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サプライチェーンにおける中国依存度はどうなってるの?-最新のグラフとその作成のためのRプログラム-


経済安全保障の重要性、サプライチェーンの強靭性の重要性がいや増しになっています。特に、サプライチェーンにおける中国依存が強い中、安全保障上の問題から中国との経済関係が一定程度縮小するリスクは大きく、中国依存がサプライチェーンの脆弱性の要因となっているのが現状です。

この記事では、オープンな国連の貿易データUN Comtradeを使って、日本や西側主要国の重要品目の輸入や輸出における中国依存度の最近の動きを示すグラフをお見せします。それとともに、それらの図を作成するためのRプログラムを開示します。

このプログラムを活用していただければ、今後も最新のデータを使って中国依存度をフォローできますし、少し改訂を加えることで好きな国や品目についての中国依存度のグラフを描くこともできます。

電気電子機器・自動車部品・レアアースの輸入における中国依存度

以下のグラフは日米独各国の電気電子機器の輸入における中国のシェアです。電気電子機器には最終製品も含まれていますが、様々な産業で部品として使われる電気電子機器も多いので、大まかに言ってサプライチェーンの大きな部分の中国依存度を示していると言っていいでしょう。

これを見ると、アメリカの中国依存度は2018年以降激減していますが、日本は横ばい、ドイツは上昇しています。特に、日本の中国シェアは40%を超えており、日本のサプライチェーンは脆弱であると言えます。

次に、自動車部品の輸入における中国のシェアを見てみると、アメリカは電気電子機器と同様に下がっていますが、日本は2018年の35%から2024年の45%にむしろ急増しており、これまた日本の自動車産業のサプライチェーンは脆弱になっているとも言えます。

さらに、レアアース輸入における中国のシェアを見ると、日本は2021年から2023年にかけて急増したものの、ここ1年半では下がっており、2018年の水準に戻っています。このグラフには表れていませんが、もともと日本は2010年に中国が日本向けのレアアース輸出を禁止したことを契機に、中国依存を減らす努力が続けられてきました。直近では、この流れにもどったと言えます。逆に、レアアースにおいてはアメリカの中国依存度が上昇しています。

半導体・その製造装置の輸出における中国依存度

次に日米韓蘭の半導体製造装置輸出における中国のシェアを見てみましょう(韓国については2022年までしかUN Comtradeデータはありません)。驚くべきことに、半導体製造装置において世界で有数のシェアを持つ日本、オランダともに2023年以降に中国向けのシェアが急増しています。これは、最先端ではないローエンドの製品の輸出が増えているために必ずしも問題ないという議論もありますが、同時に中国はローエンドの製造装置を使ってハイエンドの半導体を製造することに成功しているという話もあり、安全保障問題から見て必ずしも看過できるわけではありません。

次に、半導体を集めた部品である集積回路の輸出について見てみると、幸い日米の中国シェアは低下傾向にありますが、韓国は高止まりしています。ただし、アメリカの対中半導体輸出規制が強化されているにもかかわらず、それほど日米ともに輸出における中国シェアは必ずしも激減していないことにも注目すべきでしょう。これが、いわゆるsmall yard, high fence、つまり「
限られたハイエンドの品目のみについて強い規制をかける」という方針がうまく運用されているのであれば必ずしも安全保障上の問題はないのかもしれません。しかし、半導体製造装置と同様に、その中身をよく精査する必要はあるでしょう。

中国依存度をフォローするためのRプログラム

以上の図は、Rプログラムによって、UN Comtradeという国連の運用する貿易データベースからAPIによって自動でデータを取得し、そのままそのデータを利用して図を作成しています。ですので、今後もこのプログラムをそのまま実行することで、最新のデータを使ったグラフを作成することが可能です。

輸入・輸出それぞれに関するRプログラムは以下からダウンロードできます。

なお、UN Comtradeの月次データは主要国については2~3か月遅れでアップされます。ですので、2024年8月現在では2024年6月までのデータが使われています(ただし、韓国の細かい品目の輸出入については2023年からアップデートが止まっているようです)。

注意点としては、UN ComtradeのAPIを利用してデータ取得を自動化するためには、登録してAPI subscription keyを取得することが必要なことです。この方法を紹介したウェブサイトについては、以上のR scriptに記載してます。

また、ここでは日米韓独の4か国の限定された品目の輸出入の中国のシェアに注目しています。しかし、プログラムを少し変更することで、日米韓独以外の国も、ここで挙げていない品目も、中国だけではなくそれ以外の国のシェアも対象とすることができます。ぜひこのプログラムを活用して、ご自分で様々な分析をしていただければ幸いです。


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