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経済学入門書掲載の図と、その作成プログラムを公開【3】OECD・V-Demその他データ編
この一連の記事では、私の書いた経済学の入門書の『経済学って何だろう』に掲載された図を最新のデータを使ってアップデートしたものと、それを作成するための手法とプログラムを公開しています。前の前の記事では世界銀行のデータ、前の記事ではPenn World Tableを使った図について書きました。今回は、OECDや政治・経済制度、所得格差に関するデータのデータを使った図について公開・説明します。例えば、以下のようなものです。
![](https://assets.st-note.com/img/1723603736888-bF3zWMPBxC.png?width=1200)
(日本は欧州にくらべて歳入・歳出ともに少ない)
![](https://assets.st-note.com/img/1723603847481-aoXYwB51SH.png?width=1200)
(日本は所得レベルの割には幸福度が低い)
![](https://assets.st-note.com/img/1723610466177-08qbFEmNS8.png?width=1200)
(民主国の方が経済成長率の振れ幅が小さい)
![](https://assets.st-note.com/img/1723610499101-WNYo6W9Oo8.png?width=1200)
(近年、むしろ専制主義国の方が増えている)
OECDデータの取得と図の作成
OECDのデータは世界銀行のWorld Development Indicatorsには含まれない変数があることも多いのですが、OECD諸国が中心で、非OECD諸国はほとんど含まれないのが欠点です。
まず、OECDのデータをインターネットから取得する手法について説明します。OECDはAPIが整備されており、それを使って効率的にデータを取得することができます。ただし、2023年にOECDのデータのプラットフォームがOECD.StatからOECD Data Explorerに移行されたのにともなって、以前は便利だったRのOECDパッケージが2024年8月現在うまく使えなくなってしまっています。
ですので、まずRのOECDパッケージを紹介するこのサイトの前半部分に書かれた方法で、まずOECD Data Explorerから手動でTopic, Reference Area(国など), Measure(変数)などを指定した上で、Data queryに示されている選択したデータのURLを取得します。なお、後半部分ではそれを用いてOECDパッケージでデータを取得する方法が書かれていますが、私が試した限りではうまくいきませんでした。
ですので、François Geerolfによるこのサイトに書かれているように、Rを利用してそのURLそのものからデータを取得しますが、この時にはデータはsdmxの形式になっていますので、readSDMXというコードを使って読み込んで、csvファイルとして保存します。例えば、このような感じです。
library(tidyverse)
library(rsdmx)
ineq <- "https://sdmx.oecd.org/public/rest/data/OECD.WISE.INE,DSD_WISE_IDD@DF_IDD,1.0/USA+GBR+JPN+FRA.A.INC_MRKT_GINI+INC_DISP_GINI+D9_1_INC_DISP._Z.._T.METH2011+METH2012.D_CUR.?startPeriod=1995&dimensionAtObservation=AllDimensions" %>%
readSDMX() %>%
as_tibble
write.csv(ineq, file = "OECD_ineq.csv")
その後、Stataでこのcsvファイルを読み込んで、以下のような図を作成します。
幸福度関連
図 2‑4 1人あたりGDPと人生に対する主観的満足度の関係
図 2‑5 1人あたりGDPと社会交流のレベルの関係
所得格差関連
図 3‑2 主要国におけるジニ係数の推移
図 3‑3 主要国における可処分所得に基づくジニ係数の推移
短期のマクロ経済関連
図 5‑7 日米の実質金利の推移
図 6‑6 主要国の財政収入・支出・収支の推移
図 6‑9 OECD諸国の公共投資とGDP成長率の関係
図 6‑10 OECD諸国の政府消費とGDP成長率の関係
これらの図、データを取得するためのRプログラム(OECD.R)、その後図を作成するためのStataプログラム(図のカバーする分野ごとに4つのdoファイル、OECD_money.do, OECD_wellbring.do, OECD_ineq.do, OECD_gov.do)は以下のzipファイルでダウンロードできます。
政治・経済制度と所得格差に関するデータの取得と図の作成
政治・経済制度のデータとして使うのは、V-Dem, Heritage Foundation, Acemoglu et al. (2001)のものです。実は、『経済学って何だろう』では民主制度の指標としてPolity Vを使ったのですが、その更新が2018年で止まっていることから、V-Demの指標を使って図を作り直しています(図の示唆するところは変わりません)。
V-Demのデータはこのサイトから申請して取得する必要があります。Heritage Foundationの経済的自由に関する指標はこのサイトにありますが、手動で取ってくる必要があります。Acemoglu et al. (2001)の伝説的論文で使われたデータはこのサイトにあり、手動で取ってくる必要があります。
所得格差については、上で述べたOECDや前の記事で述べたWorld Development Indicatorsにもデータがありますが、World Inequality Database(WID)というものもあります。 WIDのデータは一部は1820年から構築されており、長期の分析ができるのが特長です。また、Stataのwidパッケージを使えば、Stataの中でデータを取り込むことが可能です。
これらのデータを接続してデータセットを構築し、図を作成するStataプログラム(institution.do, WID_ineuq.do, WID_gini.do)と、作成された図のすべては以下のzipファイルでダウンロードできます。含まれた図は以下のようなものです。
政治・経済制度
図 10-1 民主主義国家・専制主義国家の数の推移
図 10-2 民主主義と1人あたりGDPの関係
図 10-3 民主主義と経済成長の関係
図 10-4 植民地支配と現代の経済制度の関係
図 10-5 経済制度と1人あたりGDPの関係
図 10-6 植民地支配と現代の政治制度の関係
図 10-7 経済制度と政治制度の補完性
所得格差
図 3‑1 主要国の所得上位10%の富裕層の合計所得のシェアの推移(1900-2021年)
主要国のジニ係数の推移(1980-2021年)