経済学入門書掲載の図と、その作成プログラムを公開【2】Penn World Table編
この記事では、私の書いた経済学の入門書『経済学って何だろう』に掲載された図を最新のデータを使ってアップデートしたものと、それらを作成するための方法とプログラムを公開しています。この本を使って講義をしていただいている教員の方々、同じような図を作成したいと思っている全ての方々を対象としています。
前回の記事では、世界銀行のWorld Development Indicators(WDI)のデータを利用した方法を紹介しました。今回は、世界各国のGDPや投資率などに関する詳細なデータであるPenn World Table(PWT)を用いた図を紹介します。例えば、以下のようなものです。
PWTは各国の物価の違いを考慮した購買力平価調整済みのGDPのデータを1950年から構築しており、長期的な経済成長を分析できることが強みです(WDIでは1980年からしかありません)。ただし、2024年8月現在の最新バージョン10.01は2019年までしかカバーされていませんので、最新の経済状況を見るにはやや不向きです。
WDIは1400個以上の変数を含む巨大なデータセットですので、前のポストでは変数を選んでRによってデータを取得しました。しかし、PWTはそれほど大きなデータセットではなく、このサイトから全てのデータをExcelのxlsxファイル、もしくはStataのdtaファイルとして簡単にダウンロードすることが可能です。
そのデータを使ってStataによって描いたのが、『経済学って何だろう』に載っている以下のような図です。
長期のマクロ経済学関連
図 1-5 OECD諸国の投資率と1人あたりGDPの関係
図 1-9 OECD諸国の全要素生産性と1人あたりGDPの関係
図 7‑10 ラテンアメリカと東アジアの経済成長
図 8-3 投資率と1人あたりGDPの関係
図 8‑4 人的資本指標と1人あたりGDPの関係
図 8‑5 全要素生産性と1人あたりGDPの関係
図 8‑6 アフリカにおける長期間の経済停滞
そのいくつかは、この記事の最初の図のように、国ごとの散布図となっていて、それぞれの国が地域ごとに色分けされています。国ごとの地域の情報はPWTには含まれていませんので、世界銀行のこのサイトで定義される地域のデータと接続しています。その後、以下のコードで示されるように地域ごとにマーカーの色を変えて散布図を描き、それを重ねていっています。
* 投資率と1人あたりGDPとの相関
twoway ///
(scatter rgdpch s10 if year == `latest' & region == "East Asia & Pacific", ///
sort msymbol(O) mcol(red) mlabel(codeJ) mlabc(red) leg(lab(1 "東アジア") row(1)) ///
yscale(log) ylab(500 5000 50000)) ///
(scatter rgdpch s10 if year == `latest' & region == "South Asia", ///
sort msymbol(O) mcol(orange) mlabel(codeJ) mlabc(orange) leg(lab(2 "南アジア"))) ///
(scatter rgdpch s10 if year == `latest' & region == "Sub-Saharan Africa", ///
sort msymbol(O) mcol(green) mlabel(codeJ) mlabc(green) leg(lab(3 "アフリカ"))) ///
(scatter rgdpch s10 if year == `latest' & region == "Latin America & Caribbean", ///
sort msymbol(O) mcol(brown) mlabel(codeJ) mlabc(brown) leg(lab(4 "中南米"))) ///
(scatter rgdpch s10 if year == `latest' & region == "OECD", ///
sort msymbol(O) mcol(blue) mlabel(codeJ) mlabc(blue) leg(lab(5 "OECD"))) ///
(scatter rgdpch s10 if year == `latest' & other == 1, ///
sort msymbol(O) mcol(grey) mlabel(codeJ) mlabc(grey) leg(lab(6 "その他")) ///
note("Source: Penn World Tables, ver. 10.01"))
graph export PWT_GDPpc_investment_fig8_3.png, as(png) replace
プログラム全体と全ての図は以下からダウンロードできます。ただし、PWTは昨年から今年にかけてはアップデートされていませんので、これらの図は『経済学って何だろう』に掲載されたものと基本的には同じものです。