苫小牧市令和5年度決算審査特別委員会「企業会計」
以下の内容は、令和6年10月に開催された苫小牧市令和5年度決算審査特別委員会(企業会計)において、市議会議員である私、嶋中康晴の発言内容と苫小牧市の答弁をまとめたものになります。 文字数の関係で実際の言葉を簡略化していますが、内容については調整しておりません。(実際は全ての質問答弁がもっと丁寧な言葉でやりとりされています)
Ⅰ:国民健康保険事業会計について
質問先:保険年金課
目 的:国民保険事業の決算から見る市民の健康対策の成果を確認
▼嶋中
決算書107Pの道支出金について聞きたい。決算説明書161Pに予算科目別比較表があるが、歳入における道支出金の予算額に対する決算金額差異及び、前年比差異の要因は何か。
▼答弁
道支出金については、予算現額116億114万3千円に対して、決算額113億741万5,617円で、予算に対して2億9,372万7,383円の減となっており、主に普通交付金の減によるもの。
また、令和4年度決算は111億3,697万円3,301円で、令和5年度決算と比較すると1億7,044万2,316円、1.5%の増となっている。
▼嶋中
予算差異についてもう少し詳しく聞きたい。どのような予算設定の仕組みでこのような大きな金額差異が生まれるのか。比率としては3%未満なので見取りができていないとは言話ないが、決して小さくはない金額差異。予算策定の方法や、北海道から交付される仕組みについて聞きたい。
▼答弁
国民健康保険の財政運営については都道府県が担っており、北海道が全道の保険給付を賄うために各市町村から納付金を徴収し、各市町村の医療給付費全額を普通交付金として支払う仕組みになっている。
市の予算については、保険給付費を支払う歳出に不足が生じないよう計上しているため、歳出に執行残が生じた分は、普通交付金も減額になる。
▼嶋中
全額交付される中で、正確な予測が難しいことから余裕を持った予算額にしているということで理解した。
因みに令和4年度決算との比較が1億7,044万2,316円、1.5%の増ということで、こちらは純粋な保険額の増加と推測できるが、国民健康保険における市民一人当たりの医療給付費の推移はどうか。
▼答弁
保険給付費における被保険者一人当たりの推移についは、療養給付費に高額療養費なども含めたものになるが、令和3年度が約35万円、令和4年度が約35万9千円、令和5年度が約38万3千円となっている。
被保険者数は少子高齢化によって減少しているものの、医療の高度化や加入者の高齢化などによって増加傾向となっている。
今後についてもこの傾向が継続すると推察されるので、保健事業を始めとして加入者の健康保持増進につながる取組の推進に努めていく。
▼嶋中
一人当たりの医療給付費が増加傾向にあり、結果として医療費の総額が増加傾向にあるということだが、今後は健康保持増進による医療費抑制を実現するような取組みがより重要になる。そういった意味で検診受診率が最重要なのは間違いないが、主要事業レビュー429Pの「就労者の精神疾病予防事業」も、医療費抑制に繋がる取組みの一つかと思う。
しかし本事業は決算額が予算額と40%以上の乖離があるが、この要因は。
▼答弁
予算額としては100名の定員と想定して算出しているが、例年、実施者数が伸び悩んでいることから、決算額と予算額に乖離が生じている。
▼嶋中
実施者数が定員に達しない理由はどのように分析しているか。
▼答弁
受検につながらない要因については、業務以外に時間を割いて回答しなければならないことや、紙媒体による検査の煩わしさなどが要因になっているものと考えている。
▼嶋中
この事業評価レビューの評価についても聞きたい。
実施者が定員の半分にも満たないにも関わらず、事業内容の重要性を理由に本事業の各評価項目が、軒並み3~4になっている。評価というのは事業の価値ではなく、事業の担当者や担当チームの実績や成果、プロセスに対して行うもの。
こういった一つひとつの評価の本質が、職員の取組みの本気度や成長に繋がる。主要事業レビューの項目など昨年度よりも改善されているからこそ、評価者の認識向上を求めていくべきと思うが、今回、担当課ではどう評価したのか。
▼答弁
令和5年度の実績については、前年度比5名増の29名がストレスチェックを受検しており、高ストレスに該当した方への医師の面接が、前年度比1名増の2名に対して実施した。
事務事業評価においては実施者数が少ないものの、前年度から実績が改善していることに加え、必要最小限の経費による実施や法の適用にならない加入者にも機会を提供していることなど、効率性や公平性を評価し、総合評価を「B」としている。
▼嶋中
前年度比がストレスチェックで5名増、医師の面接が1名増で2名という成果で4段階評価の3が妥当なのかどうかは、現場の状況や困難さが分かる人にしか判断できない部分なので答弁は求めないが、できればレビュー表にも予算策定時の目標値を明記してはどうか。
より明確で正しい評価こそが職員の成長や本市の行政力に繋がり、より有益な決算審査ができると思う。こちらは要望ですので答弁は必要ありません。
最後に、事業評価レビューにある今後の方向性について聞きたい。
レビュー表のスペースの都合もあるかもしれないが、この内容だと具体的にどう改善するのかが伝わってこない。もう少し詳しく説明していただきたい。
▼答弁
精神疾病予防事業については、受検される方の負担を少しでも取り除き受検につなげたいとの思いから、これまで申請後に送付されるチェックシートを二次元コードでWEB回答できる様式に変更するなどの取組も行ってきた。
今後については申請からWEBで行いすぐに回答できる仕組みを構築するなど、さらなる煩わしさ解消に努め、受検者数の増につなげていく。
▼嶋中
取組みについて理解できた。個人的には人が集まるイベントを活用したり、ストレスチェックや面接実施者に市民が興味関心を示すような特典を付けるなど、医療費抑制との費用対効果を考慮しながらあらゆる手段を検討してほしいと思っている。
本事業の実施者が増え、市民の心身の健康を実現することはもちろん、結果として本市における医療費の抑制に繋がることを期待し、質問を終わる。
Ⅱ:水道事業における改良事業について
質問先:上下水道部水道課
目 的:排水管の老朽化における耐震化改良事業の進捗を確認
▼嶋中
決算書6P、第1項建設改良費の改良工事について聞きたい。
先ず、令和5年度決算における水道管の改良工事の実施内容について教えてほしい。
▼答弁
令和5年度の水道管改良工事については、花園町やウトナイ北・南、錦岡地区などで老朽化した配水管や錦多峰導水管の布設替えを実施。口径 50mmから200mmの配水管および口径800mmの導水管の更新を延長3.9kmにわたり実施し、この事業の決算額は6億8,570万円となっている。
▼嶋中
では、老朽管と耐震化された新しい水道管は性能にどの程度の差があるのか。
▼答弁
老朽管と呼ばれる水道管は、耐震性や防食性の低い普通録鉄管、塩化ビニル管、硬質ポリエチレン管となっており、「震度5強」から「愛度6弱」の「レベル1地震動」で酸損等が起きる可能性がある。
一方で更新する耐震管は耐震性や防食性の高いダクタイル鋳鉄管を使用しており、「震度6強」や「震度7」の「レベル2地震動」に耐えうる構造で、安全性の高い水道管となっている。
▼嶋中
災害対策の観点からも重要度の高い工事であることが理解できたが、逆に老朽管の更新率を見ると令和4年度と比較して令和5年度のほうが更新率の進捗が鈍化しているようだが、これは何か理由はあるのか。
▼答弁
老朽管の更新率は令和3年度が90.9%、令和4年度が94.7%、令和5年度が 95.5%と推移している。
令和4年度は前年度比で3.8ポイント上昇したが、令和5年度は0.8ポイントの上昇になっている。これは老朽管更新と老朽管以外の耐震化の取組の調整を行った結果、老朽管更新率の上昇幅が小さくなったもの。令和5年度の老朽管の更新は延長で1.6km実施している。
前年度の2.9kmと比較して短縮されているが、それに加え災害時の拠点施設につながる重要給水ルートの耐震化や、錦多峰導水管の耐震化工事など延長で2.3km耐震工事を実施している。全体の改良事業としては水道管の更新延長が3.9kmとなり、令和4年度の3.2kmとほぼ同程度の事業規模になっている。
▼嶋中
改良事業全体として停滞・鈍化しているわけではないと理解できた。
では、改良工事における物価高騰の影響についても聞きたい。
資材だけではなく人件費等も含め、令和5年度の決算における予実比に影響はあったか、前年度との比較も合わせて教えてほしい。
▼答弁
物価高騰の影響については、前年度と比較して労務費が約5%、水道本管などの資材費が約10%上昇した。しかし予算編成の際に物価高騰の影響をある程度見込んでいたので、工事実施に際して特段の影響は生じなかった。
▼嶋中
一定の影響はあるものの予算編成時に織り込み済みということで理解した。
それでは導水管についても聞きたい。
導水管の耐震化工事とは、どのような処置を行いどのような効果があるのか。
▼答弁
錦多峰導水管は、錦多峰川の原水を浄水場に送水している重要な管路です。昭和51年(1976年)の供用開始から46 年が経過し老朽化が進行していたため、令和5年度の耐震化工事で全長約1.9kmの一部、延長335mを「レベル2地震動」に耐えられるようにした。
▼嶋中
導水管の耐震化工事については長期的に実施していく中で、毎年度個別に予算を確保しているようだが、完了までにどの程度の予算が必要になるのか。
また、今回は46年が経過しての工事だが、工事後の耐用年数はどの程度なのか。
▼答弁
錦多導水管の耐震化については、今後も改良事業の一環として他の更新事業とのバランスを考慮しながら実施していく。導水管の耐震化の完了には残りの約380mの更新が必要だが、約2億円から3億円の予算が必要になると見込んでいる。このため、交付金など活用し予算の確保に努める。
また耐用年数については、耐震性と耐食性に優れたダクタイル鋳鉄管への更新により、80年以上の長期使用が可能になると考えている。
▼嶋中
全体で約7億円弱という決して小さくはない決算額であり、市民の生活や健康に直結する非常に重要な事業。是非、安全第一で引き続き工事の実施をお願いする。
Ⅲ:水産物部棟消火設備設置工事について
質問先:産業経済部農業水産振興課
目 的:市場の消火設備設置工事における内容や安全性について確認
▼嶋中
先ず決算書115P、工事・単独事業の水産物部棟消火設備設置工事について。
パッケージ型消火設備の設置に関する決算額ですが、予算額と100万円、20%程度の金額差異があります。こちらの理由を教えてください。
▼答弁
パッケージ型消火設備設置費用の予算と決算の差異の要因ですが、当初は7基の消防設備を設置する予定でしたが、実際に設置するにあたり施設の構造、用途等を考慮した結果、6基の設置としたことによるものです。
▼嶋中
予算よりも費用を抑えられているのは良いが、当初よりも設備の数を減らすことによって火災など有事における安全性に問題は無いのか。
▼答弁
工事を実施するにあたり設置箇所を詳細に検討した結果、6基の消火設備を建物内の適切な箇所にそれぞれ配置することで、火災発生時における安全性を確保できることが分かり、6基の設置とした。
▼嶋中
従来の設備と比較し、性能においてはどのような違いがあるのか。
▼答弁
従来は動力消防ポンプ設備を設置しており、こちらは設備を海の近くまで持っていき海水を汲み上げて使用するもので、使用するまでの準備に時間のかかるもの。
パッケージ型消火設備については、従来の設備に比べ設置場所からそのまま使用することで短時間で作動でき、使用方法も平易になった。
▼嶋中
実際の使用方法など現場の市場利用者への周知徹底や、担当者が入れ替わることも考慮した定期的な訓練などもサポートできているのか。
▼答弁
パッケージ型消火設備を設置した際に、市場関係者に実際に使用してもらうことで周知を図った。今後については、指定管理者において模擬訓練等で使用方法を周知していく予定と伺っている。
▼嶋中
今後の市場の動向について様々な可能性がある。今回、設置した設備は移設も可能か。
▼答弁
設備の移設は可能であると設置業者から確認できている。
Ⅳ:公設地方卸売市場事業会計について
質問先:産業経済部・農業水産振興課
目 的:卸売市場における事業会計の収益構造の分析と今後の対策を確認
▼嶋中
決算書の102Pから103P、事業決算報告書における収入・支出について。
先ず、収入・支出の予算に対する決算額との差異について、金額にしてどちらも300万円程度、収入増・支出減のギャップがある。こちらの要因を聞きたい。
▼答弁
予算と決算の差異の要因は、まず収入における売上高割使用料において、卸売業者の取扱金額が当初予算の見込みよりも増加したことにより使用料収入が増加したことが要因です。
また支出については、修繕費が不用となったことが主な要因です。
▼嶋中
「修繕費が不用となった」とは、具体的にどのような計画があり、どのような理由でその判断に至ったのか。
▼答弁
修繕費の予算内訳としては、予め予定している電気設備や冷却設備などの修繕を行うための予算とは別に、突発的に発生した故障に対応するための予算も計上している。令和5年度については突発的な故障に対応する修繕が少なかったため、修繕費の一部が不要となった。
▼嶋中
あくまで突発的なものに対する予算であったということで理解した。
続いて収益源の構成について、売上高割使用料と施設使用料の仕組みや違いについて教えてほしい。
<売上高割使用料とは>
卸売市場の業者が水産物や青果などを卸売・販売した際、取扱金額の品目ごとに定められた率を乗じて開設者に支払う料金。開設者は公設なら地方自治体、民設なら民間企業となる。
▼答弁
卸売市場の収入については、業務規定において売上高割使用料と施設使用料の2種類を設定している。
卸売業者の取扱金額に対し1,000分の3を乗じた額が売上高割使用料。売場や事務所などの使用面積に対し1㎡あたりの単価を乗じた額を施設使用料としている。
▼嶋中
「卸売業者の取扱金額に対し、1,000分の3を乗じた額が売上高割使用料」ということだが、これは実際の漁獲量や卸先の購買量が収入に直結するという認識で間違いないか。
▼答弁
単価の影響もあるため一概にはいえないが、基本的には取扱量が増えることで市場における取扱金額が増加するもの。
▼嶋中
売上高割使用料の取扱金額や施設使用料を増加させるため現在取組んでいる、または取組んだことで収益向上に繋がった施策などあれば知りたい。
▼答弁
令和2年6月に市場法が改正され、卸売市場に農水産物を持ち込まなくても取引が可能になり、水産物については他市業者から買い付けた魚貝類や加工品などを直接、顧客へ送ることが可能になり売上げの向上につながったと伺っている。青果物においても、いもや玉ねぎなど品質に影響の少ない商品については産地から直接顧客へ送ることに取組んでいる。
また、道内各市の卸売業者や仲卸業者と取引を行うことが可能となり、市場間ネットワークによる販路の拡大を図っているほか、水産物部においてはホッキカレー、ホッキシチューのレトルト商品の開発を行い、東京や札幌などの試食販売やイベントに出品するなど、苫小牧産海産物の販売強化に積極的に取り組んでいる。
▼嶋中
自然環境等の影響を大きく受ける事業であるからこそ、様々な努力や試行錯誤があると理解できた。
しかし他の企業会計にも言えるが、決算における予算達成率はもちろん、それ以上に収益という実績・成果を求められる事業なので、今後も決算をベースにした分析や計画を怠らず、収益改善に繋げてほしい。
Ⅴ:決算審査特別委員会を終えて
昨年は一般会計の決算審査に配置され、自分が議員になる前に執行された年度の決算を審査することになり、非常に困惑しながら決算報告書に目を通したことを覚えています。
今年度は自身が議員になった年度の決算とは言え、予算審査にも参加したことのない企業会計。(企業会計は病院や上下水道、国民保険など独立した決算を持つ機関)
特に専門分野の多い企業会計決算書は、調べないと分からない専門用語だらけで、結局は昨年と同様に困惑しながら委員会の準備をすることになりました(汗
しかしこれで市議会議員として全ての業務、全てのジャンルをを経験したことになります。
ここからは本市の本質的な課題の解決や、未来に繋がる提案ができるよう、より一層努力して参ります。