ションベン
コの字型カウンターのある飲み屋は、いつも初老板前さんの笑顔がある。
引き戸を開ける音で板前さんは、奥にある板場の暖簾を挙げて「らっしゃい!」
常連男のイケメンが会社の先輩を連れてきた。
しばらく話と酒が続いていると急に常連男が
「それで、だれが一番だったとおもいますか先輩!」
あまりパツとしない先輩男は静かに「おまえか」
「あたりー、、、、おそらく?」
その話には、あまり興味がないような先輩男は。
「いまでもションベンを飛ばせるのか」
ションベンと云う単語に反応した女性三人はコの字型カウンターの片方にすわっている。
女性三人は、学生時代の話が一瞬途切れたタイミングであったようだ。
女性三人は声をそろえて「いやーね、男って!」
カウンターの両側で女性三人と男性二人は、一瞬顔を見合わせた。
常連男は幼少期には、田舎で育ったらしい。
ある時田舎のワルガキたちと畑の端に並んだ。
そして誰が一番遠くにションベンを飛ばせるか争ったとのこと。
結果はだいぶもめたらしく、皆一番ということで収まったようだ。
その時近くいた同級生の女性リーダー格が一歩前に出て。
「バカみたい、男っていつまでも子供みたいね」
そのほかの同級生女性からも。
「最低ね男って」
「先生にいってやろう」
「親にもいった方がいいよ」
「おまわりさんにもいようか」
ワルガキリーダーは、女性リーダー格に向かって。
「云いつけると半殺しにするぞ」
カウンターの先輩男は箸で常連男を指して。
「スゲーことで脅したな、ワルガキリーダー、おまえか」
常連男は、「せいかいです」。
先輩男は、「女性のリーダーはだいじょうぶだったのか」
常連男は複雑な表情で笑いながら酒を口にした。
カウンターの中からニコッと笑った頬には切り傷を隠している板前さんは。
「ハッハツハツ!話してもいいかい、その内緒話ってやつ、今は彼のカミさんってこと」
「ひどいな、それじゃ内緒じゃねーだろ」
と言いながら常連男は満足な笑顔を隠せなかった。
先輩男は「いいなー、会社では出世頭一番のお前がションベンで彼女ができたなんて」
そのままコップを一気に空けて強い声で「お代わり!」
向かいの女性三人はションベン話の続きを各々くちばしながら高らかに声は店に鳴り響いた。
常連男は中腰になって皆に。
「頼む、今の話内緒にしてくれ、バレルと後が大変なんだ」
先輩男が「だれに内緒なんだ」
カミさんにションベン話がバレルて服を買わさたそうだ。
服の数は少なくはなく常連男の自慢話であろう。
夫婦そろってこの店の常連でもある。
カミさんに無断で飲んでいる時は、少しでも帰宅が遅くなると必ず向かいに来るそうだ。
その時、ガラーっと引き戸が開いた。
「あら、またのんでいたのね」
元女性リーダー今はカミさんの笑顔は、周りの客をも見渡した。
先輩男は慌てて目を避けてうつ向いた。
女性客三人は、笑顔のままカミさんに軽い会釈をしてから互いの顔を合わせた。
「あなた!またあの話したでしょ」
カミさんは、女性客三人の方に再度万遍な笑顔を送った。
女性客三人は酔った勢いでカミさんに一緒に座ることを進めた。
女性客四人となり、この世に怖いもの無しのクワルテットレデイス。
女性客三人は、口々に一部始終を少しオーバーに話した。
「どうもありがとう、そう思って今日はハイヒールとハンドバックの揃いを見てきたの」
その後は云うまでもなく連行されるようにして常連男とカミさんは店を後にした、先輩男は残った。
女性客1「奥さんっていいね、あんなことで服を買ってもらったり」
女性客2「違うわよ今日はハイヒールとハンドバックだって、わたし嫉妬しちゃうわよ」
女性客3「旦那が可哀そうよ、かなり小遣減るわよ」
女性客1「私なら服なんかねだらないで許すわよ」
女性客2「最近は些細なことで離婚するらしいから」
女性客3「板さん!彼よくこの店くるの? この近くに住んでるのかしら」
女性客1「あんた!狙ってるわね」
あんたもよ、あんたもよで三人は同じこと考えているようだった。
その時、急に先輩男はがよろけながら力強く立ち上がった。
板前さんが先輩男のそばへ近づいて。
「どうしたんだい」
先輩男は女性客さんへ向かって「ションベン!」
川柳 「 立ちションも 使い方では 役に立ち 」