体感物価)ー10%(消費税廃止)=4.5%(政策実現後の物価)
おわかりいただけるだろうか。前年比4.5%上昇の物価になるだけである。ここで問い直したい。前年の今頃の物価水準の時、あなたは浮かれて消費できる段階であっただろうか?そんなことはない筈である。つまり、政策実現できても何も変わらないということである。更に言えばこれは最も楽観的なシナリオだ。
実際には通貨安が起きて②コストプッシュインフレ③ビルトインインフレが加わる。10%消費減税してもインフレがこの効果を打ち消してしまい、何も抜本的な解決に至らず悪戯に政府債務を増やした、という結論だけになる。
そればかり最も最悪なケースは、無茶な国債発行を続けたためにハイパーインフレに陥ってしまい、今以上の生活苦に陥ってしまう可能性すらあるのである。
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